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認知症の簡易検査

認知症は現代で最も多い疾患の一つです。
2025年には65歳以上の方の5人に1人が程度の差こそあれ、認知症の基準に合致するとも予測されています(内閣府「平成29年度版高齢社会白書」)。さらにMCIと呼ばれる軽度の認知機能障害の方も相当数いらっしゃることまで考えると、もはやどなたも向き合わないわけにはいかない課題だと思います。
認知症の診断には、長谷川式認知症スケールやMMSEといった検査で認知機能を評価した上で、画像検査や血液検査で認知機能が低下した原因になるものがあるかどうかも加味していく必要があります。
本人ではなく、認知症が疑われる方のご家族が医療機関の受診を考慮することになりますが、どのくらい困るなら受診すると良いのか、基準がはっきりせず困ることが少なくないのではないでしょうか。ここで紹介するmini-cogテストはご自宅で受診を判断する際の有効な道具になるかもしれません。

mini-cog(ミニコグ)テスト

Borson達が2000年に提案した検査方法で、手順は非常に簡潔です。
Int J Geriatr Psychiatry. 2000; 15: 1021-7

  1. 3つの言葉を記憶する(聞く側の方が決める)

  2. アナログの丸時計を描く(3分以内) →正しく描ければ2点

3.1.で記憶した3つの言葉を思い出して繰り返す →1つ1点

使いやすいシートが日本語でweb公開されています。

https://mini-cog.com/wp-content/uploads/2022/09/JAPANESE-Standardized-Mini-Cog-1-19-16-JP_v1.pdf

合計が3点以上であればテスト陰性、つまり認知症ではない可能性が高いとするものです。テスト自体5分もかかりません。発表された当初、感度99%(3点以上ならほぼ確実に認知症ではない)というデータだったため、すごいツールだと評判となりましたが、その後の複数の研究をまとめてみるとそこまでではないという見解となってしまいました。これだけ単純なテストであり、対象となる方の認知のコンディションも変動が少なくないため、実施する毎に結果がブレてしまうこともやむを得ないのかもしれません。

mini-cogテストのより良い使い方

その後2024年に入り、日本からまとめられた報告において、興味深い結果が含まれていました。
mini-cogテストを違うタイミングで2回実施すると、2回とも3点以下であった74名の方は、他の評価方法ですべての方に認知機能に異常があり、逆に4点以上であった22名の方はすべて認知機能が正常だったのです。
(この評価は時計描画も含めて5点満点で評価し、4点以上か3点以下かで区分しています)
Dementia Japan 2024; 38: 148-155
つまり、ご自宅で別の日に2回mini-cogテストを実施し、2回とも4点以上か3点以下かに入ると、相当な確率で認知機能正常か、認知機能異常かがわかるという結果です(1回ごとにどちらかだと悩ましいところですが)。もちろんこれだけでは診断とはなりませんが、少なくとも現状把握し、医療機関に相談するかどうかの指標には十分なるのではないでしょうか。

ぜひご興味ありましたらリンクを辿ってみてください。

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