日大の主張【「つぶせ」は「最初から当たれ」という意味】は正しいのか

アメフトの日大選手による関学選手への悪質なタックルが話題になっています。反則を犯した選手の主張と監督・コーチの主張には矛盾する部分がありますが、監督・コーチ側も「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」の発言は認めています。しかし、これは監督・コーチ側が主張するように「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味だったのでしょうか。私はこれは正しいとは思えなかったので、この主張について考えてみました。

私は大学時代に関東2部~3部のチームでアメフトを4年間プレーしました。しかし、最近のアメフトについて勉強しているわけではないので知識が古いかもしれません。(プレーしていたのは20年ほど前のことです。)また、主にオフェンスのポジションだったため、ディフェンスについては認識違いがあるかもしれません。もし間違いなどありましたらご指摘いただければ幸いです。


朝日新聞デジタルの記事によりますと、日大広報部から次のようなコメントが発表されました。

会見全体において、監督が違反プレーを指示したという発言はありませんでしたが、コーチから「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」という言葉があったということは事実です。ただ、これは本学フットボール部においてゲーム前によく使う言葉で、「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味です。誤解を招いたとすれば、言葉足らずであったと心苦しく思います。

日大のコメントにあるように「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」は「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味になるのでしょうか。

確かに「つぶせ」という言葉はアメフトにおいては「無茶なコンタクトで怪我をさせろ」ではなく「(つぶすくらいの気持ちで)思い切って当たれ」や「タックルして相手のプレーを阻止しろ」という意味で使われます。例えば、ボールを持って走っている相手のランニングバックに対して「つぶせ」というような場合は「タックルして止めろ」と解釈してよいでしょう。ですが、今回の言葉は「1プレー目で」かつ「QBを」となっています。この2つのワードがあることによりどのような意味になるでしょうか。

まず「1プレー目で」という条件がなく「(試合の中で相手の)QBをつぶせ」であればどうでしょう。これであれば「思い切って当たれ」と解釈しても問題ありません。QBに正当なプレーの範囲で激しくタックルしてファンブルを誘ったり、ビビらせたりできれば試合に有利に働きます。

次に「QBを」ではなく「1プレー目で対面(目の前にいる相手)をつぶせ」の場合はどうでしょう。こちらも「思い切って当たれ」と解釈できます。試合を通してほぼ毎プレーぶつかるであろう目の前の相手に対して最初の1プレー目にガツンとかましておくのは有効でしょう。

しかし、「1プレー目で」かつ「QBを」とタイミングと相手を限定したらどうなるでしょう。ディフェンスライン(反則を犯した日大選手のポジション)の選手がQBの選手をつぶしにいけるかはオフェンス側が選択したプレーによります。例えば、QBがランニングバックの選手にボールを渡したら、ディフェンスラインの選手はQBではなくランニングバックの選手をつぶしにいくものです。つまり普通に考えれば離れた場所にいるQBに対して必ずしもつぶしにいけるとは限らないのです。にもかかわらず、「1プレー目でQBをつぶせ」なのです。これを実行するにはプレーとは関係なく多少無理をしてでも、それこそタイミングが遅れて反則になったとしても、QBをつぶしにいけという意味にならないでしょうか。「思い切って当たれ」という意味にはならないように思えるのです。

結論

言葉尻をとらえた屁理屈なのかもしれませんが、これが会見の中で質問の回答として出てきた言葉であれば、多少のニュアンスの違いは言い間違いの可能性もあるでしょう。しかし、これは日大広報部から発表されたコメントなのです。まさか当事者に確認しないで慌てて公表したということはないでしょう。監督・コーチ側が主張するように「最初のプレーから思い切って当たれ」という意味であれば、「1プレー目で」ではなく「1プレー目から」になり、相手にわざわざ「QBを」と指定しないと思うのです。つまり、「1プレー目からつぶせ(つぶすくらいの気持ちで当たれ)」となるのではないかと。「1プレー目で」「QBを」と指定したところに別の意図を感じてしまいます。文字通り「1プレー目でQBをつぶせ」という意味だったのではないかと。

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