サカナとクリエイション

サカナクションとクリエイション

9月30日にサカナクションの「SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around」に参加してきました。

242本のスピーカーを設置し、ドルビーの協力のもと6.1chサラウンドシステムを導入したライブパフォーマンスを行った。2013年にも開催されその時の衝撃も凄かったですが、今回のライブは前回の衝撃を軽々と超えてくるものです。

まだ、大阪公演が残っているので、ネタバレになるので細かいことは書きませんがサカナクションがこだわり抜いたクリエイションを体感することができました。

余韻が残っている中、サカナクションとクリエイションについて、前々から感じていたことを書こうと思います。

サカナクションとクリエイターとの繋がり

現在のサカナクションを語るときに欠かせないものは、クリエイターとの繋がりです。"チームサカナクション"と言われるサウンドやライティングなどバンドメンバーに欠かせないテクニカル周りのチームの存在と、世界的なインテリアデザイナーやファッションデザイナー、映像ディレクター、スタイリスト、建築家など、他の日本のバンドでは無いような交友関係です。

例えば、サカナクションのファンなら必ず知っているWonderwall 片山正通 さん


片山さんが手がけた『ピエール・エルメ・パリ 青山』のリニューアルでは、一郎さんが率いる『NF』が音響システムのディレクションしています。一郎さんと仲が良く仕事の関係だけではなく、SNSにお互いのプライベートな写真を載せ合うような間柄です。

また、サカナクションのMVやライブ内の映像を手がける田中裕介さん

「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」「夜の踊り子」「さよならはエモーション」「新宝島」「多分、風。」のMVを手がけています。

その他にもスタイリストの三田真一さん、ヘアメイクの根本亜沙美さん、スタイリストでありクリエイティブディレクターの北澤momo寿志さん、建築家の谷尻誠さん、ファッションデザイナーの森永邦彦さんなど、多彩なクリエイターとの繋がりがあります。

そのような繋がりを音楽活動以外に広げるためボーカル山口一郎さんが代表となり『株式会社 NF』を2016年11月に立ち上げました。
片山さんの紹介にも書いたピエールエルメ青山店や『AIR MAX REVOLUTION TOKYO』などの仕事をNFとして行い、ライブではない場で様々なクリエイターとコラボレーションしています。

NFのサイト内のミッションにはこのような言葉が書かれています。

各界のクリエイターとコラボレーションを行いながら音楽と様々なカルチャーが混ざり合うコンテンツを企画・運営し社会貢献や、より良いライフスタイルの提案を実現させる。

今までのミュージシャンとクリエイターの関係性は、音楽をよりよく見せるための映像やデザインビジュアル作りのサポートがメインでした。しかし、サカナクションはNFのミッションにもあるような様々なクリエイションが複合的に混ざり合って科学反応を起こしています。
音をメインとしたクリエイションで、新たな体験を世の中へ放流し、NFに関わる以外のクリエーターにも刺激を与え、ミュージシャンとクリエイターの新しい働き方を提案しています。


サカナクションとクリエイターとリスナーとの関係

クリエイターと繋がり、音楽以外の場にも活動の幅を広げるサカナクションですが、リスナー(ファン)とクリエイターを繋げることも積極的にしていると思います。

普通のアーティストとリスナーの関係ならば、音楽を聴いてもらいライブを観てもらうだけで、そのアーティストと関わる裏方の人を知る機会はほとんどありません。一部のコアなファンが、自らそのアーティストに関わるスタッフを調べて知るというだけのものでした。

しかし、サカナクションは違います。Youtubeの公式アカウントが公開しているミュージックビデオには必ずスタッフリストの記載があります。

このようなスタッフリストの記載は他のアーティストではほとんど行われていません。サカナクションがいかに自分たちの作品に関わるクリエイターを大切にしているのかが分かります。

また、先日の幕張メッセでのライブでは、サウンドや照明などを担当するチームサカナクションのメンバーを紹介する場面があったり、関わったすべてのスタッフの名前をエンドロールとして流し、関わったスタッフへのリスペクトがとても感じられる演出でした。

このような裏方と言われるスタッフを公にするということは、一部のコアなファンだけしか知らなかった職種やスタッフとリスナーを繋げることにもなっています。

リスナーからとても遠い存在だったクリエイターを身近な存在にしていく。10代、20代のファンが多いサカナクションですが、将来どんな仕事に就こうか考える若者にとって大きな影響になると思います。

実際に自分自身もサカナクションやその他アーティストのMVの監督やデザイナーを中高生のときに調べ、影響を受けクリエイティブを学びたいと思いデザイン系の学校への進学を決めました。


サカナクションは、バンドとリスナーだけの関係でなく、バンドとクリエイターとリスナーという新しい関係性を築き、音楽だけではなく外へ外へと活動の幅を広げ、僕たちがまだ味わったことのないような未知の体験をこれからも提供してくれるでしょう。

もっと、サカナクションのクリエティブについて知りたい人は、2008年から2014年までのサカナクションのビジュアル視点から特集した「月刊MdN 2014年 9月号」を見るととても分かりやすくサカナクションのクリエイティブについて知ることができます。


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