高橋慶

小説家、シナリオライター。著作リスト →https://kei.web.wox.cc/…

高橋慶

小説家、シナリオライター。著作リスト →https://kei.web.wox.cc/review

マガジン

  • 観たもの

    映画、海外ドラマ、アニメその他の感想まとめ。

  • 日記

    毎日はつけない日記です。

  • 写真

    古いコンデジを引っ張り出して写真を撮り始めたまとめ。

最近の記事

夏の記憶

ここ何日か、叔母の遺品を取りに警察署へ行ったときのことを思い出している。 周囲は民家ばかりの中に突如、ニョキっと建っていた大きな薄茶色の警察署。入り口付近は黒っぽい石造りで重厚感があり、夏場は余計に暑苦しく見えた。 そこに辿り着いただけでも既に汗だくでヘトヘトだったし、私も母もとにかくやるべきことを順にこなしているだけのくたびれた人形みたいだった。 私はあの時期、久しぶりに自分の体が自分のものでないような感覚にずっと襲われていて、それでも外では普段以上にテキパキとなんでもや

    • さよなら

      早めに家を出て、途中まで同じ電車に揺られる。向こうが先に降りて、その姿を遠目で見ながら、なんだか前の自分に戻ったような気持ちになる。 晴れて日差しの多い日で、駅から銀行まで、銀行から家までをのんびり歩くのが気持ちいい。それでも早めに着いたので、いつも散歩していた公園のベンチで時間を潰す。すると、スーパーの袋に紐をつけて凧のように飛ばしていた大勢の小さな子供達のうちの一人がどんぐりを持ってきて差し出す。 「くれるの?」と言ったら「うん」と頷く。彼女の顔は乾いた鼻水だらけだ。 「

      • 叔母の死について書いたこと

        コロナ禍で一人家にこもっていた間、私は何度かはっきりと「別に自分の気持ちが他人に伝わらなくてもいい」と思った。 誰かに何かを伝えるために文章を書いていたのに、もうそれらがなくても、自分は小さな部屋とわずかな外界とに存在しているだけの私を「許した」と確信する瞬間があった。 そうするしかなかったのだ。だから、久しぶりに深く人と関わって驚いた。情報量があまりにも多くて混乱した。それでやっと、自分が人を求めていることにも気がついた。しかし、誰でもいいわけではないのが難しいところで、

      夏の記憶

      マガジン

      • 観たもの
        0本
      • 日記
        0本
      • 写真
        0本