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レビュー「わたしの好きなアルバム10作品」 第六回 浮世の夢

「浮世の夢」

一風変わったタイトルの「浮世の夢」、レッド・ツェッペリンを手本にIIIというアルバムタイトルになるかと思いましたが、前作、前々作よりもコンセプト性が増した結果、具体的なタイトルが付けられたのかもしれません。春の一日と春夏秋冬のコンセプト、二通りという離れ業は見事でした。アルバムの一曲目、そのギターのイントロは、ジャニス・ジョプリンの「サマー・タイム」やストリート・スライダーズの「風が強い日」を初めて聴いた際のインパクトに近いものがありました。本作の喜怒哀楽は喜と楽といったところでしょう。でも、孤独でもあることも理解ができますが、孤独を消極的な事柄ではなく、それを楽しんでいる様子がこれまでになかったロック体験でした。とは言え、大袈裟に言えば演歌みたいな本作です。あらためて、自部屋にあるレコードやCDを眺めてみてもこのような作品はありません。演歌みたいにミディアム・スロー、それは彼ら四人の自信や余裕を感じさせますが、緊張と興奮の「珍奇男」の手応えからそのようにさせているのかもしれません。本作に出会えた事もそうですが、本作が好きになれる自分自身の感受性、その発見も嬉しいと思えてしまう本作です。

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