桂健枝郎

六代文枝門下の落語家。映画、写真、音楽、怪談、短歌が好きです。 https://twi…

桂健枝郎

六代文枝門下の落語家。映画、写真、音楽、怪談、短歌が好きです。 https://twitter.com/kenshirokatsura

最近の記事

2023年から2024年3月までの文芸活動(出版/掲載/受賞など)まとめ

最近の文芸方面での活動をこちらにまとめております。 (本当は2023年分だけまとめようと思っておりましたが、年末年始に忘れていたため中途半端になりました…) 2022年分のまとめはこちら。 ⚫️怪談 ・2023/9/29発売 『妖怪談 現代実話異録 』(竹書房怪談文庫 HO 633) こちらに一篇収録されております。 ・2024/3/29発売 『呪録 怪の産声』 (竹書房怪談文庫 HO 661) こちらには三篇収録されております。 ・2024/3/29発売 『投

    • フィクション(バリー・コーガンに飢えた話)

      急にバリー・コーガンに飢えた。 バリー・コーガンを摂取したくなった。 というより『聖なる鹿殺し』を観返したくなった。 そして観た。続いて『アメリカン・アニマルズ』も観返したくなった。 『アメリカン・アニマルズ』。 やっぱり面白い。 ドキュメンタリー監督のバート・レイトンが撮った六年前の劇映画で、フィクションとリアルの境界を壊し続ける映画と言うか、そもそもそんな境界なんてなかったんじゃないかと思わせる作品だ。 当時劇場で観たとき「なんやこの映画、めちゃくちゃおもろいやんけ」と

      • 李禹煥ときゃりーと。

         今年の2月。  兵庫県立美術館の李禹煥の回顧展に行くと、”インスタに投稿すれば先着〇名様まで展覧会のポスターが貰える”というキャンペーンを見かけた。  「(会期も後半だったので)もう流石にポスターないですよね…?」  と受付で聞くと、こういうのは言ってみるもんであっさりとポスターが貰えた。  ただ、このポスター、めっちゃデカくて部屋が狭いために貼れない。  狭い廊下に貼るには存在感が大きすぎるし、重くてマスキングテープがすぐ剥がれるし…で、せっかく貰ったのに貼っていない。

        • 『超個人的時間旅行』

           ”文学フリマ大阪11”に行った。  文フリは、以前に行った時もそうだったけど、入った瞬間は「めっちゃ楽しそう」と感じるが、すぐ人混みに疲れて「もう帰ろう」となってしまう。  文フリの楽しみ方はいまだにわからない。  短歌のブースで興味のあるブースもあったのに、至近距離で立ち読みするあの感じがどうにも慣れなくて素通りした。  ということで唯一入手した本、藤岡みなみさんの『超個人的時間旅行』を読んだ。  タイムトラベルについての”ノンフィクション”のエッセイ集。  これは本当

        2023年から2024年3月までの文芸活動(出版/掲載/受賞など)まとめ

          珈琲の味

          久々に漱石の『三四郎』を読んだ。 短編を除けば漱石の中でも一番好きな小説かもしれない。 それで思い出した話。 数年前に、東京の名喫茶”やなか珈琲”で名作文学の読後感をオリジナルブレンドで再現する、という企画の商品があった。 たしか、「名作のレビュー、感想をAIに分析させ、それを味に変換したブレンド珈琲を作る」という謳い文句の商品だった。 どういう理屈かわからないが、とにかく何種類か豆を買って挽いて飲んでみると、「なるほど、この小説はこの味だろうな」と実感できるような味わい

          ホンモロコでアンチョビを。

           ヒグマは食べ切れなかった獲物を土饅頭にして後でまた食うらしい。  こういう執着心は生物の本能だと思う。  ホンモロコをたらふく食べてみたくて昨春、琵琶湖で何匹も釣った。  それはもう顔が綻ぶ美味さで、食べ尽くすのが惜しい惜しいと思ううちに(塩漬けにして放置しといたらアンチョビみたいになって保存もできるし、旨味も増すのでは)という企みが頭に浮かんだ。  ということで塩漬けにした。  そして塩漬けにしたホンモロコのことをすっかり忘れてしまい、一年以上経って思い出した。

          ホンモロコでアンチョビを。

          ショートショート『アレルギー』

           謙虚さの欠片もない、侮蔑的な毒舌が多くの若者に受け入れられたテレビタレントの人気が陰り始めたころ、彼の都心のタワーマンションに一枚の絵葉書が投函されていた。  その絵は彼には全く見知らぬ絵だった。  木のテーブルの上に飛沫のようなボンヤリと赤い林檎が不安定に並んでいる。  裏にはこう書かれていた。 「林檎アレルギーを発症したのでもうこの絵は要りません。あなたも是非とも、そうなりますように」  それだけである。  くだらない嫌がらせだ。差出人名は書かれておらず、宛名もなく、消

          ショートショート『アレルギー』

          恐竜図鑑、パレオアート。

           めっちゃ行きたかった兵庫県立美術館の特別展「恐竜図鑑 ― 失われた世界の想像/創造」へ。  会期終了前にギリギリ間に合いました。  「恐竜展」ではなく「恐竜のアート展」(科学に基づいて古生物を復元した芸術のことを”パレオアート”というらしい)。  つまり、二世紀前に恐竜が発見されてからの人間の想像力の歴史を見る。  恐竜研究が進み、新たな学説が出るたびに恐竜像は変わる。それに合わせて恐竜の復元画、恐竜を元にした芸術作品も変わってくる。  「過去の復元画は間違っているので

          恐竜図鑑、パレオアート。

          2022年 文芸活動(出版/掲載/受賞など)まとめ

          昨年の文芸方面での活動をこちらにまとめます。 (仕事の幅を増やしたい願望のため) 2021年以前の活動歴もそのうちまとめる予定です。 ●怪談 ・2022.4.30 発売 『村怪談 現代実話異録』 (竹書房怪談文庫) こちらに一編収録していただいております。 また、竹書房主催の怪談マンスリーコンテストで最恐賞一回、佳作一回、その他優秀作品に一回選んでいただきました。 今年も怪談には力を入れたいです。 ●短歌 ・雑誌Meets『レッツ短歌!』 Meets誌上の岡野大

          2022年 文芸活動(出版/掲載/受賞など)まとめ

          Clever Girlにしてやられる

           小さい頃から何度も観た映画『ジュラシック・パーク』で、何度観ても好きなシーンが、このマルドゥーンがヴェロキラプトルに襲われるシーン。  ヴェロキラプトルの飼育員であり彼女たち(パークの恐竜は全て雌という設定)の危険性や狡猾さを最も見抜いていたはずのマルドゥーンが出し抜かれて殺される直前、”Clever Girl”と漏らす。  このセリフがめちゃくちゃ好き。  字幕では「賢いやつめ」で、吹き替えでは「囮だったか」に訳されていたと思うが、やっぱり訳される前の”Clever Gi

          Clever Girlにしてやられる

          燐寸。

          12/9に東京で落語会をした翌日の12/10も友人が高座に上がる機会を企画してくれた。 大学の頃からの知り合いで現在ベリーダンサーをしている友人がよく利用しているゴールデン街のステージ付きのバーでダンスと落語を交互に、という会。 企画も集客も全部していただき、満席のお客様の前で喋らせていただけて、めちゃくちゃありがたかった。 その日の話。 高座に上がると、目の前の席に見覚えのある女性が座っていた。 その人を見た記憶は十年以上前、大学に入った頃に遡る。当時、早稲田には映

          鰉の味。

           近松秋江の『黒髪』という、東京の男が京の芸者に惚れて身勝手な想いを寄せ続けるストーカー小説がある。作中、男が京の料理屋で女を待つ場面で、 そこへ女中が膳を運んできた。 「おおきにお待ちどおさん」と、いいつつ餉台のうえに取って並べられる料理の数々。それは今の季節の京都に必ずなくてはならぬ鰉の焼いたの、鮒の子膾、明石鯛のう塩、それから高野豆腐の白醤油煮に、柔かい卵色湯葉と真青な莢豌豆の煮しめというような物であった。  「今の季節(晩春)の京都に必ずなくてはならぬ」と言われる

          鰉の味。