Cinema Mediatorという肩書

 5月から始めたnote。最初に書いたのは、子どもの頃から映画が好きだった私が、17年間サラリーマンを経験した後、どのように映画の世界に入っていったかという内容だった。

「脱サラして映画に関わるということ」
https://note.mu/kentarokanbara/n/n68dfe985a6ae

 今回は、現在、ある意味ゆるく使っている肩書「Cinema Mediator(シネマ・メディエーター)」について、以前書いてきた文章を引用しながらまとめてみた。

 私が脱サラするに至る最後の準備段階みたいな位置付けとなった、2011年~2012年にかけて受講していた講座のタイトルは「映像メディア・キュレーター養成講座」。「キュレーター(curator)」、「キュレーション」ということばは、当時私が身を置いていたIT業界にも取り入れられ始めていて、注目のワードであり、具体的に向かうべきところではあった。ただ、受講しながら、もう少し違った切り口でしっくりくることばを探していた。
 やりたいことは、映画を通じていろいろなものを繋げるということ。「映画」と「人」、「映画」と「もの」、「映画」と「場所」、「映画」と「地域」、「映画」と「教育」、「映画」と「映画」等々。全く別のジャンルとも繋げたいし、そこから更に「人」と「人」が繋がっていけば、もっと面白いことが起こるはず。こんなことを考えているうちに浮かんできたのが「メディエーター(mediator)」ということばだった。仲介者、媒介者、仲裁者、パイプ役みたいな意味合いがある。
 そして、その直後、「映像メディア・キュレーター養成講座」最後のコマの講義があった。講師は、当時の国立近代美術館フィルムセンター主幹岡島尚志さん。講義の冒頭、「映像メディア・キュレーターの定義」として、なんと、まず「mediatorであれ」と出てきたのだった。あまりにもタイムリーだったのでかなり興奮したのを覚えている。それ以来、この「メディエーター」ということばを大切にして、脱サラしてから何かしらのかたちで使いたいと思っていた。
 脱サラしてから10ヶ月ほど経った2013年1月、講座の修了企画として「キノ×コン!」という映画や映像に関する複合的なイベントを渋谷のキノハウスで開催した。初めて自分たちで企画したイベントだった。「キノ×コン!」については、別途ここにも書きたいと思っているが、個人的に、これはもう、奇跡のような、夢を見ているかのようなイベントとなった。
 「キノ×コン!」の企画段階、イベント当日、その後の流れなどから、映画を通じて何かを繋げるということは、多少なりともできているように思えた。ならば、脱サラしてからそれまで、あえて何の肩書もなく活動していたが、肩書としてこのことばを入れてみようと考えた。堅苦しいものではなく、ネット検索にも引っかからなかったので、名乗ったもん勝ち的な感じの活動目標みたいなところで、「Cinema Mediator」とした。名刺を作り、SNSに投稿し宣言した。
 その投稿を見た、金沢のミニシアター、シネモンド代表の土肥悦子さんがメッセージをくれた。それは、当時はまだ金沢でしか開催していなかった「こども映画教室」を、今後東京近郊でも開催していこうと考えていて、まず、事務所候補の物件を見に行くので同行しないかという内容だった。そこには他に2人呼ばれていて、物件見学後、4人で食事をしながら東京近郊での「こども映画教室」の事務局立ち上げの話になり、そのまま、そこにいたメンバーが最初の事務局メンバーになるという、驚きの流れとなった。実は、その土肥さんも「映像メディア・キュレーター養成講座」の講師のお一人だった。 
 「こども映画教室」の事務局スタッフになり、とても充実した活動が続いていく中、2015年9月、IID世田谷ものづくり学校にて、鑑賞ワークショップ「こども映画教室シネクラブ@せたがや2015」が開催された。その特別講師は、なんと「メディエーター」ということばを与えてくださった、岡島尚志さん、その人だった。当時の講義で初めて岡島さんにお会いして、心に刺さることばをたくさんいただき、その後も何度かイベント等でお話を聴いては、いつも引き込まれていた。その後の自分をかたちづくる過程で多大な影響を受けた岡島尚志さんと、このようなかたちでご一緒させていただけるのは、本当に感慨深いものがあった。そして、鑑賞ワークショップはとても素晴らしい内容で、小学生のうちからこのような体験ができることが、どんなに貴重なことかとあらためて思った。
 打ち上げの席で、岡島さんに名刺を渡した。もちろん肩書は「Cinema Mediator」だ。経緯を話し、感謝の意を伝えた。あの講義から3年半ほど経ったころのことだった。岡島さん、土肥さんをはじめ、今では感謝したい方は数え切れない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?