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フェアトレードとかっこいい大人についてのお話し

「学校でフェアトレードについて習ったんだけどさ、大した支援にならないと思う。だって、最初からフェアトレードに興味がある人をターゲットに絞ったら、そのほかの人にとってはただの割高な商品になるだけだし」

「自分なら、フェアトレードで買ったカカオを使ってすごく美味しいチョコ菓子を作って、”え?これフェアトレードなの?美味しいし支援できるし、一石二鳥じゃん”ってするね」

そう言ってドヤる子供に「それは、まんまMinimalじゃん」と伝えたところから話は始まります。

さて、みなさんフェアトレードはご存じでしょうか?

フェアトレードとは「発展途上国との貿易において、フェアなトレード(公正な取引)をすることにより、途上国の人々の生活を助ける」しくみのことです

千葉商科大学HPより

ざっくりいうと、力を持った買い手 > 力の弱い売り手 という不均衡を、買い手 = 売り手 と対等な関係性にしようというのがフェアトレードです。

個人的には商売は「売り手」「買い手」「世間」の三方よしの状態であるべきだと思っています。これは僕の信念の話なので、強制するものではありません。フェアトレードはまさにこの三方よしの精神と相通ずるものがあります。(余談ですが、僕は転売ヤーが大嫌いです。それは「売り手」しか得をしておらず、非常に傲慢な商売だと思っているからです)

しかしながら、自身が一消費者として行動する際は、同じようなものなら少しでも安く手に入れたいという心理が働くことが多分にあります。僕のような消費者の要求に応えようと、企業は一生懸命努力をし、コストを減らそうと頑張ります。しかし、そのしわ寄せが発展途上国の(小さな子供を含む)労働者にいってしまっているということも多々あるのが現実です。

自身も生活が苦しいときはどうしてもそこまで目を向けられなかったのですが、収入が安定してからは同じジャンルの商品であってもフェアトレードの商品があればそちらを買うようにしています。

そんなあるとき、SNSで話題になっていたことを契機にパートナーへのバレンタインデーのお返しとして購入したのが、Minimalさんとの初めての出会いでした。

僕は甘いものが苦手なので、普段はほとんど口にすることがないのですが、Minimalさんのチョコレートだけは別です。

こんな感じですっかりファンになっています。本当に美味しい

話が逸れました。

さて、ドヤる子供に「それは、まんまMinimalじゃん」と伝えたところ、非常に驚かれたのですが、それは自分が考えた(と思っている)「美味しいチョコだけれどフェアトレード」をすでに実践している企業があり、且つそのチョコをしょっちゅう自分も食べていたからです。まぁ、つまり井の中の蛙大海を知らずってことですな。(子供なので仕方ないけど)

そこで話が終わるのかと思ったのですが、「父ちゃん、Minimalの中の人にフェアトレードの話を聞いてきて。学校で発表するから」とのこと。
そんな気軽に言わないで欲しい。子供怖い。

絶対断られるだろうなぁと思いながらも、以前にインタビューさせていただいたこともあるMinimal取締役COOの緒方さんに相談したところ、「光栄です!全然大丈夫ですよ」とのこと。かっこいいかよ。
ちなみに子供から緒方さんへの質問は以下の通りです。

先日、英語の学習でフェアトレードチョコについて学びました。
生産者から適正価格でカカオを買い取り、それを加工して販売する素晴らしい活動だ、という内容でしたが、私はこれを聞いて、正直あんまり効果はないのではと思いました。
最初からターゲットを「フェアトレードに興味のある人」に絞ってしまっては、生産者からしても大した支援にはならないと思ったんです。

そこで私は、より幅広い消費者にカカオ生産者への支援をしてもらうには、美味しいチョコ菓子を作って、そののちにフェアトレードで仕入れたか顔を使っているってことを知ってもらったほうがいいのではと思いました。
これを父に話した所、まさにMinimalさんがそういうスタイルだと言うんです。びっくりしました。何回かMinimalさんのチョコは食べてるはずなのに、全く知らなかったです。

今度、英語の授業でフェアトレードについてのスピーチをします。そこで緒方さんがフェアトレードチョコについて、どういった考えをお持ちなのかをお聞きしたいです。

翌日に緒方さんからいただいたお返事がこちらです。
(緒方さんの許可を頂いて公開しています。こちらは緒方さん個人の考えであり、Minimalさんの公式見解ではありません)

安藤さん

ご質問ありがとうございます。
お父様にはいつも大変お世話になっております。
是非今後とも安藤家の皆様にご愛顧賜れれば嬉しいです。

さて、頂いたご質問について、いくつか分解しながら回答させて頂きます。
ちょっと長文です。

「最初からターゲットを絞って」について

ビジネスは「買ってもらうこと」を作ることも大事なんですが「如何に事業そのものを続けるか」も大事です。
とても気に入ったブランドやお店があっても、翌年に倒産してたら悲しいですよね。

どの事業者もすべからく豊富な資金があるわけでも豊富な資源があるわけでもないことがほとんどなので、実はこの「如何に続けるか」というのはとても難しいことだったりします。

おそらく安藤さんが見てそのように感じたそのブランドも「本当はもっともっと支援したい!もっと支援金額を増やしたい!」と心の底から思ってらっしゃるはずです。

ただ、倒産しては元も子もありません。
自分たちの貢献に対する強い思いがあっても事業継続の見極めを欠くと「綺麗事を言っていたが中身が伴ってなかったブランド」という評価になってしまいます、残念ながら。
よって、社会貢献と利益追求は、どの法人も同時に行っていく必要があります。

ただ、フェアトレードというのは「適正価格を払う」という文字面からは「極めて普通のこと」で「なんでそれが行われていないの??」と感じると思うのですが、現時点の世界はそうなっていないことも多いです=簡単に言うと過去の戦争の負債です。
ただ、世界的にそれを正そうという運動は日増しに高まっています。そのひとつがSDGsと呼ばれるものです。

どの会社も従業員を雇っている以上、利益を出さねば社員を食べさせていけなくなるのです。
となると大きな会社であればあるほど倒産するわけにはいかず、利益追求をして倒産せずに大量の雇用を継続することがそのまま「社会貢献」になるのです。

そう考えると「今10円で仕入れることができているものは本当は30円くらいが適正です」と言われてもおいそれと受け入れることが難しくなります。利益が削られますから。
そレをやろうと思うと従業員の給料を下げたり、そもそも倒産のリスクが高まったりします。

10円→30円って大した数字に思えないと思うんですが、例えば100g10円のコーヒーを年間50000トン使ってるコーヒーブランドからすると500万円が1500万円になってしまうんです。結構おおごとですよね。

そして、フェアトレードではない、この仕入れは現時点の世界のルールでは「悪いこと・なにかに違反していること」ではないんです。
むしろ、NYの先もの市場で確定している「資本主義に準じた、世界的合意形成」でもあるのです。

なので、この点について会社によってはA社は「自社が成長を継続することで雇用人数を増やすこと、ハッピーになるお客様を増やすこと」を社会貢献と捉えた場合その会社は10円のままで仕入れ続けたいと思うはずです。利益が最重要だからです。

一方B社は「自社の成長も大事だが、その過程で特定の弱者が過度に苦しんでいる状況で事業をするのは美学に反する。正当な対価を払って事業を行うことで社会貢献と利益追求を同時にやりたい」と思った会社は「社会貢献>利益追求」という価値観の会社なんだと思います。

そこで重要になってくるのが利益率の違いです。
端的に言うとA社のほうが利益が出やすい経営になるので、成長速度がB社よりは確実に早くなります。
B社は利益率が低くなるので成長速度は遅くなります=事業規模が大きくなりにくい。
でも、この2社はベクトルは異なれど「社会貢献はしている」とは言ってもいいと思います。
ただ、B社から見たら正義とは思えないものがあり、A社からみたらそれは正義の範疇になるという違いなだけです。

よって2社の違いは「目的の違い」だったり「持っている価値観の違い」というだけになります。

部活とかでもよくありますよね。
キャプテンは全国制覇を目指していてその過程でみんなが練習でズタボロになるのは致し方ない、全国制覇が大事だ!」って考えなのに対して、副キャプテンは「結果よりもみんなで楽しく一丸となって取り組むことが大事。過程が大事」という考えだったりすることってありますよね。どっちも正しいんです、それぞれの視点からは。

というわけで、フェアトレードへの取り組み有無ひとつをとって「どっちが良い(正しい)」という判断はとても難しいです。とてもひとつの側面だけで比較はできません。

ただし!!

ただしですね、私も1消費者として「どっちが好きか」は勝手に判断します。そしてそれで、買うことを決めたりやめたりは勝手にします。
この消費者ひとりひとりが持つ「好きかどうか」に対してどのようにブランドとして向き合うのか、は今後のブランドの大きな命題になります。

正しさ(マスメディアを通じて新聞や有名人が言ってることを盲目的に一元的な正しさを信じる)で評価する時代から、好き嫌い(ひとりひとりが自分の基準で判断して自分で情報を集めて評価をする)で評価する時代になっているんだと思います。

なのでまず最初に私が安藤さんに伝えたいのは「フェアトレードをしているから正しい」「フェアトレードをしてないから悪」というのは判断として危険だということ。
とはいえ「消費者は各々それに対して好き嫌いのラベルを貼っていく」ということ。

となると、Minimalもそうですが「どっちがいい」ではなく「どっちも成立させる」ことが今後のブランドにとっては必須だと考えます。

話を戻します。

というわけでB社は、少ない利益でそれでもがんばって社会貢献と事業継続を両立させようとしているんですが、ブランド→見込み客への最初のコミュニケーションでなぜ「フェアトレードを押し出し」て「フェアトレードに興味がある人」にまずターゲットを絞っているようなブランドがあるのか、についての回答ですが、利益率が低いブランドにとって一番回避すべきは無駄な投資。だからだと思います。

ブランドを消費者に知ってもらうこと、は色々な方法があります。SNSを頑張るとかCMを打つとか、手法としては無限に。

ただ、例えば「おいしそうなチョコレートの広告」をInstagram上で配信すると「おいしそう」に価値を感じた人が集まります。

そしてWEBサイトに行って「おいしそう!」と気持ちが高まったあとに、価格を見てビックリします。
「予想より高いな・・・」で、読み進めるとフェアトレードへの取り組みが情熱的に書いてある。
「良いことだとは思うけどこの価格だとちょっとな~~」と思い、サイトを閉じる。
というようなことが起きます。
そうなると、無駄な広告費がかかって、売上が立たないということになります。これはとても無駄だし、利益率が低いB社からすると避けたいことのひとつですよね。

ただ、「フェアトレードに関心が高い人」にだけ知ってもらえたんだとしたら「フェアトレードをしている会社からしか買わない!」という人たちだけが集まるので価格よりもその取組を評価して購買してくれるはずです。

そうなると、無駄なく無理なく事業が続けられますよね。

というわけで「事業継続の秘訣・バランス」のひとつとして「最初からターゲットを絞る」ということは別に珍しくはないんです。

ちなみに、我々Minimalは安藤さんと同じ考え方です。
①世界一美味しいチョコレートブランドになること
②その過程で不幸な人を生み出さない=正当な対価を払う
の両立です。
B社との違いは単に順番です。

Minimalは①→②で成すことを目指しています。
①を突き詰めれば自ずと成長するはずですし、成長し規模が大きくなればより多くの農家を支援することができます。
B社は②と①を並列に進めようとしている。この違いです。

なので、これまたどっちが正しいかどうか、という話ではなく、単に「考え方の違い」や「目的地の違い」なだけです。

というわけで、肝心な質問の回答に戻りますが
「世間で一般的になっているようなフェアトレードチョコレートについてどういった考えがあるか」
について。

同じ目標を持つ仲間で、違いは「目指し方」や「目指す規模」だけ。
というのが回答になろうかと思います。

また最後にひとつ、オチですが
「何回かMinimalさんのチョコは食べてるはずなのに、全く知らなかった」
これについてはもっと頑張らないといけないな、と反省するばかりです。
がんばります!

いただいた回答を見て震えましたね、、、。

子供のちょっとした疑問にこんなにも真剣に答えて下さるのか、、、という点はもちろん、フェアトレードでビジネスをすることについて非常に学びになりました(親子ともども)

”同じ目標を持つ仲間で、違いは「目指し方」や「目指す規模」だけ”

これ、ありがちなのですが子供って「よい」「悪い」の2方向で考えがちなんですよね。(子供だけではないかも)そうではなく、多様な考え方があること、それでいいってことなんですよね。

緒方さん自身がかっこいいのはもちろんなのですが、緒方さんがMinimalに対して並々ならぬ愛と信念を持っているんだろうなと感じ、こういう大人でありたいと思いましたね。

というわけで、僕ら親子はさらにMinimalさんに心を奪われた出来事の紹介でした。

というポストに対して、

君ら、そういうとこだぞ。
(うそ、向井さんも松本さんもカコイイですよ。飲みに誘ってくれたらもっとカコイイです。)

もしまだMinimalのチョコを食したことがないという方がいましたら、ぜひこの記事を縁だと思って食べてみてください。むちゃくちゃ美味しいですから。