引越しバイト④
この日は「THE 引越し」
という王道の過酷な引越し作業だった
引越し屋さんの情報によると
キツい現場にはいくつかの条件があるらしい
・エレベーターがない
・部屋から階段までが遠い
・階段が狭い
・トラックを停める場所が遠い
・お客さんがクレーマー気質
これらの条件が重なると
引越し作業はキツくなるみたいです
ちなみに引越しの現場が悪条件だと
給料も少し上がるらしい
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今回の現場は東京都の立川市
5階建ての団地、エレベーターなし
階段の狭い、5階の部屋だった
これまで楽な現場しか経験してこなかったので
こんな悪条件が重なる引越し作業に
不思議と覚悟と気合いが入っていた
今回は自分を含め
5人体制での作業だった
引越しにはその現場でリーダー的な人がいる
この日のリーダーは女性で
この仕事を10年程やってる
ベテランの女性で
皆にテキパキ指示を出して
効率的に作業を進めてくれた
自分は梱包されたダンボールや荷物を
階段で下ろす作業を担当した
ボクシングで培ったパワーや脚力は
30分で打ち砕かれてしまった
そんな中、女性リーダーは
大きな洗濯機やベッドマットレスを
1人で運んでいて感心してしまった
洗濯機やベッドマットレスなど
大きな荷物を持つときには
持ち方にコツがあると教えてもらった
言われた通りに持ってみたら
素人の自分でも持つことができた
その時のリーダーの
嬉しそうな顔は子供のようだった
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必死に汗だくになりながら
ひたすら荷物をトラックへと運ぶ
団地の階段は狭く急勾配で
根を上げたくなったけど
みんなの頑張りに励まされ
チーム一丸となり荷物を運び出した
人付き合いが苦手な自分が
誰かと一緒に協力する行為に
素晴らしさを感じてることに驚いていた
学生の頃に体育祭や文化祭などで
はしゃいでる奴らを馬鹿にしていた
そんな思春期の歪んだ自分を思い出して
なんだか恥ずかしい気持ちになった
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この日は24℃の高い気温だったので
リーダーの指示で途中で休憩を入れ
みんなで雑談をした
たった数時間前に
初めて会った人達なのに
5人の会話はとても弾んだ
ちなみに、どこの現場の引越し屋さんも
ほぼ100%の確率でお金の話になった
他の大手の引越し業者の給料や
労働体制なども詳しく教えてもらった
お金の話は良くも悪くも
人の距離を縮める効果があるものです
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物量は多くはなかったけど
悪条件だったので時間がかかった
なんとか荷物を全てトラックへと積み終えた
引越し先は近場だったので
みんなでコンビニへ寄って
「ダッシュで昼ごはんを食べましょう」
と言われた
「ダッシュ」とは具体的に何分間なのか?
それによって選択する食べ物も変わってくる
わからなかったので手軽に食べられる
おにぎりを2個買った
引越し屋さんのマンガのような
早食いは慣れたものだった
その姿が妙にカッコいいなと思ってしまった
久しくコンビニの前でご飯を食べる
そんな行為はしてこなかったので
大人の青春をしてるようだと思えた
ちょうど、おにぎり2個分の
約15分の青春を終え
急いで引越し先へと向かった
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ラッキーなことに引越し先は
マンションの一階だったので
荷物を下ろす作業は
あっという間に終わってしまった
この日は2軒の契約だったので
同じメンバーで次の現場へと向かった
もうすでに「阿吽の呼吸」のような
チームワークができていたので
次の現場でも一丸となって
流れるようなスムーズな作業をこなした
そして夕方には2軒目の作業を終えてしまった
3月のこの時期は繁忙期で
引越し屋さんはこれから
3軒目へと行きますと言っていた
体力を失っていた自分には驚いてしまった
この仕事を本業にするのは無理だと確信した
もう会うことはないだろう
心地良かったチームの引越し屋さんに
感謝の気持ちを伝えサヨナラをした
自分はこの日の労働を終えた
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早朝から夜まで働いたせいか
気力も体力も空っぽになり
クタクタになり自宅へ帰った
しかし
自分の中のマゾヒズムが発動したのか
このままボクシングジムへ行ったら
体力や精神力はどんな反応をするだろうか?
そんな意味不明か好奇心が芽生えてしまった
好奇心が動き出したら止める事はできない
そんな面倒くさい自分の性格にムカつきながら
奇行ともいえるボクシングジムへと向かった
案の定、まったく動けず
ジムのトレーナーさんに
「今日は覇気がないね」
と見透かされてしまった
それでも頑張ってトレーニングを続け
いつものハードなメニューをこなした
心身ともに空洞になった帰り道
今日1日を全力で頑張った
自分自信に対して
心から満足感を感じられた
今日は本気で生きた。と思えた
月がとても眩しく見えた
今日会った引越し屋さんは
そろそろ3軒目の引越し作業が
終わってる頃だろうと思った
そんなハードで充実した1日でした
次回が最終回です
それではまたCiao!
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