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インスタ発音実例ー否定の核位置(とその他もろもろ)

前置きー否定の核位置

先日X(Twitter)にて面白い投票がありました:

そして答えはこちら:

興味深いですね。やはりどうしても否定する語彙に核を置きたくなります。Wells(2006)p. 135では、相手の肯定文の内容を否定したいときは基本的に否定の要素に核が来る(You took my plate.→I didn’t take your plate!)とした上で、このような記述があります。

Note, however, that if the negation word is followed by a ‘new’ lexical item the nucleus goes (as normal) on that new lexical item, even though the speaker’s main intent may be the negation:

Have some more milk.     I don’t want any more milk.

Wells (2006) English Intonation An Introduction, Cambridge University Press, p.135
なお、書籍での下線を太字で表した

even though以下の記述があることから、もしかすると上記のクイズは日本語母語話者だけでなくともEFL環境にある人はdon’tを選んでしまいそうな気がします。さて、この実例がインスタにあったのでみてみましょう。

実例(リンクあり)

面白い(笑)今回は全ての発話に観察の価値があります。

「メガネがないといい感じね」

最初のgrannyのセリフ。イントネーションをよく聞くとこうですね。

TuneEditorを用いて作成

glassesの部分に着目。下降上昇調になってます。Wells(2006)のいうところのimplicational fall-riseです。メガネがないときはいいんだけど…という感じ。こういうイントネーションを自然に使えることが望ましいです。

「でも俺メガネかけてないよ」

さあここが肝心。冒頭の話も含めて、どこが強いかはもう分かりますね。

TuneEditorを用いて作成

don’tではなくwearに核が来ています。「どこが強く読まれる」系の話は、実例を聞いてしまうのが手っ取り早い。

「そうね。でも…」

動画のオチです。イントネーションはこんな感じ:

TuneEditorを用いて作成


これは純粋にWells(2006)のいうところのcontrastive focusです。「そうね、でも(あんたじゃなくて)私がかけるの」という感じですね。ここら辺は英語を使い慣れていれば自然に体得できると思いますが、そうでないと厳しいと思います。だからこそ、この行間表記で意識的に学習したいわけですね。

まとめ

今回は①下降上昇調(implicational fall-rise)、②相手の発言を否定したいときの核の位置、③ 対比焦点(you VS I)と盛りだくさんでした。大事なのはこれらを無意識に使えるようになるまで練習することですね。

<TuneEditorについて>

TuneEditor(行間表記作成ウェブプログラム 村上雅章さん作成):
まえがき

実際のプログラム

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