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引越しバイト③

なぜ引越しのバイトをしたのか?

・やった事がなく良い経験になると思ったから
・良いトレーニングになると思ったから
・日常に変化がほしかったから

これらの理由が挙げられますが
「バイト募集の張り紙を見たから」
これが真理なんだと思う

こんな風に人生は偶然の連続で
不確かに繋がってるのかもしれない
少なくとも自分の人生は
まったく計画性がなく
真っ直ぐではない道を進んでいる

✳︎

この日は新宿の現場へ向かった
新宿の早朝は殺伐とした雰囲気で
鋭い目つきのカラス達が街を支配していた

新宿の住宅街は道幅が狭く
トラックがギリギリの通れる道幅で
かなりスリリングな運転だった

今回のお客さんは
一人暮らしの20代後半の女性

派手な見た目、酒焼けした声
高そうな家賃のマンション
これらから推測して
水商売をやってる感じの女性だった

部屋から運び出される荷物からも
あまり生活感が感じられなかった

その女性とは
一言だけ喋った
「地元へ帰るんです」
とても哀しそうな目をしていた

もしかしたら彼女は
東京へ夢や目標があって
やってきたのかもしれない

夢が叶ったのか、夢が破れたのか
夢が変わったのか、夢を追うのをやめたのか

それは分からないけど
たぶん酸いも甘いも経験したんだと思う
全身からそんな暗い雰囲気を感じた

もしも東京にウンザリしたのなら
彼女はとても純粋で正常な
心の持ち主なんだろうなと思った

✳︎

引越し屋さんからの助言があった
それは地域によってトラックに運んだ荷物を
盗まれてしまう事が稀にあるらしい

ここは危なそうだから
トラックに載せた荷物を
見ててほしいと言われた

そう言われてみると
確かに新宿の街並みや道を歩く人は
ヤバそうな雰囲気でもあった

そんな事で今回も
トラックの荷台に乗って
ただ見てるだけの時間が多くなった

一人暮らしだったので
荷物はすぐに積み終えてしまい
引越し先の千葉県の柏市へと向かった

荷物の下ろす時間は14:00指定だったので
途中、高速道路のサービスエリアへ寄って
のんびり1人で黙々と蕎麦を食べた

美味しくもなく、不味くもない
絶妙に普通なラインの蕎麦だった

ふと、窓ガラスに映る
美味しくもなく、不味くもない
ゼロの表情をしてる
作業着姿の自分自身を見て
思わず笑ってしまった

✳︎

千葉県の引越し先に到着した

とても小さなアパートだった
新宿の高級マンションとは相反する
小さなアパートだったので少し驚いた

自分にはそれが格好いいと思えた
人間としての強さのようなものを
そのアパートから感じたからだ

荷物はすぐに運び終えた
トラックへ荷物を乗せる作業の
半分の時間で荷物を運び終えるのが
常識だと引越し屋さんは教えてくれた
生活の役には立たない知識が1つ増えた

最後にお客さんに
「ありがとうございました」と
あいさつをして今日の作業を終えた

「こちらこそ、ありがとうございました」
その返答は哀しそうな表情ではあったけど
新宿での哀しそうな表情とは
少し違った哀しそうな表情に見えた
小さな希望のようなものを感じ取れた


引越しには様々な人間のドラマがある
どんな形の引越しだろうと
引越しからは新しい環境が得られる
引越しは素晴らしいスタートの合図だと思えた

今回も素晴らしい引越しに出会えました
また次回に続きます

それではまたCiao!

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