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DXO PureRAW4を試してみた

DXOはカメラとレンズの分析データを持っていて、そのデータを持ってしてレンズの性能等を語る人も多いと聞く。ただ現像ソフトについては、業界スタンダードと言うべきAdobe製ソフトと比べると、まだまだマイナーな存在なのかも知れない。
 
だが、Lightroom Classicのプラグインとして使えるノイズリデューサーとしてPureRAWがリリースされると、ディテールを残しつつノイズを消したい人達の注目を集めるようになった。
 
そのPureRAWは、現像ソフトPhotoLabのノイズリデューサー機能だけを抽出したソフトで、DNG形式ファイルでアウトプットできる上にLightroom Classicではプラグインとして扱えるため、Adobe製ソフトを使う人にとっても取っつきやすい工夫がされている。
 
私自身は現像ソフトPhotoLabを使っているので、ノイズリデューサー機能は組み込まれているからPureRAWには正直興味が無かった。
と言うのも、Lightroom Classicは多数のファイルを処理する様な仕事に限って使うため、個別にノイズリデュース加工する時間が取れないって事もあったからだ。
 
実際、現像にかかる時間は馬鹿にならなくて、1枚に10秒前後かかるとすれば1000枚だと余裕で3時間近く必要になる。そこにノイズリデューサー機能による加算分が入ると、想像したくない時間が必要になり現実的でない。
 
ところで、今回リリースされたPureRAW4はノイズリデューサー機能が進化しているとアナウンスされていて、ノイズとの戦いに開ける暮れる自分としては俄然気になってしまった。 
進化したとされる「DeepPRIME XD2」はどれほどの能力を持っているかがとても気になるので、試用版をダウンロードして検証をしてみる事にした。
 
ノイズリデューサーは基本的にディテールを損なうもの。
強くかければ、塗り絵の様な画像になりかねなく、なるべくならノイズリデューサーを使わずに現像したいと考えるのだが、それはデジタル一眼レフカメラが出始めた頃の考え方。
カメラ内でディテールを損なわないレベルで使用して現像し、jpegで保存するのが基本になっているカメラは多く、だからこそRawデータでの記録が重要となる。
 
逆に言えばRawデータからの現像はノイズとの戦いが求められ、現像ソフトに搭載されるノイズリデューサー機能やプラグインによるノイズリデューサー機能の追加は、作品の出来を大きく左右すると言っても過言ではない。
 
検証に使うデータはステージ写真と夜空の写真にした。
どちらも高感度撮影で暗部も多いので、ノイズは無加工だとかなり派手に出る。

EOS5DMarkⅣ EF100-400mm F4.5-5.6L IS Ⅱ USM
ISO1600 f/7.1 1/250s 200mm

RawデータをLightroom Classicでそのまま現像し、Photoshopでリサイズと微調整をおこなったこの1枚、リサイズによってノイズはかなり見えなくなってはいるが、フルサイズセンサーを持ってしてもISO1600の感度だと、ピクセル等倍でみるとかなりノイズがある。

Lightroom Classic(無加工)

肌も暗部もこのノイズ。
トリミングなどでピクセル等倍に近い状態での作画に近くなれば、ノイズだらけな画像となって使用が難しくなる事が理解できるだろう。
 
では、Lightroom Classicで話題となったAIによる「ディテールの強化」という機能を使ってアウトプットしてみる。

Lightroom Classic 強化(AIによるノイズ除去)

なるほど、ここまでノイズが消えるのは素晴らしい。
ビッグデータからAIを活用して最適なパラメータを与えるという事なのだろうけど、業界でも「ちょっと凄い」と言われた意味がよくわかった。
 
これなら、小さいセンサーのカメラで撮ってもかなり追い込めるはずだ。
では、今回リリースされた「DeepPRIME XD2」の効果はどうだろう?

DeepPRIME XD2

Lightroom Classicのノイズ除去よりもPureRAW4の方がコントラストが残っていて、ノイズを消す部分についてはより強く効果が出ている。これは好みの問題レベルの差なのかも知れないが、撮影時の条件でも違いが出るかも知れない。
写真全景で見てみると・・・

  加工無し            LRC強化          DeepPRIME XD2

LR強化とPR4のXD2はリサイズで甲乙つけにくいと感じたが、そうなるとPhotoLabに実装されているDeepPRIME XDとLightroom ClassicのDeepPRIME XD2の差の方が気になってくる。
 
そこでPhotoLab7でDeepPRIME XDを利用して現像し、Photoshopで調整した写真とDeepPRIME XD2でノイズ軽減してからPhotoshopで同じ様に調整した写真を見比べてみた。

 PhotoLab7+DeepPRIME XD           Lightroom Classic+DeepPRIME XD2

色の違いは、PhotoLab7で他社カメラのトーンが乗ったり弱いHDR効果が出ているからで、見比べて欲しいのはディテールの違いの方になる。
 
プレーヤーの肌の表現を見るとわかりやすいが、XDの方がコントラストが高く肌の荒れが見えすぎていて、XD2の見せるべき部分と消す部分の切り分けの上手さには追いつけていない事がわかった。
 
ただ、XDがダメだと言うワケではなく、1枚の作品をイメージ通りに仕上げていく際には、更なる調整のしやすさがあるとも感じるので、ゴールのイメージ次第になりそうだ。
 
ノイズが出やすい条件と言えば高感度と暗部。
夜景、特にイルミネーションなどには露骨にその影響が出る。

 LRC現像/加工無し                    LRC強化    

撮影データ EOS R5 RF15-35mm F2.8L IS USM
      ISO1600 f/3.5 1/40s 15mm
 
夜空にライトで線を描くイルミネーションイベントを捉えたこの1枚はノイズリデューサーを使わなければ使用が難しいほど、ノイズが乗っていた。
 
Lightroom Classicのノイズ除去の能力はDXOに追いついていると感じさせるが、DXO PhotoLab7の現像だとこの素っ気ない感じの画像が少し艶やかに仕上がるので、DXO現像の無加工版とノイズ除去版の比較をやってみた。

   PhotoLab7無加工             PhotoLab7+DeepPRIME XD

ここまでノイズが消えていれば十分だと感じるが、PureRAW4のDNG形式ファイルをPhotoLab7で現像するパターンでXDとXD2の比較も試してみた。

PhotoLab7+DeepPRIME XD           PhotoLab7+DeepPRIME XD2 

XDとXD2の差が、見事に出ている。
特に夜空の雲の出方の違いは、明らかにXD2の方が自然で美しく見えた。
ならば、Lightroom ClassicとPhotoLabの違いも検証する。

  LRC強化                 PL+DeepPRIME XD2

Lightroom Classicの画像は比較のためにPhotoLabのトーンに合わせて若干加工したが、青いサーチライトが描く線の上のノイズなどは、明らかにDeepPRIME XD2の方が綺麗に消えている事がわかった。
 
さて、こうやって色々なパターンを比べてみるとわかってくるのは、Lightroom Classicのノイズリデューサー機能もDXOのDeepPRIME XD2もノイズを消すという意味では素晴らしい効果が出ているという事。
ただし、どこまでノイズを消すか、ノイズの中に埋もれているニュアンスをどこまで再現するか、といった現像に対する考え方の違いが見えた事が面白い。
 
要するに「表現の手法として好き嫌いのレベルでチョイスするしかない」という事になるのだが、図らずもDXOのPhotoLabが作り出す画像が独特であり、写真と絵画が融合するような絵作りが見えた事は収穫だった。
 
夜景撮影やステージ撮影が多い自分としては、基本はDXOベースでの1次現像となり、ノイズリデューサーとしてDeepPRIME XD2の能力を借りたい時に、PureRAW4をスタンドアロンで使用してRawデータをDNG形式ファイルに起こし、DXOで1次現像を実施する事になるのだろう。
 
ノイズもまた「写真の味」と考える人にはあまり興味が湧かない検証だと思うけど、今は後加工で様々なタイプの写真を作れる時代。ノイズは綺麗に除去した上でフィルムトーンをかけて粒子を付加する等の加工を加えるって考え方もあるのではないだろうか。
 
PureRAW4を導入するか、PhotoLab7の次のバージョンにDeepPRIME XD2が乗るのを待つのかは悩ましいが、夜空の写真での差は思ってた以上にあったので導入に気持ちは傾いている。

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