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生成AIを活用した次世代採用戦略

 今回ご登壇頂いたのは、株式会社リーディングマークのビジネスディレクター/AIエバンジェリストの今村健一郎さんです。

今村さんは、サイボウズ株式会社で品質保証エンジニアやシステムコンサルタントとして勤務の後、株式会社セールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)、デロイト トーマツコンサルティング合同会社を経て、現在はリーディングマーク社でAI(人工知能)と経営や人事領域を専門に担当されています。また、一般社団法人生成AI活用普及協会で協議員としても活動されています。

今回は、ご専門の「生成AIを活用した次世代採用戦略」をテーマにお話頂きます。

※本記事は、2023年10月26日に開催されたHR Millennial Lounge Season2」のイベントレポートとなります。(テーマは「生成AIが切り開く新しい人事の風景」になります)


はじめに

リーディングマークの今村と申します。よろしくお願いいたします。

私は、社会人になってから一貫してDXの分野で活動してきましたが、事業会社で関連した自分の事業を作っていきたいという思いがあり、リーディングマークでAIの担当者として仕事をしています。本日は、生成AIとは何かということと、それが経営や人事領域にどう活用できるかについてお話ししたいと思います。

生成AIとは何か

認識AIと生成AI


 一口にAIといっても、これまでわれわれの生活に身近だったのは認識系のAIでした。
例えば、犬とか猫を判別したり、ディープラーニングでデータをもとに判別や分類をしたり予測や推薦したり、データ活用のためにAIを使うというもので、こちらが長らく主流でした。
 
これに対して、生成AIとは学習モデル作るという点では認識系のAIモデルとほぼ一緒ですが、情報を予測することから置き換えや読み解きへと意味合いを変えて、それを「生成」として発展したものです。大きなデータを読み解かなくても、ユーザーが入力した情報に対して、対話型で対応してくれるのです。


「ChatGPT」は、既に皆さん試されているかもしれませんが、即興性のある、人間味のある使われ方をしていると思います。

最初は、文章生成や言語の認識生成で話題になりましたが、現在はそれに加えて画像や音楽、音声の生成や翻訳などいろいろなことができて、それぞれにアプリケーションが出ています。

そのほか、画像をインプットすると、それがどんな画像かを文字で出力するというように、いわゆるマルチモーダルとして、さまざまな形態のデータをないまぜにしてアウトプットできるようになっています。より、活用の幅が広がっています。

生成AIを語る上で、やはりChatGPTは欠かせません。
Open AIという組織が出したもので、最初は非営利団体としての始まりでした。

しかし、開発にお金がかかり、投資家のイーロン・マスクが抜けて大きな投資家がいなくなって先行きが不安になり、営利法人を立ち上げて、そこで投資家から正式に資金調達するようになりました。

一定程度売れたら投資家に還元するものの、それ以上は開発に回して利益追求と社会貢献をバランシングしていくという、企業のあり方としても面白く、今風の会社といった感じです。
 
彼らは、言語モデルだけではなく、絵を描いたり音声を認識したり、いわゆる人間の五感に関するところをまかなっていく汎用人工知能を実現することを最終目的としています。

ChatGPTの仕組みとは?


たとえば「この花は綺麗です」という文字を生成するときに、今までは、「この|花|は|キレイ」みたいな区切りで、パーセンテージで採用して、一個ずつ文字を生成採用していました。

それが、2017年に出されたトランスフォーマーというシステムが出てきたことで、それを組み込んだ今のChatGPTをはじめとする生成AIが、ヒトの頭脳らしいものになってきました。

どんどん次の文章や単語を予測していって、どこに注目すれば良いかということだけを学ぶようになったのです。
 
人間も、いちいち文字で区切って文章の見通しは立てません。漢字や名詞を認識して、なんとなく次の文章を予測していくと思うのですが、生成AIは、そのような「どこに注目すべきか」を組み込んでいったのです。

大規模言語モデルの振る舞い/生成AIができること

 これまでの認識AIは、10から1にするのが得意で、文章でいえば要約や添削、校正がメインだったのが、生成AIでは、1を言えば10、5言えば5を返してくるというように、アイデアの提案やブレインストーミング、リサーチや論点の洗い出しといったやり取りができるということなのです。
 
ここまでくると、人間がコミュニケーションしてくれていると思うようになってきており、最近では、生成AIがいろいろな企画をする際に役立つという感覚が根付いてきたように感じます。 

生成AIと付き合うためには「質問力」が大切

質問をすれば適切な回答が得られるとなると、今の流れとしては、人間の質問力が大事ということになっています。ChatGPTを使うとゴールにはたどり着いてくれますが、どこがゴールなのか、どこに行きたいかは、人が決めなければいけません。
 
最初にどこに向かいたいかを決めて、そこに向かってどう行くかをフォローしてくれるということです。そこを踏まえれば、生成AIとうまく付き合っていく秘訣だと思います。
 
よくとして、AIが人の仕事を奪うのではないかと仰る人もいますが、それは誤解で、AIを使いこなせる、共存できる人と、そうではない人とのリテラシーの差がすごく大きくなるということなのです。

これは、いろんなメディアでも言われていることですが、本当にそう感じています。

 人事業務はどう変わるか?

ChatGPTが支援できる内容

では、これまでの話を踏まえて組織戦略や人材戦略において、ChatGPTがどう活用できるのかについて紹介したいと思います。

ChatGPTでできることとしては、経営計画の理解と現状把握、人材ビジョンの策定においては、入力したものへの応答生成や文章要約、翻訳変換のほか、階層構造の検討を行うことができます。
 
特に、経営計画といった小難しいものを分かりやすくかみ砕いて、時短も兼ねてアウトプットしてくれます。

わたしも、翻訳変換や要約を使った理解支援に加えて、ビジョン戦略を作る際の壁打ち相手として良く使っています。

実際に、経営者目線でアジェンダを作ったときに、営業マンから見るとどういう文言の発信になると良いかなど、視点替えの時に使用しています。
 
また、アイデア出しや読み解きの際に、すごく使えると感じています。

実行部分になると社内のデータを読み込ませないといけないので、機密情報が云々といった心配が出てくるかもしれませんが、最初の構想を策定設計するぐらいまでなら、本当に良い「壁打ち相手」になると思います。

⽣成AIで⽀援できる概要と価値〜⼈材フロー〜


人材フロー(採用~配置)においても様々活用できると考えております。

弊社でも性格検査のプロダクトを提供しておりますが、例えば、適正評価や志向性の分析結果、配属先の特性情報を事前情報として読み込ませることで、過去の事例やベストプラクティスに基づいた配置先の提案、配属プロセスの提案などをChatGPTによって出力させることができます。

一方で、このような業務に入っていくと、従業員の個人情報などを読み込ませる必要になるため、公開されているOpenAIなどのツールを使用してしまうとセキュリティの懸念が発生してしまいます。

その場合には、自社での内省や専用のプロダクトを使うなど、セキュリティを担保した活用が不可欠になります。

このように人材フローにおいて活用する場合には、読み込むデータだけでなく、どこまで何を読み込ませて良いかの判断が必要になることを本日は強調してお伝えできればと思います。

次世代の採用戦略とは

選考プロセスにおけるAI活用術 見極める=見抜く×見立てる


続いて、採用での活用についてお話をしていきます。
  
人材を採用する際には、「見抜く」と「見立てる」がキーワードになります。見抜くは、その人のパーソナリティやスキル、経歴に対して、見立てるは、自分の組織に合うのかなどのカルチャーフィットであり、この両軸が大切になります。

まず「見抜く」についてですが、上の逆ピラミッド図の通り、変わりにくく深い順に、価値観や性格→思考→行動→成果となっています。

深いところを押さえつつ、今後、新卒やコアとなる人材を採用して即戦力になってもらうためには、経験や知識、スキルを見ながらも、価値観や性格といった、変わりにくい部分をしっかりと見る必要があります。
 
「現状価値」とは表層で見えるもので過去の傾向から分かること、「将来価値」は、その人が目指したいところやどうなりたいかとポテンシャルを指します。その上で、現在価値については、生成AIを使って読み取れると思っています。
 
ChatGPTで、履歴書や自己PR書からどんなスキルセットを持っていて、それが自社の求めているものとマッチするかというのを点数化することが可能です。
構造化面接のフレームがあるような企業であれば、そのフレーム自体をAIに読み込ませることで、AI面接もできてしまいます。
 
 
現在価値の部分はAIを活用する素地がありますが、ポテンシャルの部分でらう将来価値は、好奇心や洞察力、共鳴力、胆力といった4つの特性となっており、個々の見極めがすごく難しくて、それを面接の中で引き出して理解できるかは、面接する側のスキルが重要になってきます。

 

その上で、ポテンシャルを見抜く時の判断材料に使えるというのが、性格検査のあり方です。

弊社ではプロダクトとして性格検査も提供していますので、参考となる情報を提供させて頂きます。
どのように性格検査を使用していくかというと、検査からどういった性格の人が、どういったコンピテンシー(行動傾向)を持つ傾向にあるかを把握できるようになります。
それが見えると、「この性格の人は、恐らくこのコンピテンシーが足りないから、そこに関するラーニングコンテンツを提供する必要がある」というように、AIを活用して検討することができるようになり、弊社も実際にお客様で活用の提案を行っております。

 もう一つ採用で重要なのが「見立てる」ことです。
これまで人の見抜くことをお伝えしましたが、見抜いた上でその組織のカルチャー等にフィットしそうかどうかを検討していく必要があり、これが「見立てる」ということになります。

この「見立てる」が重要で「見抜く」・「見立てる」を合わせて初めて「見極める」ことができるようになります。

一方で、求職者だけを見て、その人を深く知るということはできても、見立てる時に必要な「何十人、何百人と従業員がいる部署自体がどんなパーソナリティなのか」いうことは、もはや人が判断するのは難しいわけです。
 
だからこそ、パーソナリティを定量化して、部署の性格傾向みたいなものと求職者本人がどの程度マッチするかを、AIプロダクトを使って判断していくことが重要で、近い将来そのような世界ができるのかなと思っています。

AIを活用した次世代採用プロセス


先ほど申し上げたように、現在価値はAIをどんどん活用できても、ポテンシャルはなかなか難しいので、人間が判断する必要が出てきます。

でも、AIがあると、そもそも面接もせずに履歴書で落としていた人にも面接ができるようになることが大きな転換だと思います

履歴書という現在価値だけで落としていたものを、対話型AIを活用することで、履歴書以外のパーソナリティも判断したうえで、フィルターをかけていくことができるようになります。そのため、多角的な情報で判断した上でボーダーライン上の人は最後人が判断していくことで今までよりも精度の高い採用が可能になります。
一方で、忘れてはいけないのが、最終的な意思決定は人間なので、「誰と働きたいか」で選ぶということです。

そのため、型ができるスキルセットに関してはAIがジャッジ、ポテンシャルやカルチャー、フィット感は自分たち人間が向き合って見抜くというのが、AIと一緒に共存する採用なのだと考えています。
 
ご清聴ありがとうございました。

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