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人工知能によるマスタリングサービスLANDRを使ってみた

人工知能による楽曲マスタリングを行うLANDRというサービスを利用してみたので、その感想を書いていきたいと思います。LANDRによってマスタリングした音源も下方に添付しています。

LANDRとは

LANDR Audio Inc. が提供する、楽曲制作者向けのWEBサービスです。最大の特徴は人工知能を利用した自動マスタリングをWEBプラットフォーム上で行う点にあります。


マスタリングとは


「マスタリング」について軽く説明をしておこうと思います。

楽曲制作の際、レコーディングで様々な楽器を録音した後、それぞれの音を整える「ミックス」と呼ばれる作業があります。ミックスを経て、全ての音が重なったトラックができるのですが、これをそのまま配信してしまうと、聴き手が用いるスピーカーやイヤフォンによって全然聴こえ方が違うという現象が発生します。

このような、環境による聴こえ方の違いをなるべく少なくするために、マスタリングという最終作業を実施します。主には、トラックの音圧を上げて調整を行う作業ですが、音圧だけでなく特定の帯域の音を強調したり、音が聴こえる左右のレンジを広げるなどの作業も行うことが多いです。

「ミックス」は、それぞれの楽器のキャラクターを作っていく作業であり、創作的な面が強く最適解が存在しない作業ですが、「マスタリング」は様々な環境でも同様に聴こえるように調整を行う作業であり、汎用性の高さを追求する作業といえます。その点では、マスタリングを人工知能によって行うというのは理に適っていると思います。

ミックスとマスタリングの違いについては、以下の動画が参考になるかと思います。

試してみた

LANDRに無料会員登録後、すぐにブラウザからwav音源をドロップするだけでマスタリングが可能となります。ドロップを行うと、2分程待った後に、マスタリングされた音源の中から、1分間程切り出されたプレビューが聴けるようになります。

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この段階で、音圧について「低音圧」「中音圧」「高」から一つを選択することが可能です。CD等でのリリースを検討されている方は「高」を選択すると良いかと思います。

また、無料会員からプランをアップグレードすると、音圧以外についても設定が可能になるようです。(こちらは、今度試してみようと思います。)

次の画面に進むと、エクスポートする音源の形式を選択する画面となります。

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基本はwav形式でエクスポートされると思うので、ここで毎回999円程の費用が発生します。ただ、マスタリングエンジニアにお願いすると、通常、1曲10,000円ぐらいかかりますので、比較すると非常にお値打ちと言えます。

ここで「今すぐ購入」を行うと、マスタリングされたフル尺の音源をダウンロードできるようになります。


実際のマスタリング音源


こちらが、実際自分の楽曲をLANDRでマスタリングしたものです。

比較対象として、自分がマスタリングした音源も貼っておきます。

私はマスタリングのナレッジや有償ソフトウェア等も持っていないので、ほぼ素人です。確かに、LANDRでマスタリングした音源の方が、しっかり音圧が詰まっています。また、音域や左右のレンジも非常に豊かになっています。

ただし、LANDRのマスタリング音源はドンシャリ(高音と低音が強く、中域控えめ)な感じが強いと思いました。EDM等を始めとした、今時のトラックメイカーには適している内容ではないかと思います。しかし、今回の私の曲は中低域〜中域の気持ちよさを目指した曲であるため、少しミスマッチなマスタリング処理になっているかも知れません。

また、バスドラムに含まれている音(「ボフっ」みたいな音)が、不自然に強調されて聴こえる点も気になりました。


アルゴリズムについて

LANDRのアルゴリズムについて詳細が書かれた記事を見つけることができなかったのですが、こちらの記事では以下のことが記載されています。


・Spotifyが楽曲をリコメンドするために用いているアルゴリズムと同様な手法を用いている。
・音響特徴が似ているリファレンス音源を参考にマスタリングを行っている。

上記の事から、スペクトログラムを解析して、楽曲毎にマスタリング処理の内容を変えているように思われます。

Spotifyのレコメンドのアルゴリズムに関しての記述は、以下の記事に分かりやすくまとまっています。


まとめ

LANDRは非常にお値打ちで、時間もかからずマスタリングが完了する点においては、非常に画期的なプロダクトであると思いました。マスタリング処理の感じとしては、今っぽいサウンドのトラックを作成されている方にとってはすごくハマるものだと思います。

ただ、有償プランでは更に詳細なパラメータ調整ができるようなので、今度はそちらで自分の目指している質感が得られるかどうか試してみたいと思います。

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