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子どもの味覚の表現が面白かった話

子ども用のはみがき粉がなくなったので、4歳の娘と2人で薬局へ買いに行った。

息子はぶどう味のはみがきを愛用

はみがき粉と言っても、7歳の息子はペーストタイプのはみがき粉は苦手で、ジェルタイプのはみがきを使っている。最寄りの薬局にはぶどう味といちご味の2種類があり、彼は最初にぶどう味を試して気に入った。次にいちご味を試して「うーん、ちょっとすっぱいかな」と言い、それ以降ぶどう味を愛用している。

彼は本物のイチゴも幼少期は大好きだったのに、スーパーかどこかで買ってきたイチゴの中にたまたますっぱいのがあったことをきっかけにイチゴを食べなくなってしまった。

枝豆も同じで、幼少期は大好きだったのに、何かのタイミングで苦い枝豆を食べたことをきっかけに食べなくなった。これは彼の味覚が優れていると考える以外になく、イチゴや枝豆以外でも彼がおいしくないという食べ物は無理矢理食べさせないようにしている。

話が少しそれたが、息子がぶどう味を愛用しているので、娘も必然的にぶどう味を一緒に使うのが当たり前の生活が続いていた。

娘がいちご味のはみがきの存在に気づいた

ところがあるとき、彼女は薬局でいちご味の存在に気づいた。「わたしはこれがいい!」と言い始めた。息子は当然、いちご味はすっぱいからイヤだと反対する。妻も1本で済ませたいから「ぶどう味でいいでしょ」と説得を試みたが、彼女は納得しない。彼女の好奇心の芽をつみ取ることはしたくなかったので、「ここはお金で解決しよう」と僕が提案し、ぶどう味といちご味を1本ずつ買うことにした。それ以来、我が家にはぶどう味といちご味が1本ずつあるのがスタンダードになった。

同じタイミングでぶどう味といちご味を1本ずつ買っても、なぜかぶどう味よりもいちご味のほうがなくなるのが早い。その理由は、自分専用のはみがきを買ってもらった娘が、うれしさのあまり歯ブラシ以外のところにもニョロニョロと出して遊んでいたからだ。

いちご味がなくなると彼女はガッカリするが、彼女は元々、ぶどう味でも満足できる人なので、その後は2人でぶどう味を使い、2本ともなくなったら、また新しい2本を買いに行くというのがいつものパターンだった。

ぶどう味でもいちご味でもない伏兵が登場!

それがこの日はまったく想像もしていなかったことが起こった。なんと、ぶどう味といちご味のほかに、「キシリトールの自然な甘さ」という見たことのない種類が加わり、3種類が並んでいた。娘は当然「これ、なに?」と反応する。

「これはね、キシリトールの自然な甘さって書いてあるよ。キシリトールというのは歯を丈夫にしてくれるお薬の名前だよ」と説明したら、「甘いの?」と聞いてきたので、「甘いよ」と答えたら、「わたしはこれがいい!」という。そこでこの日は、息子用のぶどう味と、娘用の「キシリトールの自然な甘さ」の2本を買って家に帰った。

家に帰ると、彼女は新しいのを買ってきたうれしさで息子に見せびらかし、息子も「なに、それ? 使わせて!」と大興奮。娘は「使わせてあげてもいいけど、これは私のだから、私が先だからね」と息子を制した。

そして一目散に自分の歯ブラシを取りに行き、「キシリトールの自然な甘さ」をたっぷりつけてから、口の中に入れた。その5秒後、彼女は首をかしげながら「うーん、そんなに甘くないかな」とつぶやいた。

娘に続いて息子も歯ブラシを取り出し、「キシリトールの自然な甘さ」をたっぷりつけて歯を磨いたが、「なに、これ? イライラするほど味がしないね」と吐き捨てた。その表現を聞いて、思わず笑ってしまった。

「イライラするほど味がしないって、どういう味なんだろう?」僕も当然、興味が湧き、歯ブラシにつけて歯を磨いてみると、「キシリトールの自然な甘さ」というのは、子どもにはまったく甘く感じないことが実感できた。

息子と娘はこれからしばらくの間、ぶどう味だけを使い続けることになるだろう。そして、「キシリトールの自然な甘さ」はまったく減らないまま、ぶどう味がなくなることが容易に想像できたので、次の日にこっそりといちご味を追加購入した。

「キシリトールの自然な甘さ」は我が家の子どもたちには不評だったけど、僕にとっては子どもたちの面白い場面を見せてくれた思い出の商品になった。これから薬局で見かけるたびにクスッと笑えることを考えると、いい買い物だった。感謝したい。

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