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日本の化粧文化 ー「化粧はマナー」なのか?ー

みなさんこんにちは、シーチキンです。
今回は2年ほどやっていた研究をようやくまとめられたので、ご報告していこうと思います。
拙い部分もあると思いますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
(ヘッダー:O-DANさん)

長すぎますね。「8.考察2」と「9.結論」だけでもだいたい内容がわかると思います。


1.はじめに

多文化共生が進む世界の中で女性は化粧をしなければならないという風潮があることや男性と女性で制服や理想とされる振る舞いが違うのか疑問に思った。
また、個人が自由な選択をすることが個人の尊重につながり、今後の多様な社会を創ることに重要に思えた。そこで今回の研究をしようと考えた。
目的は別のことに時間を使いたい人や化粧をしたくない人が批判されたり不利な状況に置かれたりすることなく自分らしい選択をできるようにすることだ。

まずはじめに、ここで頻繁に出てくる語について意味やここでの使い方を示しておきたい。

 ● ジェンダー
性には、
身体性 、ジェンダー、性自認、性的指向の4つがあるとされており、ジェンダーとはこのうちの社会的につくられた文化的な性別のことである。

身体性 :生物学的な性別(出生時に割り当てられた性別)
ジェンダー:社会的に形づくられた性別(文化的な性別)
性自認 :「自分がどう自分の性を認識しているか」を包括的に捉えた性別
性的指向:どういった性に対して恋愛感情や性的感情を感じるか

 ● ルッキズム
外見至上主義。人間の価値をはかるうえで外見が最も重要であるとする考え方。外見にもとづく偏見、差別、不当な不利益などと定義されることもある。
ここでは日本における化粧をしているほうが見た目が良いと考え、化粧をしないのは憚られるという考え方を指すものとする。

 ● 公的自意識・私的自意識
公的自意識は仕草やふるまいなど他者からみえる部分に向けられた意識、私的自意識は自分の感情や内面など他者 から見えない部分に向けられた意識のこと。

現在、社会人の女性のほとんどが出勤する際に化粧をするのがマナーとされている。
私が全国に住む10〜69歳の100人を対象にとったアンケートより、社会人女性の約86.2%が化粧をしており、そのうち約半分は週6日以上の頻度で化粧をしていることがわかる。高校生女子についても、約78.8%が化粧をしていることがわかる。また、対照的に化粧をしている男性はほとんどいないことがわかる。

全国に住む10〜69歳の100人を対象に行ったアンケート

また、「株式会社ヒズキ」が全国に住む15〜89歳の女性2000人を対象にとったアンケートによると全体の約86.5%が何かしらのメイクをしていることがわかる。

株式会社ヒズキ . “普段からフルメイクをする女性が多い年代は、2番目が「20代」で43.3%。1番は?”  . PRTIMES . 2023/6/6
<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000033242.html>より

以上の調査から社会人の女性のほとんどが化粧をしていることがわかる。

2.先行研究の概要

『対人相互作用場面における化粧の役割に関する研究』

  • 私たちは対人関係の初期段階において、外見的魅力を重要な規定因として用いている

  • 他者と知り合ったばかりの頃は二人の関係の間に十分な相互作用は生じていないため、相手の内面に関する情報が乏しい

  • 比較的入手しやすい相手の外見的魅力の評価をもとに、表面的な印象の形成や、内面的特徴の推測を行う

  • 松井・山本(1985)は、身体的魅力性の効果を検し、人は外見的特徴の好ましさによって人物の全体的な評価を決める傾向があることを示した

3.研究方法

 論文やブログ、X (旧Twitter) などを利用して情報収集、アンケートで化粧に対する意識調査を行い、それらをもとに考察を行う。

4.結果1

①化粧をしているほうが見た目が良いという考え方を変える

②女性の管理職率を増やす

③男性の育休取得率を上げる

5.考察1

①化粧をしているほうが見た目が良いという考え方を変える

先行研究の論文より、外見が人物の評価に強い影響力を持っていると言える。そう考えると化粧をすることは相手に良い印象を与えるために必要なものであるようにも思えてくる。
しかし、男性では化粧がマナーとされていないことや日本以外の国では化粧はマナー文化がほとんど見られないことからこのルッキズムは日本特有であると考えられる。
そのため、現代の社会の風潮を変えていく必要がある。

②女性の管理職率を増やす

フランスでは日本に比べて上の立場の女性ほどノーメイク率が高いという内容が『なぜ? 日本にだけ存在する「化粧は身だしなみ・マナー」問題』というページに載っていた。理由としてはまず女性がまったく職場の華としての役割を期待されていないということがあるそうだ。
そして社会から能力が当てにされてきたからこそ見た目が地味でも関係なく評価されてきた。
女性にも能力に応じて男性と同等に管理職に就く機会や昇進の機会が与えられることで、化粧をしているしていないに関わらず女性が社会に進出していきやすくなるだろう。

③男性の育休取得率を上げる

また、『化粧行動からみる相互意思伝達の考察 〜日本文化と濃い化粧の所以〜』という論文では、

化粧という手段は経済的弱者が強者に対して優位に選択されるために存在している

『化粧行動からみる相互意思伝達の考察
〜日本文化と濃い化粧の所以〜』

と述べている。つまり化粧行動と社会経済が深く関係しているのだ。
下のグラフからわかるように、30〜50代にかけて男性の平均年収が増えているのに対し、女性の平均年収はほぼ横ばいになっており、男女で平均年収の差が開いている。経済的に弱い立場の人が多いと言えるだろう。理由としては20代後半〜30代にかけて出産や育児をする女性が増え、正規雇用として働くのが難しかったり、職場復帰が難しかったりする場合が多いことが考えられる。

※中央値は国内年収平均値と中央値の差額を基に算出
【2023年】日本の平均年収・年収中央値は?職業年齢別の給料比較 <https://kikankou.co.jp/columns/nenshu-chuouchi/>より

男性の育休取得率を上げることで女性が仕事と育児を両立しやすくなり、女性の働ける時間が増えることで収入を得る機会が増えて経済力の向上に繋がるだろう。また、管理職率や昇進率の向上も望めるかもしれない。

しかし、研究を進めているときに、この論についてある方にアドバイスをいただいた。
私はヨーロッパなどの国では女性の管理職率が高く、上の立場の女性ほどノーメイク率が高いことから、日本社会においても女性がもっと活躍すれば化粧をする必要がなくなると考えた。
ところが、ヨーロッパなどの国においてはそもそも化粧による「ルッキズム」というものがほとんどなく、そのために女性が化粧をしているのかが重要ではないということを教えていただいた。つまり、日本で女性の管理職率が上がっても「ルッキズム」がなくならない限りは化粧をする必要が出てきてしまうのだ。

さらに、X(旧Twitter)にて次のようなポストを発見した。

欧米の男尊女卑とアジアの男尊女卑の違い
腑に落ちた

(以下画像引用)

65.名無しの気団談
お前、海外の女と付き合ったことあるのかよ
海外の女のほうがもっとお姫様扱いに対して受け身だぞ
レディーファーストの精神は「どんな女性でもレディとして扱う男の包容力」にあるんだ
レストランへのデートを誘って、やってきた女性の服装が予定した店とそぐわなかったら
隙を見て店の予約を変えるとか、店に行く前にブティックに寄って小物や上着で調するとか
そこまでやって男のエスコートだよ
日本の女みたいに、男の決めた店に黙ってニコニコついてきてくれねえぞ
あっちの女は「私は私のペースで歩くから、それを後ろからあなたが引き立てて頂戴。それが男の仕事でしょ」だぞ
そして、それが出来ないとヒステリー並みの勢いで怒るんだ。怖いぞ
2016年04月19日 15:42

67. 名無しの気団談
※65に追記するけど、そういう「男が女を輝かせるもの=女は男がいなきゃプリンセスになれない」ってのが欧米の保守思想なんだよ
男が女を守って導いて、初めて女はプリンセスとして輝く、ってのがマッチョで伝統的な男らしさで女が何もしなくても男が全部デートお膳立てするのが当たり前なの
それを「女性の自主性に対する抑圧」として、「女は自分の力でプリンセスになれる」って
男支配からの解放を謳ってるのがアナ雪とかだったりするわけだ
「お姫様扱いしてもらいたきゃお姫様になってからやってきな。そうすりゃエスコートしてやらんこともない」とか世界最悪の劣等種だよ、日本男男無しでお姫様になれたのなら、男のエスコートなんかその時点で必要ない
2016年04月19日 15:53

99.名無しの気団談
ついでに※67に補足すると
欧米の女性差別は「女は無力で男に守られなければ何も出来ない生き物」と言う発想だから
欧米の女は男に守られなくても何でも出来るという事を証明して差別を解消してきた
でも日本を始めとするアジアの女性差別は「女は男様の為に甲斐甲斐しく働き男様を支えるべき生き物」と言うものだから(良妻賢母とか男を尻に敷く肝っ玉カーチャンなんてのもそういう発想)アジアの女は頑張れば頑張るほど男が女に甘えて寄り掛かる悪循環でなかなか女性差別が解消できない
かと言って男なんていらねーや!となってしまうと「女の役割を放棄している」となるという
2016年04月20日 10:35

X(旧Twitter)
<https://x.com/messe_noir_/status/1738838961039315063?s=46&t=4G10VBbDUR9awWE4ATAabw>より (元ソース:livedoor Blog <http://blog.livedoor.jp> )


つまり、欧米では「女性は無力で、男性に守ってもらうべきだ」という考えが根付いていたために、女性が活躍することで差別を解消することができた。
しかし、アジア圏の多くの国では「女性は男性を支えるべきだ」という儒教*や良妻賢母主義**に基づいた考えが根付いているため、女性が活躍するだけでは差別は解消されないのだ。よって、女性の経済力を上げても日本では「ルッキズム」による差別は解消されないと考えられる。したがって、仮説1の「②女性の管理職率を増やす、③男性の育休取得率を上げる」を棄却する。

儒教*
孔子を始祖とする思考・信仰の体系。
近代に展開した儒教の中に「三従四徳」という戒めがある。三従とは「在家従父,出嫁徒夫,夫死従子」(嫁に行くまでは父親に従い、嫁に行ったら夫に従い、夫が死んだら子供に従う),四徳とは「婦徳、婦容、婦言,婦工」(女性らしい道徳、女性らしい容姿、女性らしい言葉遣い、料理や裁縫の技術)を身につけることをいう。
良妻賢母主義**
女性の本分は、妻として夫に敬愛随順するとともに、母として「祖先の後継者を作り、将来御恩に奉公する国民を育てる」(『臣民の道』 昭和16年)ことである、という思想。
狭義には第二次世界大戦前の日本の女子教育理念をさす。


6.アンケートデータ


アンケートの概要については以下の通り。

回答者の性別
回答者の年齢
回答者の化粧の頻度

化粧に対する固定観念

「化粧にどのようどのようなイメージを持っていますか?」という質問をして、全100件の回答のうち80件の回答を得ることができた。これらの回答を「固定的な性別のイメージ」「固定的な必要だというイメージ」「相手に好印象を与えるというイメージ」「それ以外」「未回答」という5種類に分類した。なお、「面倒くさい」というイメージは「固定的な必要だというイメージ」に分類した。
「固定的な性別のイメージ」と「固定的な必要だというイメージ」を「固定的なイメージ」としたときの割合は、10代11.7%、20代24%、30代45.4%、40代51.1%、50代66.7%、60代50%という結果になった。年代が上がるごとに割合が上がっていることから、年齢が高いほど固定観念を持っている人の割合が高いことがわかる。
(50代・60代については集まったアンケートの数が少なかったため、正確性に欠ける可能性がある)

化粧に対する年代ごとの固定観念
化粧に対する年代ごとの固定観念グラフ

「固定的なイメージ」の割合が年代が上がるごとに大きくなっていることがわかる。したがって今回の仮想敵(ターゲット)は男性というよりも固定観念を持っている割合の高い上の年代である。

化粧をするメリットと化粧の頻度の関係

「週6日以上」の人では「両方」と考えている人が多い一方で「未回答・思いつかない」と考える人はいなかった。
「週5日」の人では「両方」と考えている人が半数であった。また、「私的自意識」、「未回答・思いつかない」と考える人は少なかった。
「週4日」の人では「公的自意識」の割合が最も高かった。
「週3日以下」の人では「両方」と「未回答・思いつかない」と考える人が共に3割ほどで、最も割合が高い。一方で「公的自意識」と考える人はわずか15.6%と最も少ない。
「しない」人では「公的自意識」、「両方」が共に30.0%で割合が高い。一方で「私的自意識」と考える人はわずか15.0%と少なかった。
以上から化粧の頻度が3週3日以下の人だけ「公的自意識」よりも「私的自意識」の方が高いことがわかる。
(ただし「週4日」は集まったアンケートの数が少なかったため、正確性に欠ける可能性がある)

化粧をするメリットと化粧の頻度の関係
化粧をするメリットと化粧の頻度の関係グラフ

化粧をしないメリットと化粧の頻度の関係

週6日以上の人と週5日の人、週3日以下の人としない人はそれぞれ似た傾向を示している。
(「週4日」は集まったアンケートの数が少なかったため、正確性に欠ける可能性がある)

化粧をしないメリットと化粧の頻度の関係
化粧をしないメリットと化粧の頻度の関係グラフ

7.結果2

①「ルッキズム」を打破する
②「私的自意識」に目を向ける
③大学での就活講座を変更する

8.考察2

①「ルッキズム」を打破する

仮説1- ①化粧をしているほうが見た目が良いという考え方を変える、を発展させ、「ルッキズム」を打破する方法について考察する。
そこで「メイクをしなくても良いというムーブメント (運動) を起こす」という方法を考える。

ここで、今までに各国で起こったムーブメントを参考にする。

  1. 韓国-「脱コルセット運動(Escape the corset)」(2018年〜)
    10〜20代の若者を中心に化粧や髪型など「女性はこうあるべき」という固定概念や、それを押しつける社会に抵抗する運動。化粧をやめる、ハイヒールを履くのをやめる、脱毛をやめる、など女性に対する固定観念の押し付けを振り払う行動を起こしたり、それをSNSに投稿したりしている。

  2. フランス-「五月革命」(1968年)
    ナポレオン民法典(妻の無能力、夫への従属を基調としていたと言っても過言ではない)が1804年に施行されてから、フランスの女性の地位は目まぐるしく低下し、女性蔑視の思想が定着した。その後、1960年代後半から1970年代前半にかけて、社会活動および政治活動への女性の進出や、女性の権利、地位を守るための意識改革を求める女性解放運動が起こった。
    その中でも、1968年の「五月革命」が直接の契機となって、人工妊娠中絶の合法化、家父長制からの解放、雇用・職業における男女平等など、様々な分野において大規模なデモが行われた。この社会的ムーブメントがフランスにおける女性に対する意識を変えたといえる。

  3. 世界-「国際女性デー」(1975年〜)
    1904年、ニューヨークで婦人参政権を求めたデモが起源となり、国連によって1975年に3月8日を「国際女性デー(International Women’s Day)」として制定。
    すばらしい役割を担ってきた女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日。3月8日にミモザカラーの着こなしをSNSに投稿するファッショニスタも増えているという。

などがある。現代では、SNSを使ったムーブメントが増えてきていると言えるだろう。
また、かつての「当たり前」がなくなった事例として、

  1. お歯黒
    「お歯黒」は平安時代には貴族階級の間に広がり、男女ともに歯を黒く染め成人であることを表していた。ところが、江戸時代に入ると上流社会の生活様式がしだいに一般庶民にも浸透しはじめ、お歯黒は元禄時代には全国各地に広がった。そしてこの時期に男子のお歯黒は姿を消した。
    そして、女子のものになったお歯黒は、庶民に広がってからは、女性によって人生の大転換期である婚約・結婚を迎えてはじめて染める風趣となり、ついには既婚女性の象徴となった。
    お歯黒の風習は、明治政府の近代化政策により、チョンマゲや帯刀とともに禁止され、しだいになくなっていった。明治政府がフランスやイギリスを見習って日本を西欧化しようとしていたため、ヨーロッパの人から「お歯黒」を野蛮な風習のように見られたくなかったためである。そして、大正時代にはほぼ全国からお歯黒の風習はなくなった。

  2. コルセット
    1960〜70年代のスポーティで健康的なライフスタイルが価値を持ちはじめると、下着としてのコルセットは廃れていった。代わりに女性たちは、体の形を整えたりウエストを細くするために、食生活や運動、美容整形に目を向けるようになった。
    このようなムーブメントが起こったのは、新しいコルセットを使わない服をデザインしたポール・ポワレ(1879-1944)やココ・シャネル(1883-1971)の功績が大きいといえる。

などがある。
これらの事例から学べるのは、

  • 大衆の流れ、価値観の変化が必要であること

  • 政府など影響力の強いものがムーブメントに関わっていること

  • 現代のムーブメントではSNSが活用されていること

今までのムーブメントで成功したものは、大衆の流れや価値観の変化が起こっていたり、政府など影響力の強いものがムーブメントに関わっていたりする。また、現代において、SNSの活用は重要なポイントとなるだろう。
ただ、あくまでも重要なのは「選択できる」ことである。化粧をするのが好きな人に化粧をしないことを押し付けるようなことがあってはならない。互いに考えを尊重し合えることが最も重要である。

②「私的自意識」に目を向ける

6.アンケートデータより、

  • 「化粧をするメリット」は、化粧の頻度が3週3日以下の人だけ「公的自意識」よりも「私的自意識」の方が高い

  • 「化粧をしないメリット」は、化粧の頻度が高いと「私的自意識」が7割ほど、化粧の頻度が低い・化粧をしないと「私的自意識」が5割ほどになる

ということがわかった。
ここで「化粧をするメリット」と「化粧をしないメリット」について全体において「公的自意識」・「私的自意識」の占める割合を比較する。「化粧をするメリット」においては「公的自意識」が全体の25%、「私的自意識」は約20%、「両方」は約40%を占めている。対して「化粧をしないメリット」では「公的自意識」は僅か3%、「私的自意識」は約60%、「両方」は約10%を占める(下グラフ)。

「公的自意識」・「私的自意識」の占める割合の比較

 ●「化粧をするメリット」
「公的自意識」+「両方」=62
「私的自意識」+「両方」=54
 平均:(62+54)/2=58

 ●「化粧をしないメリット」
「公的自意識」+「両方」=13
「私的自意識」+「両方」=72
 平均:(13+72)/2=42.5

つまり「化粧をするメリット」においては「公的自意識」の方が「私的自意識」よりも割合が高く、「化粧をしないメリット」においては「私的自意識」の方が「公的自意識」よりも割合が高いのである。
現在、「化粧をするのは面倒くさいがする。」というような人が多いのは「化粧をするメリット」の方が「化粧をしないメリット」よりも「公的自意識」におけるメリットが高いうえ、「公的自意識」と「私的自意識」を合わせて考えたとき (平均) に「化粧をするメリット」の方が大きいためだと考えられる。この差を崩すには、「私的自意識」を優位にする必要がある。そこで、"「私的自意識」に目を向ける" という新しい仮説を立てる。

「私的自意識」に目を向けるには日頃から人々が自分の考えや気持ちを意識することが効果的だろう。現代人は自分の考えを整理したり、自分の気持ちと向き合ったりする時間が足りていないように感じる。理由としては忙しすぎることや、情報が溢れていて情報を収集することに時間が取られていることが考えられる。そのような中でどのように「私的自意識」に目を向ければ良いのだろうか。
これには「日記をつける」、「『自分ノート』を書く」の2つが効果的だと考えられる。「自分ノート」とは、自分に起こったことやそれについて考えたこと、それへの対処法や考えを整理しながら書き留めるノートのことである。
忙しい中で日記や「自分ノート」をつけるのは困難に思われる。その解決策として、「ダイアリーアレンジ」や「ノートデコ」を流行らせることを提案する。これらは一部の界隈で流行っており、SNSを通じて自分のノートデコなどを発信している人や、ダイアリーアレンジのやり方やデザインの仕方などを紹介している人もいる。SNSを通してダイアリーアレンジやノートデコが流行ることでこれらをを知る人が増え、趣味になれば、必然的に自分の気持ちや考えと向き合う機会が増えるだろう。
しかし、「情報が溢れていなかった時代の人も化粧はしていた」という事実は否定できない。情報が溢れていなかった時代の人も化粧はしていたので「私的自意識」に目を向けるようになっても化粧をする必要が出てくる可能性があるということである。たしかに、「私的自意識」に目を向けるようになったからといって「化粧はマナー」という風潮がなくなるとは限らない。ところが、
6.アンケートデータ「化粧に対する固定観念」より、化粧に対する固定観念をもつ割合が年代が上がるごとに割合が大きくなることから、年齢が高いほど固定観念を持っている人の割合が高いことがわかる。つまり、年代によって化粧に対する固定観念が薄れているのである。化粧に対する固定観念が薄れている今、「私的自意識」に意識が向けられることによって「公的自意識」よりも「私的自意識」が優先され、「化粧はマナー」であるという風潮がより薄れて化粧がマナーでなくなる可能性があるのだ。
よって「ダイアリーアレンジやノートデコを流行らせる」は非常に間接的ではあるが、妥当だと考えられる。

③大学での就活講座の内容を変更する

「PORTキャリア」というサイトにて「就活にメイクは必要か?」という質問とそれに対する回答2件を発見した。質問者は大学で就活の講座を受けたのだが、講師に就活ですっぴんはNGだと言われたことについて疑問に思った、とのことである。1つ目の回答は「必ずしもする必要はないが『化粧はマナー』と考える人もいる」というもので、2つ目の回答は「化粧は自分のアピールではなく相手へのおもてなしである」というものであった。私は1つ目の回答に賛成だ。「化粧はマナー」であるという風潮をなくすためには1つ目のような考え方を大学の就活講座で説明する必要があるのではないだろうか。
実施したアンケート(下グラフ)より化粧の目的をマナーや身だしなみのためだと考える人は全体の56%であり、事実として、過半数の人は化粧はマナーだと考えているのである。

化粧の目的を問うアンケートで
「マナーや身だしなみのため」を含む回答の割合

このような固定観念は年代が上がるごとに高くなっていることから、大学の就活講座にて化粧をする理由について、必ずしもする必要はないが「化粧はマナー」と考える人もいる、という内容を説明する必要がある。

9.結論

今回の課題を解決するうえで「『ルッキズム』の打破」はとても重要なポイントである。
ルッキズムの打破においてはルッキズム打破の「流行り」をつくることが今日の社会において最も効果的な方法の1つではないかと思う。「流行ら」せるためにはインフルエンサーによる発信や、多くの人が知り、共感することが重要だ。
また、今後の社会を担う人たちが知ることも未来の社会において「化粧はマナー」という風潮を残さないために重要だ。私も未来の社会人として様々な面はにおいて固定観念を捨てて生きていきたいと思う。
今の私にできるのは、この問題を発表する機会をもってたくさんの人に伝えていくことだと思う。そして人々が自由な選択をする勇気をもち、多くの人が繋がることが新しいムーブメントを起こすきっかけになることを願っている。
ただし、重要なのは「選択できる」ことであり、互いに考えを尊重し合えることである。

10.参考文献

化粧行動からみる相互意思伝達の考察 〜日本文化と濃い化粧の所以〜 . 2015
<http://www.isc.meiji.ac.jp/~w_zemi/keshou.pdf>(2023/02/11アクセス)

嶋 はる美 . 対人相互作用場面における化粧の役割に関する研究 . 2004
<http://www7.plala.or.jp/face/j/soturon/Shima.pdf>(2023/02/11アクセス)

教育学専攻 椎林 美樹 . 日本語教育における性差の扱い  . 2021
<http://nihongo.hum.tmu.ac.jp/~long/longzemi/sibayasi.htm>(2023/02/11アクセス)

小山舞子 . “すっぴんは失礼?どうして化粧は女性のマナーなのか” . Q by Livesense . 2021/06/24
<https://q.livesense.co.jp/2021/06/24/806.htm>(2023/02/11アクセス)

HINAKO OHNO . “「メイクはマナー」という日本社会の“理不尽な常識”に反抗する日本人女性たち” . NEUT . 2017/07/31
<https://neutmagazine.com/nomakeup-girls-japan>(2023/02/11アクセス)

Nguyen Loan . “コンビニ行くだけでも化粧?!日本人はなぜそこまで化粧にこだわるのか?” . tsunagu Japan . 2022/06/13
<https://www.tsunagujapan.com/ja/why-do-japanese-people-wear-so-much-makeup/>
(2023/02/11アクセス)

シロ . “なぜ? 日本にだけ存在する「化粧は身だしなみ・マナー」問題” . ミラクル美女とフランスの夜ワンダー . 2021/07/16
<https://www.francenoyoru.com/make-up>(2023/02/11アクセス)

中野 円佳 . “韓国で進む「Escape the corset」運動、化粧を放棄した女性たち” . mi-mollet . 2019/01/18
<https://mi-mollet.com/articles/-/15445?layout=b>(2024/02/01アクセス)

石田健 . “なぜ女性は化粧をしなくてはいけないのか?韓国の女性は問いかける” . TheHEADLIFE . 2020/09/19
<https://www.theheadline.jp/articles/270> (2024/02/01アクセス)

武部 裕光 . “お歯黒について” . たかはし歯科
<https://www.jda.or.jp/park/knowledge/index04.html>(2024/02/01アクセス)

匿名 / 渡邊 裕樹 / 樋口 智香子 . 就活はすっぴんで行っちゃだめですか? . PORTキャリア . 2023/02/28
<https://www.theport.jp/portcareer/qa/106/> (2024/02/07アクセス)


報告は以上です。
今回は研究期間が短く、女性の化粧の研究しかできませんでしたが、男性の化粧の研究もしてみたいです。
性別関係なく好きに化粧をしたり、しなかったりできる社会になってほしいと思っているので。

最後までお読みいただきありがとうございました。
また新しい仮説や別の研究ができたら投稿していきたいと思います。

シーチキン 2024/04/17

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