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UT - LL.M.クラス

今回は、Texas Law LL.M.のクラスについて書こうと思います。

そもそも本LL.M.を選んだ理由の一つが、「少人数であり、かつ、多様性のあるクラス」で勉強できるというものでした。この点は、出願前から認識していたのですが、今回説明するとおり、入学後も認識に相違はありませんでした。

アメリカ東海岸・西海岸の著名ロースクールとは少し違った雰囲気ではないかと思いますので、そのようなユニークな環境を求めている方にとって、今回の記事が参考になりましたら幸いです。

(なお、冒頭の写真は、UTが誇るFootball のスタジアム、Darrell K. Royal-Texas Memorial Stadiumです。Texas大学のFootballチームは、ここでホームゲームを行うことになります。)


クラスの構成

情報源

実は、LL.M.全体の名簿をもらっていないので、誰がLL.M.なのか正確には分からないという状況です。

とはいえ、普通であれば、全員必修の授業があったりするので、その授業の参加者から知ることができるのですが、①後述のとおり、各学生のバックグラウンド(とりわけ既に米国内のロースクールを出ているかどうか)が多様であることと、②前回書いたとおり(※)、各学生が卒業後目指すところ(とりわけBarを受けるかどうか)によって必修科目も変わってくることが相まって、そのような推知も難しいです。

(※)なお、前回の説明は以下をご参照下さい。

ということで、LL.M.のクラスメンバーを確定するに当たっては、①基本的には必修であると思われる「米国法基礎」を受講しているメンバーを基本としつつ、②FacultyがLL.M.用に作ってくれたWhatsAppグループに入っているメンバー、③更に最初の1週間に行われたオリエンテーションで見かけたメンバーも加味して考えることにします。

人数等のデータ

全体感

以上をもとにメンバーを確定したところ、今年のLL.M.は全部で20人だと思います。

なお、オリエンテーションでの説明によると、350人くらい出願していたとのことです。

1. 他のロースクールとの比較

UTはU.S.NewsのLaw School Rankingでは、16位のようですが、UTとランキングが同等以上のロースクールをみる限り、おそらくどこのロースクールももっとLL.M. の人数をとっていると思います。他のロースクールの関係者に話を聞いても、UTより人数が少ないロースクールというのはほとんど聞いたことがないです。

https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-law-schools/law-rankings

ただ、私は、University of Colorado BoulderのLL.M.も併願していたのですが(実質的にはこれが唯一の併願校)、ここは更に人数少なかったように聞いていました。

2. 例年との比較

UTの歴代の日本人留学生とは何人か知り合いになっており、各年度のクラスの規模がどのくらいだったかはざっくり聞いております。

まず、昨年(2022-2023)についてはほぼ同じ人数だったようです。

他方で、それより更に前(具体的には、2017-2018と、2018-2019)は、50人くらいいたようです。2017-2018については、詳細を聞けているので、後述します。

この変遷については、UTの合格した直後にFacultyと話したことがあるのですが、どうやら昨年くらいからAdmissionの方針を変えて、きめ細かい教育を施すという観点から、意識的に少人数クラスを目指すようになったとのことでした。

国別

以上が全体感ですが、今年のクラスメンバーを国別にカウントすると、以下のとおりです。

国別人数

20人が12カ国から来ているということになりますが、国だけで言えば、相応に多様性があると言っていいのではないでしょうか。昨年の出願時に聞いたところでは、特にQuotaがあるわけではないが、Diversityは重視しているとのことでした。

Mexicoが多いのは地理的な距離によるものです。

Switzerlandが人口の割に複数人いるのが興味深いですが、これは、Dean FielderがSwitzerlandでVisiting Professorをしているため、繋がりが強いことによるようです。

地域別

ご参考までに、地域で分けると以下のようになります。

地域別人数

もう少しAsiaがいてもいいかな・・・、と思います。私が唯一のアジア人学生です。

改めて他のロースクールのLL.M.との比較で言うと、ほとんどのロースクールでは、中国からの留学生が相当割合を占めていると聞いています。その中にあって、UTは異例と言えると思います。

なお、合格直後にDeanと話したときに、「日本からの学生をもっと増やしたいと思っていたので、是非来てほしい。」という趣旨の話を聞きました。そのときは、社交辞令的に受け止めていましたが、上記の現状を踏まえて、Diversityを掲げるとなると、本音だったのかもしれません。

バックグラウンド別

更に別の観点として、バックグラウンドで分けると以下のとおりです。

バックグラウンド別人数

Yale Summer Sessionでも感じましたが、学生がやはりそれなりに多いですね。欧州から来ている学生はその傾向が強いです。他方、LatAmからは、実務家が来ている印象です。この点は、どこのロースクールにも共通の傾向なのではないかと思います。

(2023年12月6日追記)

もう1個のバックグラウンドとして、①英語圏 or ②common-lawの国のロースクールを卒業したかどうかという観点があります。①は、専らUTの内部でのみ重要になる観点ですが、何かというと、非英語圏出身の場合、Final ExamにおいてAccomodationを受けることができ、例えば、1.5倍の試験時間をもらうことができます。他方、②は、Barの受験要件に影響してくる理解です(詳細は知らないですが、Texas BarのRule上は、扱いが分かれている。)。

①について、実際にFinal Examを受けてみてわかったのですが、USの3人を除くと、5人は、英語圏のロースクールを卒業しているようです。

Concentration別

前回書きましたが、UTには、7つのConcentrationがあります。私は、Global Energy, International Arbitration & Environmental Lawです。

このConcentrationの観点で人数をカウントするのも面白いと思ったのですが、Concentrationに関しては、具体的に何かの科目と紐づいているわけでもなく、更に判定が難しいので、本人から聞く以外には知る術がありません。

ただし、オリエンテーションの際に、Concentrationごとに分けられて説明を受ける時間があったので、自分と同じConcentrationが誰かは分かります。Global Energy, International Arbitration & Environmental Lawについては、私含め3人だけでしたが、とりわけEnergyに関心があるためにこのConcentrationのは私ともう一人メキシコの実務家の方だけでした(残りの一人は、むしろArbitration寄りのようです。)。

その他

ロースクールに出願するときに色々なロースクールにクラスメンバーの構成を聞いたのですが、その際、聞いてもいないのによく教えてくれたのが、Fulbright Scholarshipを受けている学生が何人いるか、です。

Fulbrightについては、アメリカの教育機関が提供している奨学金で、かなり優秀でないともらえない、というくらいの認識しかないのですが、クラスに奨学生が何人いるかがそのクラスのクオリティを示す一つの基準として認識されているのかもしれません(よく知らないですが)。

という経緯もあったので、LinikedInで繋がったときになんとなくその辺も注意して経歴を拝見するようになったのですが、今年のクラスでは、少なくとも2人は奨学生なのではないかと思われます(なお、私は違います。)。

以前との比較

昨年の情報

私は、昨年秋ごろからUTへのアプローチ(出願準備)を開始しましたが、その中で、当時のクラス(2022-2023)の構成についても聞きました。

まず聞いたのが、「日本人はいるのか?」ですが、それに対する回答は以下のとおりです。

We have had approximately 17 Japanese students enroll in the LL.M. Program in the recent past

このうち何名かは既に繋がっているという状況です。

次に、全体感についても聞きましたが、以下の説明でした。

20 students from 20 countries (4 Fulbright students)
90% with jobs
Ave. age 29

説明どおりだとすると、今年よりも更に多様性(国別)が高く、Professionalのバックグラウンドを持つ割合も高かったということになるように思います。

2017年との比較

また、2017-2018のクラスについては、比較的詳細なデータを入手できたので(※)、今年と対比する形で以下に掲載します。

2017年との比較

(※) Business Law Journal 2018年3月号4頁

クラスでの活動

クラスの構成について描写したところで、クラスで具体的にどのような活動をしているのかを書きます。

授業関係

まず、冒頭にも書いたとおり、必修科目含めて時間割がバラバラなので、いつも同じ授業を受けているという感じではありません。

とはいえ、以下の科目は概ね大多数のLL.M.生が受講しており、これらが授業関係では「核」となります。

U.S. Law, an Introduction
Legal Research and Writing for Foreign Lawyers
Contract for Foreign Lawyers
Bar Prep

補足しますと、まず、U.S. Lawについても、全員が取っているわけではないのですが、これは既にJ.D.を持っているなどの理由により免除されているいるからだと推測されます。

次に、Contract for Foreign Lawyersは、Bar受験に役立つと言われているので、Bar受験を予定している学生は受講していますが、私は取っていません。理由は、前回書いたとおりです。

加えて、Bar Prepについては、そもそも「授業」ではないのですが(この点も前回説明したとおり)、当然ながら、Bar受験予定の学生だけが参加するということになります。

授業外の活動

以上のとおり、クラス全員が参加するという授業がそもそもないので、当初は、仲良くなるには中々難しさがあるように思いました。特に、UTに来る直前に参加していたYSSでは、完全に真逆のスタイル(すなわち、全員が同じ授業を毎日履修し、かつ、多くの学生が寮生活なので、食堂等でしょっちゅう顔を見合わす、というスタイル)だったので、その思いが強かったです。

ただ、実際は、大学側がLL.M.生で固まって行動する場を多く設けてくれますし(直近では、Boat Cruiseに行きました。)、WhatsAppグループで頻繁に情報交換がなされているので、さほど心配する必要はなかったようです。LL.M.生は、色々なバックグラウンドがあるものの、置かれている現状や、今後目指すところは概ねオーバーラップしますので、当然と言えば当然ですが。

その他

なお、以上がLL.M.のクラスについての説明ですが、UTは、LL.M.以外にもExchange Studentを受け入れています。彼らは、母国ではUndergraduateのようです。1セメスターだけの留学生もいれば、LL.M.同様、2セメスター在籍する例もあるようです。

このExchange Studentが、今年は全部16人います。外国のバックグラウンドがあるという意味では、LL.M.に近いので、共通の授業をとることもままあります。最初のオリエンテーションは一緒でした。具体的にどこから来ているかですが、基本的には欧州であり、その中でもUKが多いという印象です。

まとめ

以上のとおり、Texas Law LL.M.は、少人数かつバックグランド的にもバランスのとれたユニークなクラス構成なのではないかと思います。

ご参考になりましたら幸いです。

なお、一旦本記事を執筆し終えたものの、もう少しデータ面を補強したいとも思っており、現在、UTに、ここ数年の在籍人数等の情報提供をお願いしているところです。晴れてデータが得られた場合は、本記事にも多少追記させて頂くかもしれません。予めご承知おき下さい。

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