米国株マーケット考察 2020.12.4

マーケットサマリー

米国株式相場は、3日続伸。ダウ工業株30種平均は前日終値比85.73ドル高の2万9969.52ドルで終了。ナスダック総合指数は27.81ポイント高の1万2377.18で引けました。

ダウは一時、3万ドルを超えてましたが、ファイザー製ワクチンがサプライチェーンのトラブルで12月の出荷が遅れ、当初予定の50%程の出荷数となりそうとの報道が原因で、引けは3万ドルを下回りました。

ファイザーとバイオエヌテックは2021年中、13億本のワクチンを供給予定で、今年の不足分である5000万本は充分に来年でカバーできるとされています。

株式市場のサポート要因として:
(1) 足元では新型コロナ感染拡大が続いており、米疾病予防管理センターは今後数カ月はこれまでで最も深刻な危機に直面すると警告しているものの、米追加経済対策やワクチンへの期待が強いこと

(2) 追加景気刺激策実行による来年の景気回復への期待からの市場のモメンタムは強く、インフレ期待が押し上がるとの見方もありますが、当面は利上げにつながる公算は小さく、FRBのゼロ金利は当面維持されると見られていること

が挙げられます。

昨日発表の経済指標は:
(1) 11月28日までの1週間の米新規失業保険申請件数は71万2000件と、前週の78万7000件から減少したことものの、引き続き高いレベルでの失業保険申請者数が維持されています。

(2) 11月のISM非製造業総合景況指数は55.9と、感染拡大の中でサービス業のモメンタム低下が続いていることが示されました。但し、景気判断の50を上回る状況は続いており、健全なペースでの拡大を示しているとの解釈もあります。

全体的な印象は相場変動要因は限定的で、本日日本時間夜発表予定の米国雇用統計の発表待ち的な動きをしていました。

為替市場では、米ドルのテクニカルブレイク的な下落が続いています。一方でユーロ円の上昇が一服すると、その圧力は直ぐにドル円に効いてくるというのが昨日の状況で、綱渡り状態は続いているという感じです。

用語解説


- サプライチェーン(supply chain)ー商品が消費者に届くまでの「原料調達」に始まり「製造」「在庫管理」「物流」「販売」等を通じて消費者の手元に届くまでの一連の流れのこと。

-新規失業保険申請件数ー失業者が失業保険給付を始めて申請した件数を集計し、季節調整を加え発表するもの。本指標は景気の動向に敏感に反応するといわれており、景気先行指数として用いられています。米労働省雇用統計局が毎週集計し、集計期間の翌木曜日に発表。米雇用統計の基準日である12日を含む週の結果は、それ以外の期間よりも注目度が高いです。

-ISM非製造業指数ーISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)が全米の非製造業375社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に作成する景況感を表す指数。アンケート項目は受注、在庫、雇用、価格など10項目。「増加・良くなっている、同じ、減少・悪くなっている」の三者択一となっています。10項目のうちの4項目、事業活動、新規受注、雇用、入荷遅延について、季節調整をかけた上で総合指数を算出します。

ISM製造業の2営業日後、毎月第3営業日に発表され、労働省による雇用統計の発表と前後しますが、雇用統計よりも発表が早い場合、雇用における非製造業の割合が大きいこともあって、先行指標として注目されています。


立沢 賢一(たつざわ けんいち)
元HSBC証券社長。
会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資戦略、情報リテラシーの向上に貢献します。

・立沢賢一 世界の教養チャンネル
http://www.youtube.com/c/TatsuzawaKenichi

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