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【新聞の魅力】業界再編も?読んでる人の価値がどんどん上がっていく

 日々の出来事を読みやすいようにまとめてくれて、何を読んだらいいか「見出し」の大きさで価値を教えてくれる。政治、経済、国際、社会、文化などありとあらゆる記事が網羅され、プリントアウト(印刷)してくれて、しかも家まで毎朝届けてくれる。そんなメディアの貴重さを分からない人が増えているのが、とても残念です。2020年10月の新聞の発行部数(日本新聞協会調べ)は、約3509万部で、ピークの1997年約5376万から、1800万部以上も減っています。直近3年間だけみても700万部も落としています。異常な数値です。

 私は現役記者時代、毎日5~6紙の新聞に目を通すのが当たり前でした。自分の担当分野だけでなく、目に入ったニュースは自然と頭に入るような訓練を続けてきました。それを20年間続けてきたことを自負するとともに、どこか偏りがちな自分の主義・主張に、バランスの取れた「柱」をつくりあげたものと感じています。大学教員になったいまでも3紙は読むようにしています。何か重大なニュースがあったとき、報道や社説を読み比べて、自分なりの意見を組み立てていくのが習慣づいているのです。
 ネットで莫大な情報を得ることができる時代になりました。そういう時代だからこそ、限られた時間で有益な情報をいかに効率よく手早く入手できるかが社会を生き抜く”技”でもあります。「ネットより新聞の方が、早く多くの良い情報を手に入れられる」。世の中の一般的な認識より逆のことをあえて指摘しておきます。

 新聞をムリヤリ読む必要はないと思っています。しかし、読まない人が増えれば増えるほど、読んでいる人たちの希少価値がどんどん上がっていきます。就職活動の場面で、同じレベルの学生がいた際に、新聞を読んでいる人と読んでいない人なら、確実に前者を選びます。日ごろのニュースについて意見を問われたときに、読んでいるかいないかはすぐに見破ることができます。知的レベルの格差がますます広がっているのです。

 紙の新聞がすたれるのは時代の運命です。新聞社がビジネスモデルとして破綻しかかっているのも、あらがえません。新型コロナウイルス禍もあり、どの新聞社も危機にあえいでいます。近いうちに、どこかの新聞社がライバル社と合併したり、ホールディングス化して一つの会社に複数の新聞がぶら下がるなど、「業界再編」というビックバンが起こるだろうことは容易に想像がつきます。

 しかし、デジタルであれ何であれ、記事をまとめ、価値基準を示し、パッケージとして情報を送り出すメディア自体がなくなることは許されません。「柱」となる情報が伝わらなければ、知的共同体としてのわたしたち自身も危うくなります。この端境期に、新聞や新聞社がどうなっていくか、業界のOBとして、目を凝らしてウォッチしています。

 

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