読書の記録#7 Professionals フィギュアスケートを支える人々

フィギュアスケートLife Extra Professionals フィギュアスケートを支える人々(扶桑社) 

フィギュアスケートを陰で支えている人々のインタビュー集

フィギュアスケートの書籍というと、写真集に近いようなもの、選手のインタビュー等がまとめられたもの、選手の自伝や経験から書いた本あたりに大別されるのではないだろうか。この本自体もフィギュアスケートLifeという、大会の模様や選手のインタビューが主に記載されている雑誌内での特集をまとめたものだ。
ただ、その特集が特殊なもので、フィギュアスケートを陰で支えている人たちについてのインタビュー記事なのだ。
例えば、スケート靴の修理・調整をする人や、会場の音響を担当する人、照明を担当する人、大会のインタビューで通訳を担当する人、実況アナウンサーといった具合だ。
おそらく、フィギュアスケートファンならば半分くらいは名前を見たことがある方たちなのではないだろうか。例えば、フジテレビの西岡アナは数々の名実況で知られるアナウンサーで、フィギュアスケート愛も非常に強いことでスケートファンの間では有名であるし、出水トレーナーは最近宇野昌磨選手も担当するようになったことで知られる(かつ就任間もない時期に宇野選手が怪我で悩んでいたことで出水トレーナーで立て直せるかちょっと話題になった)。ただ、そういった人たちが具体的にどんなやり取りを選手としながら、どういったサポートをしているか、どういった準備をしているかといったことはあまり知られていないのではないだろうか。西岡アナの例でいえば、放送を見ているのでその仕事ぶりは勿論存じているものの、放送に向けた準備(選手ごとのメモの作成等)については普段は表に出ないので当然知らない。これについてはメモの一部を公開していたので非常に興味深かった。

選手の普段見ない一面も垣間見える

こんなやり取りをした、という話もインタビュー内ではあるため、選手の氷上以外での競技者の顔を垣間見える点も面白かった。
羽生結弦選手が再三使用しているフリープログラム「SEIMEI」の音源編集の際のやり取り(再三使用する結果、4分半バージョンと4分バージョンを作ることになった話も出てくる)からは本人が直接やり取りをするとこうなるんだなと思わされるし、安藤美姫氏の物腰柔らかな一面とこだわりが強くない天才的なスケーターぶりが窺えたり、逆に髙橋大輔選手の繊細な感覚(と愛されキャラクターぶり)が窺えたりといった具合である。

靴の不調等はよく言われる話なので、靴についての安藤美姫氏の豪快さは非常に印象に残った。ちなみに個人的には安藤氏のジャンプは教科書に載せたいくらい全種のジャンプが見分けやすくはっきりとしている印象を持っているのだが、その基礎力の高さを感じさせられるエピソードが入っていた。

華やかさは無いが、舞台裏を知る一冊として非常に好感

オススメできる読者は、当然フィギュアスケートファンである。フィギュアスケートに興味が湧いてきた、ちょっと好きになってきたくらいの方は本誌であるフィギュアスケートLifeの方がとっつきやすいだろう。いかんせん、「周囲の人々」の話なのでかなりコアである。少なくとも、フィギュアスケートのイメージとして最序盤に出てくるであろう「華やかさ」は無い一冊である(テーマがテーマなので当然だが)。自分をフィギュアスケートファンだと言い切れる人であれば周辺を取り巻く話もそれまでに触れたことがあろうと思われるので、非常にとっつきやすいと思う。
あるいは、スタッフワークに関心が強い人にとっては面白いだろう。アイスショーの設営側の話は多く出てくるし、衣装やメイクの話も多く出てくる。そういった舞台の裏側の話を好む人にとっては非常に面白い一冊となっている。
特集の総集編としての立ち位置の本だが、フィギュアスケートの舞台裏を上手くまとめた一冊と言えるだろう。

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