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株主総会ピークから考えた、会社統治の理想である三権分立

6月29日は上場企業の株主総会のピークでした。日経新聞6月30日朝刊15面「トップ選任、反対票3割も」をはじめ、株主総会で取締役・監査役選任の反対票が多かった記事が目につきました。
こうした記事を見ながら、大きな流れとしては会社法が目指している理想に近づいていると感じました。
 
会社法が商法の一部であった時代から、会社統治(今風に言うとコーポレートガバナンス)の理想は三権分立でした。
三権分立?と思う人もいるでしょう。三権分立とは国の行政・立法・司法のことで、それと会社統治に何の関連があるのかと。しかし、商法、そして現在の会社法も、会社においても三権分立が意識されているのです。
 
株主が主権者として、その株主が最終決定する株主総会が立法(国会)、株主総会から会社経営を託された取締役、取締役会が行政(内閣)、取締役会をチェックする監査役、監査役会が司法(裁判所)と見立てているのです。この三者がチェックし合うことで経営の健全性が守られるということでは、三権分立と一緒なのです。
 
しかしながら、日本では長年、上場企業についてこの三権分立が機能していない、と言われてきました。
 
まず、株主は関連企業同士の株式の持ち合いにより、株主総会にて取締役候補案や各種議案が否決されることはほぼありませんでした。また、監査役は社員から選任されることが多く、取締役になった社員との力関係上、取締役会のチェックも十分ではありませんでした。株主総会、監査役の機能が弱い結果、取締役会、特に代表取締役の権力が非常に大きくなっていたのです。
 
こうした機能不全に対し、会社法の制定(2005年)や各種制度(委員会等設置会社等)の導入により、取締役会のチェック強化を図ろうしてきました。ただ、大きく状況が変わりつつあるのは、こうした法律・制度の整備に加え、株主構成が変わってきていることです。
 
かつては株式の持ち合い等がありましたが、現在は相当解消されています。その一方で外国人株主や個人株主が増えてきました。こうした新しい株主は、投資先企業の実績や取組みを踏まえて取締役選任や各種議案の承認にのぞみます。自ずと、取締役会にも緊張感が生まれてきます。
 
この大きな流れ自体はよいと思います。但し、懸念として短期的実績、取組みが株主総会で評価されるとなると、取締役会、つまり経営陣の視点も短期的になります。時には、長期的には望ましくないものの、短期的実績を出す為の取組みが行われる懸念があります。
 
これがしばしば上場企業が非公開化に向かう理由にもなるのですが、上場企業であっても短期的だけでなく長期的な成長に向けた取組みが望まれるはずです。会社統治の理念に近づいている今だからこそ、更によりよい会社統治のあり方を考えたいものです。

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