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「社会主義」を内包した「資本主義」から「平等」を内包する「自由」への移行とイノベーション

ベルリンの壁崩壊から2019年11月9日で30年。私たちは、新たなパラダイムシフトの選択を迫られる時代に生きています。


私たちの社会は、この30年、自由と平等という価値観に、どのように向き合ってきたのでしょう。また、そうした補助線を引いた時、この価値観は企業経営にどのような影響を与えるでしょうか。また、企業経営で大きなポーションを占めるイノベーションに関しても様々な議論がありますが、これは、収益だけでなくより深いところで動くこのような価値観の推移と表裏一体の関係と考えます。一度、こうした視点で考えをまとめてみたいと思います。


結論から言うと、イノベーションの議論の盛り上がりは、トップダウン型組織は社会の変化に対応できないと言うことの社会的公認であり、環境変化への従来型組織マネジメントの限界を認めることです。これは、会社中心に社会をみる世界観(Company centric point view)から社員中心目線(Emploee centric point view)への転換が必要になったと言うことです。

株主からは、「社員に優しすぎる」「左傾化」と思われるかもしれませんが、トップダウンの会社の予算主義の計画経済思想も、個人の自由の観点から見ると全体主義的とも言え、会社中心資本主義は「資本主義の中に計画経済を内包」したものと言えます。私たちは「資本主義に内在した社会主義性」に依存しつつも、個人の自由を抑圧させ、個の持つポテンシャルを発揮しきれない社会を構築することで、第二次大戦後の社会システムを構築してきました。この30年はそれが、機能しなくなってきたことを長い時間かけて確認し、オープンイノベーションにより個のポテンシャルを解放、「個人の自由」を取り戻し、多少の変革へのストレスも伴いながらも個人が自己と向き合う過程を通じ、「自由と平等」の実現のため、資本主義を見直す歴史的過程にいると考えます。(資本絶対主義→修正資本主義)これには、日本的側面と、グローバルな側面の両方で、歴史的ターニングポイントかもしれません。

1)イノベーションの必要性
2)イノベーションの定義
3)必要な要件
4)必要な準備は何か

1)イノベーションの社会的必要性

これは、限界収益性が落ちてきたからという経済的側面だけではありません。株主中心主義という言葉がありましたが、企業が株主のための収益を生む装置としての役割しかないようなら社会全体の中で、資本主義変化とともに、その中心的役割を失うほどの地殻変動が起きています。現在、多くの方が、途轍もない変化の時代だと感じていると思いますがまとめると、以下のようなものに集約されるでしょう。

・先進国の人口減少と高齢化。それに付随する問題。
・気候変動の年々の増加。それに付随する問題
・経済格差拡大。それに付随する政治的対立の増加
・ポストマテリアル社会の到来。次の意識の社会の未到来
・宗教の相対的地位の喪失
・情報技術、情報流通量の指数関数的増加

単体でも大きな変化をもたらすこれらの変化は、相互に関連しながら西側諸国共通の価値基盤であった自由(資本主義)と平等(民主主義)の対立という状況を生み出しています。資本主義が自由の代名詞、民主主義が平等の代名詞であるなら、私たちは、どちらも内包した新しい社会を社会主義体制壁崩壊後30年続けてきたのです。

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資本主義=自由主義であるという考えのもとに、計画経済を内包する仕組みは、高度に成長を遂げましたが、経済格差を広げ、富める者は良いが、そうでない者の自由と平等性を、意図的であってもなくとも軽んじる(軽んじてしまう)社会を作ってしまった。そうした社会は、継続できなくなりつつあり、より進歩した「個人の自由」による階級闘争が原因である動きがすでに欧米を中心に起こりつつあります。


2)イノベーションの定義

革新には、二つの方向性が必要です。

①企業の存在意義そのものをイノベーションする
国家、企業、個人、いずれも社会の構成要素です。情報産業の進展と金融緩和により爆発的に成長した後、資本主義に限界が見え始めた中、資本主義と民主主義がぶつかり始めた現代社会においては、企業も、資本主義におけるキャッシュマシーンという意味のみでは、存在価値が小さくなります。積極的に社会における新たな役割を構築せねばならない。先に述べた、巨大な変化を踏まえた上で、ポストマテリアルソサイエティにおける人間の意識、かっては宗教の領域でもあった分野において、マーケットとしても、従業員との関係においても、どう対応していくのかは非常に大きな問題だ。これができないと既存の価値観の上にしか成り立つ数字と量しかない経営計画しか立てれない。社会に対する思想・ビジョンがなければ、経営計画ではなく、数値計画でしかない。それでは計画経済を担う官僚主義に陥ってしまう。


②非線形市場の必要性
資本主義社会でのキャッシュマシーンとしての企業間競争は、情報技術の進展(AIとロボティクス)によりより高い最適化レベルまで相互に追い求める競争となる。これは、核兵器の相互確証破壊同様、限界利益の効率を求めどちらかが倒れるまで続けられるだろう。

例えば、
X軸に投下資本、Y軸に市場
を置いた時に、隣接する資本と、隣接する市場の組み合わせでは、激しい競争により、市場の蒸発も早い。もはや隣接市場と隣接資源の組み合わせではない領域で新しい事業を生まない限り、継続的存続は1社しか難しい時代に入りつつある。(IT業界ではそれが実現しており、衣料品も近づいている。その他の消費財も、ポストマテリアルソサイエティでは、物質への関心が弱まるため機能に関する商品は、段階的にそのようになっていくでしょう)また、ポストマテリアルソサイエティにおいては、合理性より、人間の認識を基盤に市場が再定義されるでしょう。

つまり、
①企業の存在意義そのもの
②企業の存続のための非線形市場の創出のための取り組み方

の両面でのイノベーションが求められている。線形ではなく、企業の存在意義も定義できるような企業が21世紀を代表する企業となるのでしょう。


3)必要な要件

①存在意義そのものをどのように見直すか

株式市場の制度との兼ね合いで難しいですが、経営者が毅然とした態度で市場と対峙する覚悟、信念が試される時代になるでしょう。大企業のトップで、株式市場と対話しながら、短期的利益ではなく中長期の利益につながる新たな集団を蘇生できる経営者は、外側からはヒーローのようだが、内側からはトップダウンではない「場」を大切にするリーダー像という新たなリーダー像を作っていくでしょう。

企業は資本効率以外に何をもたらす存在でしょう。従業員の幸福を考えない経営者もいないでしょうが、決算数字に比べ従属したものとなっていることも多いのではないでしょうか。もしくは、経営者自身はそのように思ってなくとも、組織としての行動が結果的にそうなっているという意味においては、ほぼ全ての企業がそうかもしれません。それらは若手社員の離職率の増加などに、定量的に現れてきています。

「誰のために何をする」かは、ミッション設定でできているでしょうが、従業員が日々納得して、毎日やる気を持ち、懸命に働く。そう言い切れるための改革が必要でしょう。提供するサービス価値以上に、従業員が自社で働くことに喜びを感じなくなっているならどうすれば良いのでしょう。人間は、外部から強制された指示に従うのではなく内発的動機に基づき行動し、成功した時に深い喜びを感じます。そのような内発的動機を発揮する力がドンドン衰えてきており、それ自体国家的危機だと思いますが、それらをどのように引き出すすべきでしょう。また、内発的動機を自覚した個人が増えた際、自社にはそれサポートできる環境はあるでしょうか?

全く新しい市場の創出

全く新しい事業の創出には投下資本を見直すことが必要です。つまり異なる人材同士が、これまでの自社の常識から意識も、物理的にも離れ、他社人材と混じり合い社会をフラットに見て、そこで自らの内奥から湧き上がる意志を捕まえ、切磋琢磨することで、初めてこれまでの線形の延長にない何かへのとっかかりを見つけることができるでしょう。個人としては、自分の内奥からの欲望なので、独自性とグリッドが非常に高いゆえに、成功に一歩近づく。企業から見ても、人間性を認め採用した社員であるなら許容可能であり、既存の事業の延長ではないと言うところで、絶妙なバランスとなる可能性が高い。事業を作るのが企業と言うのは幻想であり、最終的には人しかないのです。(企業とは物理的存在ではなくそもそも幻想であるとも言える)

4)オープンイノベーションとは何か

資本主義社会における企業が、株主の利益のための安定成長と、ある種の社会保障システムを内包するための計画経済性で進んできましたが、個人のより自由でありたいという思いとの間でバランスが悪くなってきています。過去が正しい、間違っているというより、自由と平等という基本的価値観の一層の進展に対する社会システムのあり方の見直しが必要な時期に来たということでしょう。社会的には、その個人が、平等に関するリテラシーつまり、「限度とバランス」を認識することが必要ですが、その上で、社会活動の最小単位が企業から個人に再構築されていく必要があるでしょう。オープンイノベーションとは、そうした事態に対応する言葉でしょう。

結論から言うと、以下2点に集約されると考えます。
①個人の内発的動機の発現、社会実装プランまで洗練させるための道場
オペレーション型組織から切り離された内発的動機に基づくチャレンジ場
①に関すると、
長い会社員生活で、内省する力を失った社会人に、内発的動機を単に問うても深い想いは簡単に出てきません。それには、心理的安全な空間の中で、自己を開示し、フィードバックをもらい、内省を繰り返す中で、エゴではないより深い公共と繋がった意図が立ち上がります。そうした、訓練を数ヶ月単位でするトレーニングセンター(道場)のような場が必要と感じます。マインドフルネスの文脈は、この文脈で極めて有効と考えます。

②に関して
内発的動機の発現した個が生まれてきても、彼が自らの動機に基づく活躍の場がなければ、おそらく彼は社を去ることになるでしょう。ならば、内発的動機に沿った事業を生むための、情報ネットワーク、資金、環境が必要である。

つまり、会社はその存在意義と取り組み方の2点に置いてイノベーションが必要ですが、会社の計画された利益のために従業員を使うと言う発想(社会主義的発想)から、社員の自発的動機に基づく社会発展欲求の実現のサポート(自由主義的発想の個人を支える公的な存在)に対し、何を提供できる存在なのか、と言う風に180度方向性を変えなければならない。株主の背後に隠れることで富を吸い上げることで、平等を唄いながら、不平等を増長する仕組みの変更には、より個人に沿った「平等を内包した自由」のあり方を考える時期に来ている。

これは、天動説から地動説への変更くらい大きなことかもしれない。
しかし、これができなければ、長期的には
①従業員から見放され
②市場から見放される

と言うことになるのでしょう。

私たちは、「社会主義性を内包した会社資本主義」を続けるのか、新たな時代に向け「より多くの人の幸福のための平等性を内包した自由」なのか新たな均衡点を探すのか、決定を迫られているのです。

WaLaの哲学 屬 健太郎

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はたらく意味のアカデミア「WaLaの哲学」


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