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真鍋先生、ノーベル賞おめでとうございます。地球環境問題は、賞を総ナメ

 ネットのライブ映像を見ながら、毎年、ノーベル賞の発表をリアルタイムに感じることが恒例となっています。「Syukuro」の文字を見たときに、北欧の人かなと、一瞬思いましたが、「Manabe」と続いた瞬間、日本人か!と驚きました。

 今年のノーベル物理学賞は、プリンストン大学の真鍋淑郎さんに決まりました。発表前の新聞各紙の予想顔ぶれには載っていなかったように思います。ある意味、「ダークホース」的存在なので、新聞を含めメディアはてんやわんやしていることでしょう。
 NHKの報道も見ましたが、ウィキペディアの域を出ない、薄い内容でした。よーいドン、で報道合戦が始まったように想像します。真鍋さん本人はもちろんのこと、その親族、ゆかりの人など取材攻勢に苛まされることになるかもしれません。

 ただ、真鍋さんの発表時の国籍は「USA」です。生まれは愛媛県ですが、大学卒業後、米国にわたってそのまま米国籍を取得しています。これを一概に「頭脳流出」と指摘されることには疑問です。「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」との細菌学者・パスツールの言葉を引かなくても、ご本人の意志次第で、活躍する場所は選べるはずです。

 「今は日本や世界中で洪水や干ばつなどいろんなことが起こっている。そういうことに対してみんなが認識してくれたのがとてもうれしい」とのご本人のコメントが入ってきました。受賞理由は、地球温暖化がもたらす気候モデルの基礎を築き上げたことです。私も同じような研究分野の末端を汚すものとして、真鍋さんの受賞は励みになります。

 洪水や干ばつといった気候変動の象徴的な現象は、危機的な状況ですらあります。私が受け持つ授業の中でも、「このままあなたたちが生きている間に、とんでもないことが起こる」といった具合に脅しのような文句で、警鐘を鳴らしています。ノーベル賞を発表する王立科学アカデミーがあるスウェーデンは、地球環境の大切さを世界に初めて知らしめた国際会議を1972年に開いているし、環境活動家として有名になったグレタ・トゥンベリさんの出身地でもあります。

 地球環境問題でのノーベル賞といえば、著書や映画「不都合な真実」での啓蒙活動が評価されたアル・ゴア元米副大統領とIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2007年に受賞した「平和賞」が思い起こされます。環境問題にリチウムイオン電池で貢献した吉野彰さんの2019年の「化学賞」も記憶に新しいし、温暖化対策を訴えたウィリアム・ノードハウス教授の2018年の「経済学賞」もあります。そう考えると、地球環境問題に関して「物理学賞」が贈られるというのは異質な感じですが、「気候変動問題がかつてないほど大きくなり、このままではあかん」と良い意味での忖度が王立アカデミーに働いたのではと少しにやりとしています。

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