見出し画像

プリンターはお金を産むがソフトウェアとインターネットはお金を産むのだろうか?

1977年生まれの僕は、2000年に大学を出て広告代理店に勤めた。当時就職活動はハガキからオンラインに変わりつつあり、就職氷河期ど真ん中の僕たちは、数少ない就職先でもシステムエンジニアの求人は旺盛で、PCを持っていなくて苦手だった友達もエンジニアになった時代です

就職すると、先輩はチームで一台のPCで日報をまとめたりしていて、僕の年からは1人一台のパソコンが支給されたという、まさにデジタル化の境界線だったなと感じる年代です。

当時フリーペーパーの企画編集をしていた時は色校正、印刷のそれぞれのタイミングで、出力原稿と入稿データをMOディスクに入れて空港便などで送っていた。

MOはもちろんお金がかかるので定期的に返却してもらったりしていた。その前は同時送信システムで電話をかけて通信の口を印刷工場に頼んで開けてもらいリアルタイム送信をしたりしてハイテクな世の中に感動したりしていたが、今はメールであっという間に1GBでもデータが送れてしまいます。

あっという間にオンラインしかない世の中に

それからたかだか20年。
時代はあっという間にオフラインが存在しない世の中になりました。印刷したいものがある時はネットで検索して見つけ、データは数十万のAdobeの専用ソフトを買わなくても月々数千円でソフトが使えるし、パソコンの処理速度も早くなり、ずいぶんデータ制作も簡単になりました。

そんなインターネット万能な世の中でも意外に難しいのは「本当に印刷している工場」を見つけて直接印刷を依頼することです。

意外に思うかもしれませんが、紙の印刷業界5兆円の中でインターネットでの通販印刷の市場はまだ1000億を超えるくらいの規模しかないくらいには遅れていて、本当に印刷している工場は昔からのB2Bの下請け構造に組み込まれているためネットでの存在感はないに等しいと思います。
(僕は布の印刷業界なのでちょっと違うかもしれませんが)

製造業のデジタル化を小さく始める

中小製造業のDXと言われるが、バズワードとなったDXは何でもかんでもDXという枕詞で話される傾向があります。

これは営業の記事なので細かいことは抜きにしても、はてしなく遠いDX実現までのプロセスで、まずはこの段階を踏む大変さはすごく考えるところではあると思っています。

そんなことを言っているけど、僕は印刷業のDXに取り組む中でいろいろな難しさと課題をまさに感じます。

印刷業のDX

小さく始める製造業のデジタル化の中でそもそもDXに至るまでに、印刷業のDXにはいくつかの段階がある。

第一段階は印刷方法自体をデジタル化するデジタイゼーション
第二段階は仕事の流し方や社内コミュニケーションなどをデジタル化して業務効率を向上させ?デジタライゼージョン
そして、最終段階になりデジタルプリントをベースにして、ソフトウェアと連携した新しい印刷サービスをすることで、真の印刷のDXが実現できると思っています。

目に見えないソフトウェアへの投資への理解を得る難しさ

僕が今、Printioという印刷サービスを立ち上げる予定にしているのは、1個からの個別生産を実現するパーソナライズプリントサービスです。

ECでビジネスをしているマーチャントの人が在庫を持つことなくアパレル販売を開始できて、売れるたびにリアルタイムで工場へ発注が流れ数日で出荷が完了します。

これを実現するには、有形資産であるプリンターなどのハードウェア、そしてお客さんと工場をつなげるソフトウェアが必要となります。

そこでやはり壁になるのが目に見えないソフトウェアにいかに投資をしていくかの視点です。

そんなことに悩んでいる時に読んだのがアクティブビジョンの川端さんのこの記事でした。

抽象概念の理解と操作が日本人は苦手であるということである

抽象概念の操作が苦手ということは、別な言い方をすれば、目に見えるものについては理解できるが目に見えないものは理解ができない、またはハードは理解できるがソフトは理解ができないと言い換えることもできるだろう。ここでいうソフトは、コンピューターのソフトウェアの意味以外に、こうしたソフトウェアの活用を前提として提供されるサービスや、人的なサービスなど、広義にわたる「ハード以外」のもののことだ。

正に僕が今なかなかうまく伝えられず「なんでわかってくれないんだろうか?」と考えていることはここだったなと感じました。

長らくモノづくりの高品質に取り組んできた日本だからこその強みがソフトウェアになると逆に弱みになってしまう可能性があります。現に世界中で印刷業は日本製のプリンターがありとあらゆるところで使われていますが、ユニークな印刷サービスや、新しいタイプの印刷サービスは遅れています。

そんな中で、世界中ではAmazonや倉庫がデジタル印刷機を買って印刷サービスを始めていたり、自分デザインのプリント生地で作った洋服が2週間でヨーロッパから1着から届くことが現実となっています。

インターネットとソフトウェアが好きでその可能性を信じて疑わない僕は、普段インターネットの中で生活をしていないボスに対して説明をしたつもりでいだけれど、なかなか伝わら
ずいらいらして衝突することもしばしばあります。

これまでの目に見える有形資産で成りたっていた大量生産時代から、物が売れなくなる時代に変わる中で、否応なくソフトウェアへの投資を製造業がしていかないといけないだろうなと思うこの頃です。

友達からマイクロソフトなどの無形資産への投資ならこの本を読むといいよと教えてもらった本を読みながら、どうしたら合意形成ができるのかを考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?