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「らんど」ZAZEN BOYS(2024)

 早くも今年の個人的アルバムオブザイヤーに選びたくなる作品がリリースされてしまった。筆者はナンバーガールは再結成時に一度だけライブを見る事ができたのだが、4人のシンクロ率と演奏技術は驚きであり、(オーディエンスの熱狂にも)巷では解散前よりもキレが増していると言われていた。その流れを踏まえると、今回傑作が生まれたのは必然かもしれない。ポストパンク、マスロック、ファンク、ハウス、ハードロック、いくつもの架け橋の交差点でありながら衝突せずに一貫してZAZEN BOYSの楽曲に昇華されているのが見事。ロックの先鋭をベテランが見せた。

 邦ロックではあらゆるジャンルから引用し、ある意味節操の無さを開き直り肯定する「ミクスチャーロック」と言うカテゴライズがある。ZAZEN BOYSがロック以外のあらゆる音楽の影響下にもありながらが「ミクスチャーロック」とは一線を画すのには、会場を沸かすエンターテイメントは志向せずに内的なドライブを求め、結成から一貫したコンセプトのもとバンドを継続しているからだろう。結果的にもロックファンが高ぶるのはその内的なドライブを求める一貫した狂気だ。12年ぶりのリリースだが、そこにいるのは法被を着たレッドツェッペリンそのままである。

 向井秀徳の露悪的な歌詞は好みが分かれるところだ。しかし、芸術が美しさやカッコ良さを求めるだけの事に形骸を感じ、衒学的なものへの反発から生まれた言葉達であるならそれは最高にロックなのではないだろうか。また、今作においてはその逞しい音楽的挑戦に強く目が向けられるべきであろう。

 高まる向井秀徳の歌唱力、鋭角でありながら踊る音を紡ぎ出す吉兼聡、圧倒的な手数の松下敦、そして加入後アルバム制作に初めて携わった「殺し屋」MIYAの存在ー。この目で確かめるべく東京のチケットを取りたかったが、売り切れていた。昨日はまだ残ってたのに遅かった…。

 

 
 

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