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中部地方で内科医をしております。総合内科専門医・血液専門医。 病名のつく不調もそうでな…

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中部地方で内科医をしております。総合内科専門医・血液専門医。 病名のつく不調もそうでない不調も改善できるような医療に携われるよう努めています。

最近の記事

パルスオキシメーター

パルスオキシメーターをご存知でしょうか。 クリニックや病院で"酸素を測りましょう"と言われた際に指先に装着される小型の機械です。新型コロナウイルス感染症の流行とともにさらにメジャーになったかも知れません。 血液中の酸素飽和度を測定できる、パルスオキシメーターについて少し掘り下げてみます。 パルスオキシメーターの原理と役割 パルスオキシメーターは指先を流れる血液に赤色光と赤外光の二種類の光を当てて、透過してくる光の量を調べることで血液中の赤血球が含んでいる酸素を推測します。

    • 紅麹サプリメント被害の拡大

      当初より、紅麹サプリメントによる健康被害の規模が大きかったと連日報道されています。 私の外来にも同サプリメントを摂取していたということでご心配で受診される方が増えてきました。 原因はシトリニンではない?? みられていた症状が重篤な腎臓の障害だったことから、以前から欧州で報告されていた有害成分である"シトリニン"が意図せず含まれてしまったためなのだろうと考えていたのですが、実際は異なっていたと報告されました(https://www.nikkei.com/article/DG

      • 紅麹サプリメント

        小林製薬の販売していた紅麹を含むサプリメントを摂取した方の中に重篤な腎臓の障害が起きた方が出たということで自主回収されたことが大きなニュースになっています。麹菌は発酵食品を通して日本人との関わりは本当に長いものがありますが、紅麹がサプリメントとしてブームになっていたことをこのニュースで知りました。 紅麹に関する注意喚起は以前からされていた 実は紅麹菌が有害成分を産生しうることは以前から指摘されており、日本の内閣府附属機関である食品安全委員会からも以前に注意喚起されていまし

        • ステロイド点鼻薬

          OTC薬のことを調べていて、点鼻薬について少し驚きました。 もしかすると有名な話だったのかも知れませんが、ドラッグストアでステロイドを含んだアレルギー性鼻炎用の点鼻薬が購入できるようになっていました。 従来のドラッグストアで買える点鼻薬 これまで、抗ヒスタミン薬であるクロルフェニラミンや、ケミカルメディエーター遊離抑制剤であるクロモグリク酸などがOTC医薬品の点鼻薬の主役だと認識していました。これらは点鼻後すぐに効果がみられ有り難いのですが、一緒に鼻粘膜の血管を収縮させる

        パルスオキシメーター

          スイッチOTC医薬品

          OTC医薬品はすっかり定着しました。 over the counter(カウンター越しに購入できる)医薬品、略してOTC医薬品は"医師の処方箋なしで購入可能な医薬品"の総称です。ドラッグストアで購入可能な風邪薬や胃腸薬などがイメージしやすいと思います。 休日や旅先などでの体調不良の時には普段受診しておられるクリニックや病院にもかかれないため、重宝すると思います。 そんな中、スイッチOTC医薬品なるものが増えてきていることをご存知でしょうか?私も最近までこの分類を知りませんでし

          スイッチOTC医薬品

          アスパルテーム

          2023年7月頃、世界保健機関傘下の国際がん研究機関(IARC)が、アスパルテームの発がん性リスクの分類を"2B"に見直したことが話題となりました。 記憶にある方も少なくないと思います。 そんなアスパルテームについて再考してみたいと思います。 アスパルテームとは 元々1965年にアメリカの製薬会社サールで見出された人工甘味料です(JACS. 1969; 91: 2684)。国内では味の素が他に先駆けて導入しました。アスパルテームは全くカロリーが無いわけではありませんが、砂

          アスパルテーム

          ナッツアレルギー

          様々な食品でアレルギー症状が起きうることは一昔前からよく知られていると思います。 圧倒的に頻度が高いのは鶏卵と牛乳で、この2つで食物アレルギーの50%強を占めます。 日常的に食べることの多い食材であることもあり、経口免疫療法という、ごく少量ずつ症状が出ないか注意しながら摂取し、摂取してもアレルギー症状が出なくなるための"慣らし"の治療がなされることもあります。 一方で、近年この2つに次ぐ頻度で見られるようになっているのがナッツ類です(令和3年度食物アレルギーに関連する食品表

          ナッツアレルギー

          体に良い食品、食物繊維

          健康の維持、病気の予防を考えた時に一番に浮かぶのは食事と運動、喫煙・飲酒あたりだと思います。 特に食事はほぼどなたでも摂取するものなため、メディアでも良い悪いが議論されない日がないくらいです。ただ、ほとんどの話が一部分だけを切り取った情報であり、偏りがある情報であることは否めません。 津川先生というUCLAで公衆衛生を研究しておられる先生の書かれたものを最近拝見しました。 食事というより、一つ一つの具体的な食材について、根拠となる文献を挙げながら解説されており、わかりやすい

          体に良い食品、食物繊維

          鉄欠乏

          健診を受診される際に貧血を指摘される方も少なくないと思います。 今回は貧血の要因として最も多い、鉄欠乏について書いてみたいと思います。 鉄欠乏は他人事ではない 血液検査をしないと軽い貧血はわかりません。 成人女性では約9%程度、成人男性でも4%程度とされており、以前よりも増えてきていることが報告されています(J Nutr. 2021; 151: 1947-1955)。 つまり、女性についてみると10人いれば1人は鉄欠乏性貧血であり、一般に想像されるよりかなり多い疾患だと言

          スマートウォッチの効果

          apple watchをはじめとした、スマートウォッチを日常的に身に着けている方は多いと思います。 医療者の中でも半数以上スマートウォッチを使っている方がいる印象です。 様々な用途がありますが、フィットネス関連の機能が最も大きな特徴だと思います。 リアルタイムでその日に歩いた歩数や距離、睡眠時間、酸素飽和度、心電図異常モニタリングに至るまでモノにもよりますが驚くほど多機能です。 もちろん片手首のみから収集する情報のため、精度に関しては様々な議論があるのは当然ですし、過信しては

          スマートウォッチの効果

          ナッジ

          様々な領域でナッジ理論が活用されるようになっています。 ナッジは「ひじで軽く突く」「そっと後押しする」という意味の英語です。 人の行動を予測し、それに対して狙った影響を与えるような仕組みを作ることを指します。私は最近この概念を知りました。 ナッジは1990年頃から急速に発達した行動経済学の中でリチャード・セイラーにより提案されました。 医療の範囲内では、患者さん本人が望ましい選択肢を選びやすいように活用され出しています。意図せずに持ってしまっている自身の中にあるバイアスに影響

          統合医療

          統合医療という言葉をご存知でしょうか? 日本統合医療学会のホームページに日本における定義が記載されています。 つまり、病院で受ける医療保険が効く医療に加えて、様々な薬、食品、生活習慣などを組み合わせて行う医療のことを指します。 イメージしやすいのは、悪性腫瘍で根治が難しいとなったときだと思います。そのまま医師に勧められる治療を継続しても明確なゴールが見えなくなったとき、患者さん自身が他の可能性に視野を広げ、抗がん剤治療と並行して実施するような状況が統合医療に当たります。厳

          統合医療

          認知症の簡易検査

          認知症は現代で最も多い疾患の一つです。 2025年には65歳以上の方の5人に1人が程度の差こそあれ、認知症の基準に合致するとも予測されています(内閣府「平成29年度版高齢社会白書」)。さらにMCIと呼ばれる軽度の認知機能障害の方も相当数いらっしゃることまで考えると、もはやどなたも向き合わないわけにはいかない課題だと思います。 認知症の診断には、長谷川式認知症スケールやMMSEといった検査で認知機能を評価した上で、画像検査や血液検査で認知機能が低下した原因になるものがあるかどう

          認知症の簡易検査

          健診についての考察

          健診の中でも、企業などに勤めている方の一般健康診断や、扶養者の方の特定健康診査など、大部分の健診に含まれる項目を中心に考えてみました。 1.健診の判定について 健診における判定はアルファベットの部分を特に良くご覧になると思います。Aが良いのはわかるけれど、それ以外はどうかというと曖昧な部分が大きいのではないでしょうか。おおまかに次のように区分されます。 A:基準範囲内 B:御自身で気をつけるべき軽度の異常 C:医療機関の受診を推奨 D:すみやかな医療機関受診を推奨 E:

          健診についての考察

          睡眠改善のための習慣

          先日、睡眠改善薬、睡眠導入薬について書いてみました。 その後、睡眠に影響を与える習慣についても、根拠があるのか、再度考えてみたいと思いました。今回検討して睡眠改善のための習慣は、 1.寝る時間を一定にする 2.朝起きたら太陽光を浴びる 3.入浴を寝る数時間前に行う 4.寝る前のPC、スマートフォンの使用を控える 5.寝る前のカフェイン摂取を控える の5点です。 長い時間眠ったつもりが、なんとなくすっきり起きられないなど、現状の睡眠に満足できていない場合に生活習慣を変える

          睡眠改善のための習慣

          睡眠改善薬、睡眠導入薬について

          2003年からドラッグストアでも快眠のための睡眠改善薬が手に入るようになりました。種類も増え、市販薬の一つとしてしっかり地位を確立した感があります。 一方で、病院・クリニックで処方希望される上位にも必ず睡眠関連のおくすりが入ってきます。市販のもので十分なのか、医師に処方される薬との違いはどこかは知っておいて損はないと思います。 市販の睡眠改善薬 ドリエル、リポスミン、ネオデイ、ハイヤスミン ドラッグストアで手に入る市販の睡眠改善薬の有効成分はいずれもジフェンヒドラミンで

          睡眠改善薬、睡眠導入薬について