見出し画像

アメリカ起源からグローバル進化まで!SCMの歴史を徹底解説【前編】

サプライチェーン・マネジメント(SCM)の歴史は、単なる物流の進化ではありません。
物流は、1900年代初頭、地域限定の小規模な供給チェーンから始まり、鉄道の発展とともにその範囲は拡大していきました。
その後、UPSやFedExといった企業の登場によって、サプライチェーンはグローバルなスケールへと変貌を遂げました。
そんなサプライチェーンを効率的に管理しようというのが、SCM(サプライチェーン・マネジメント)という概念になります。

本記事では、SCMがどのようにして現代の形を成し遂げたのか、その歴史を紹介していきます。
少し長くなりますので、今回は2000年までについてまとめていきます。


SCMの黎明期:アメリカにおける起源と初期の展開

物流管理の始まり:1950年代のアメリカ

「ロジスティクス」という言葉は、もともとは軍事用語で「兵站」(前線に物資・食料を補給すること)を意味していましたが、現在では物流管理を示すマネジメント用語になっています
この物流管理「ロジスティクス」の概念は、1950年代のアメリカで発達しました。
それは単にモノを運ぶということではなく、「戦略的」に調達、販売、回収などの物流を管理するということを意味します。
戦後の大量生産、大量消費の時代を支える大量のものを動かすにあたり、道路の舗装やコンテナの登場、大容量での効率的な運搬が効率的に行えるようになりました。
それに伴い、物流管理の重要性も認知されるようになっていったのです。

SCMの概念形成:1980年代にSCMが提唱された

サプライチェーンマネジメント(SCM)という用語は、1982年にキース・オリバー(Keith Oliver)という人が初めて提唱した概念です。
キース・オリバーは、コンサルティング会社ボズ・アレン・ハミルトン(現在のボズ・アンド・カンパニー)のコンサルタントでした。
彼は、従来の物流管理のアプローチを拡張し、供給チェーン全体にわたる統合された管理の重要性を提唱しました。
これがSCMの始まりです。
従来の自社内での物流最適化という考え方を超えて、サプライヤーを含む供給チェーンの全体最適を目指すという考え方は、当時非常に革新的な考えでした。
この考え方の拡張は、その後の数十年にわたって経営戦略に大きな影響を与えることになります。

情報技術の進化とSCMの発展

また、1980年代に急速に発展したコンピュータ技術と情報技術が、SCMの進化に大きな影響を与えました。
大規模なデータ管理や、瞬時の情報共有が可能になることで、より企業間での効率的な連携が可能になっていきました。
例えば、EDI(電子データ交換)の普及により、注文処理や在庫管理などのプロセスが効率化され、サプライチェーン全体でのデータ共有を促進させました。

効率的な在庫管理のためのSCM

ジャストインタイムという言葉は1950年代にトヨタのチーフエンジニアである大野耐一様が初めて使った言葉であるというように知られています。
日本の高度成長で、国際的に日本型経営が脚光を浴びる中で、ジャストインタイムや、リーン生産といった効率的な在庫管理が注目を集めます。
これにより、サプライチェーン全体の管理の重要性がより認識されるようになったのです。

グローバル化の波:SCMの国際的展開

1990年代:グローバルサプライチェーン管理の発展

1990年代に入ると、SCMはグローバルな規模での展開を始めました。国際的な貿易が増加し、さまざまな国々間での供給チェーンが形成されました。
これにより、SCMは国際的なコンテキストでの調整と最適化が求められるようになりました。

その中で、企業間の戦略的パートナーシップや協力関係の構築が、サプライチェーン全体の効率性を高める鍵として認識されました。これにより、サプライヤー、製造業者、小売業者などが緊密に連携して、供給チェーン全体の最適化を図るようになりました。

インターネットの登場

1990年代に本格的にインターネットの普及が始まりました。これにより、リアルタイムでの情報共有やプロセスの可視化が可能になり、サプライチェーン全体の効率化が図られました。
これにより、過剰在庫や品切れのリスクを減らし、より効率的な在庫管理が実現しました。
SCMがようになったことでアウトソーシングが一般化し、それによりサプライチェーンが複雑化したため、さらにSCMの重要性が増えていくというスパイラルが形成されました。

汎用サプライチェーン管理システムの登場

1990年代、ERP(Enterprise Resource Planning)やAPS(Advanced Planning and Scheduling)などのソリューションが導入されました。
これらにより、一層サプライチェーン管理が容易になり、発注量・在庫の最適化によるコスト削減や納期短縮ができるようになっていきました。

まとめ

簡単に時系列でここまでの流れをまとめます。

  • 1950年代: 軍事物流における分析の利点が認識され、ロジスティクスとして物流管理が経営に取り入れられるようになった。

  • 1960年代から1970年代: DHLやFedExが物流プロバイダーとして参入

  • 1975年: JC Penney社による初のリアルタイム倉庫管理システム(WMS)が開発されました。

  • 1980年代: パーソナルコンピュータの開発、供給チェーンの計画能力向上

  • 1982年: 「サプライチェーン管理」という用語がキース・オリバーによって初めて使用されました。

  • 1990年代から2000年代: ERP(Enterprise Resource Planning)やAPS(Advanced Planning and Scheduling)などのソリューションが導入されました。

  • 1996年: 協働ロボット、または「コボット」が発明されました。

  • 1997年: Amazonが公開され、インターネット小売業界で最初に100万人の顧客を獲得しました。

以上、サプライチェーンマネジメントの歴史について、2000年までの流れを見ていきました。
次回は後編として2000年以降について書いていきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?