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酸素マスクを使うとき何故3リットルとかではダメなのか?

酸素マスク(以下の写真の様な物)は病院でよく使われる酸素投与器具です。酸素を投与する場合、1分間に何リットル投与するのかの設定が必要です。当然1L/分とかの少量だと少しだけ体内に吸引される酸素濃度が上がり、10L/分以上にするとほぼ100%の酸素投与が出来ます。

https://www.tfu.ac.jp/education/dn/s9n3gg000000eq9l.html

上のリンクは、お顔につけている酸素マスクを見せたかったのであって、可愛い看護学生さんを見せたかったのではありませんよ、、、、、、知らんけど。

「慢性閉塞性肺疾患の人に高濃度酸素を投与してはいけない」と言う迷信に近いものが医療業界には存在するのですが、それを信じて、酸素マスクで酸素を1L/分とかしか流さない人がいます。

すると、私の様なうるさい指導医が言います。
「酸素マスクは4リットル、出来れば5L以上流さないとダメだよ。」
言われた若者は質問します。
「何故なのですか?何故1リットルではダメなのですか?」
私は以前自分が人に言われたから覚えたのですが、あたかも自分で発見したかの様に言います。
「4リットル以下だと二酸化炭素がマスクの中にたまって、PaCO2が上昇するからだよ。」
普通はここで、「さすが〜!知らなかった〜!すご〜い!センス良いですね!そうなんですね!勉強になりました!」と言って終わりになります。何じゃこれ?と思った方は以下の曲を2番まで聞いてみましょう。

しかし、たまに鋭い人がいて、「酸素マスクなんて容量が少しなのだから、酸素1Lでも余裕でたまったガスを排泄できるのでは?」と聞かれます。

今回はそれについての勉強です。英語の得意な方は以下の論文をご覧ください。UpToDate "Continuous oxygen delivery systems for the acute care of infants, children, and adults"に引用されている文献ですので、間違いない!

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1399-6576.1991.tb03291.x?sid=nlm%3Apubmed

何と二酸化炭素がたまるのはマスクの中ではなく身体の中という意味だったのです。実は私も知りませんでした。

健康な人にマスクを装着して全く酸素を流さないと、一回換気量が160%に増えるのだそうです。普通のマスクとか、N95マスクを付けると苦しく感じるのと同じ理屈のようです。健康な人なら一回換気量を1.6倍にする事は短時間なら苦痛ではないでしょうが、病気のある人には困難です。よって、一回換気量を増やすことが出来ずに動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇するのでしょう。

別の文献もありました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5532777/

酸素マスクの容量は約50mLだそうです。酸素を全く流さないと、その容量は死腔になります。死腔の説明はややこしいのですが、肺をストローを付けた風船と考えると、ストローの部分が死腔と言って酸素の交換に関係ない部分になります。
人間の一回換気量は7-8mL/kgぐらいだそうで、死腔は2mL/kgだそうです。計算を容易にするため8mLとして、体重50kgの人がいたとすると、一回換気量は400mLで死腔は100mL、つまり、実際に有効な換気量は300mLです。
ここで酸素マスクを装着し、50mLの死腔が増えたとすると、患者さんが同じ力で息を吸い400mLのガスを体内に取り込んでも、実際の換気量は250mLに減ってしまっています。約83%に減っています。換気量と動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は反比例しますので、1.2倍(100÷83)となり、PaCO2が40の人だったら、48に上昇します。

酸素や空気を5L以上流せば、マスクは死腔にならないという理屈のようですね。酸素は分時換気量以上の量が必要らしいです。つまり、だいたい5L以上。

どちらにしても、酸素マスクの中に二酸化炭素がたまる(もちろん少しはたまりますが)のではなく、身体の中に二酸化炭素がたまるのでした。

1-3L位までの酸素投与であれば、経鼻カニュラか最新式?のマスクを使いましょう(後者は一度も使ったことがありません)。

https://asiapac.medtronic.com/content/dam/covidien/library/jp/ja/product/oxygen/oxymask-series-sales-sheet.pdf

ただ、経鼻カニュラで1Lでも結構鼻が辛いです。私少し前に経験しました。


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