Kentax

科学と芸術と宗教と哲学と、いろんな視点を織り交ぜながら、僕らの世の中がどうなっているか…

Kentax

科学と芸術と宗教と哲学と、いろんな視点を織り交ぜながら、僕らの世の中がどうなっているかを考えて、できれば生きやすくしていきたい。 ヘッダー写真は西表島

最近の記事

過去の哲学者に学ぶいまの生き方 デカルト

ルネ・デカルト(1596年-1650年)といえば「我思う、ゆえに我あり」という名言でしょう。デカルトは疑う人でした。目で見たことでさえも(悪魔がそういう錯覚を起こさせているのかもしれない)と疑います。そうして疑って疑って疑いつくしても、確実なこと、それは「こうして疑っている自分は存在する」ということだったのです。 デカルトは何がしたかったのでしょうか?経験論盛んだった哲学界隈で、それまでの「経験できることから世界を理解していくんだ!」という風潮に待ったをかけたのです。「その

    • ヴァザーリは実は超重要人物なのに

      ジョルジョ・ヴァザーリ(1511-1574年)をご存じでしょうか?イタリアのルネサンスからマニエリスム期に活躍した、画家・建築家です。この人の美術史における功績は大きいのに、日本では一般にはあまり知られていない人なので、紹介します。 その1:ミケランジェロの弟子で、ミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチの尻拭いをした。 イタリアフィレンツェのヴェッキオ宮殿にある五百人広間(本投稿カバー写真)は500人収容の広間であり1504年にレオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロが

      • 過去の哲学者に学ぶいまの生き方    トマス・ホッブズ

        トマス・ホッブズ(1588-1679)はイギリスの哲学者で、政治哲学の分野において特に重要な人物です。彼は自然状態における人間の生活を「孤独で、貧しく、卑劣で、獣のようで、そして短い」と表現し、人間は生存と秩序を確保するために社会契約を結ぶ必要があると主張しました。(社会契約説) ホッブズがこう考えたのは清教徒革命などイギリス社会の混乱中に人々が利己的に振る舞う様を見たからであろうか。またホッブスは聖職者の家庭に生まれているので、人間は生まれながらにして罪を負っているという

        • ポロックの見た世界

          扉の絵はジャクソン・ポロック(Jackson Pollock, 1912年1月28日 - 1956年8月11日)の"秋のリズム“という作品です。 この絵はどうやって書いたかと言うと、絵具をたらしたり、筆を降って塗料をキャンバスにとばしたりして描いています。 この絵は抽象的表現主義の一つと呼ばれる現代美術の名作ですが、この絵を理解するのは絵画素人には本当に難しい。いろんな評論家がいろんな比喩を用いてこの絵を解説しているのを読んでも逆にわからない。この絵のどこが名作なのか?

        過去の哲学者に学ぶいまの生き方 デカルト

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。フランシス・ベーコン

          もちろん燻製の豚肉ではありません フランシス・ベーコン(1561年-1626年)は、イギリスの哲学者、政治家、法律家であり、経験主義や科学的方法論の先駆者として広く認識されています。「ノヴム・オルガヌム」「ニューアトランティス」などの著書がある彼の主な主張は次のようなものです ◾️帰納法の提唱:観察と実験に基づく知識の獲得を重視し、帰納法の重要性を強調。彼は、特定の事例から一般的な法則や原則を導き出す帰納的推論が、科学的知識を構築するうえで不可欠であると考えました。

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。フランシス・ベーコン

          ポール・セザンヌの何がすごいのか?

          ポール・セザンヌ(1839-1906)は、フランスのポスト印象派の画家で、 近代美術の発展に画期的に貢献したことで知られています。ここでは、彼が偉大な芸術家であると言われる理由をいくつか紹介します セザンヌは、印象派からキュビスムへの移行に道を開いたとされており、ュビスムをはじめとする20世紀の美術に多大な影響を与えたことから、「近代絵画の父」とも言われます。 彼は、単純化された形、平坦化された視点、鮮やかな色彩で、世界を新しくユニークな方法で表現しようとしました。つま

          ポール・セザンヌの何がすごいのか?

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。モンテーニュ

          ミシェル・ド・モンテーニュ(Michel de Montaigne、1533年 - 1592年)はフランスの哲学者で、ルネサンス後期のヨーロッパにおいて重要な思想家の一人です。彼は「エセー(Essais)」の著者として最もよく知られており、この作品は自己省察と個人的な思索を通じて多様な主題を探求することで知られています。 ちなみにこの「エセー」は随筆という意味の「エッセイ」の語源になったものです。 そして、「エセー」のから読み取れる主な主張(エッセイなので主張っぽくは書いて

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。モンテーニュ

          奥村土牛は日本画の印象主義

          奥村土牛という画家が好きだ。美術に興味を持ち始めた頃、恵比寿駅から程近い山種美術館で奥村土牛展(山種美術館は奥村土牛の作品を多数保有している)を見て、魅了されてしまった。写実のようだが、明らかに画家のフィルターでぼやけている。淡く柔らかい筆致。日本画のぼかしの技法とも違う。この「醍醐」の桜もそうだ。 【奥村土牛】(おくむらとぎゅう) 明治22-平成2(1889-1990)101才没 「土牛」の号は父の付けたもので、漢詩の詩句「土牛石田を耕す」から採られたもの。 土だらけの牛

          奥村土牛は日本画の印象主義

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。ニコロ・マキャベリ

          ニコロ・マキャベリは、イタリアのルネサンス期の政治思想家で、著書『君主論』において、政治の実践的な側面とリアリズムに焦点を当てた主張を展開しました。マキャベリの主な主張は、政治的権力の獲得と維持には道徳的な考慮よりも実用性と効率性が優先されるべきであるというものです。彼は、「目的が手段を正当化する」という考えを示唆し、支配者は安定性と秩序を維持するために必要であれば残酷な行為も辞さないというもので、この考えは「マキャベリズム」と呼ばれます。 なぜ彼はこんな激しい(一見現代人

          過去の哲学者に学ぶ現代(いま)の生き方。ニコロ・マキャベリ

          ルネサンスは1516年におわた?

          美術などで語られるルネサンス、一般的には14世紀から宗教改革後のトリエント公会議(1545年-1563年)まで続いたといわれているらしいが(wiki)、実質1516年に終わってんじゃないの?と思うのです。 そもそもルネサンスとは? 「再生」「復活」などを意味するフランス語であり、一義的には古典古代(ギリシア、ローマ)の文化を復興しようとする文化運動。(wikiより) ルネサンス以前はキリスト教が絶対的な権力というか統制力というか、社会の規範になっていたんだけれど、キリスト

          ルネサンスは1516年におわた?

          写真の登場が美術に与えた影響

          以前「美術界における写真の衝撃」ということで写真が登場することにより、見たまんまを描く必要性(需要)がなくなり、さまざまな表現手段が生まれたというような話をしました 今回、自分の頭の整理のために1750年〜1940年ぐらいの美術の潮流と写真の歴史、ヨーロッパの歴史を外観する図を作ってみました。 やっぱり銀塩写真が登場してから肖像画の需要は激減(しかも革命がおきてパトロン貴族がいなくなってきた)。それでも屋外の風景や動きのあるものは当時の写真には向かず、また初期はカラー印刷の

          写真の登場が美術に与えた影響

          ゴッホの古靴

          この絵は1886年に描かれた 「ひまわり」の連作や「星月夜」などの有名な絵が描かれる前、アルルに行く前、パリ時代に描かれた絵です ゴッホは「人のためになりたい」と強く願う、ちょっと困った性格の持ち主で、過酷な炭鉱労働で働く人のためになろうと慈善活動をしていた時に履いていた靴がモチーフだという。 牧師になろうと神学校を受験するけれど失敗し、別の福音伝道学校で学ぶために購入した靴を(福音伝道学校もドロップアウトし)1878年の12月に勝手に(公式的な任命がなく)ベルギー南部の

          ゴッホの古靴

          風神雷神図屏風の系譜

          「琳派」と呼ばれる絵師の系譜がありますが、すごいのは師弟関係でないのに、先代の作品を見て感化され、模写を通じて技術や様式を真似ていっていたということ。(例外的に鈴木其一は酒井抱一の弟子) なので同じ「風神雷神図」という画題で歴代の琳派絵師の作品を比べてみようと思います まずは俵屋宗達(江戸初期に活躍。生没年不明) 本阿弥光悦とともに琳派の祖の言われます。神なのに人間的なユーモラスな表情が特徴的で、金地の空間をとった構図はそれまでの大和絵にない大胆なものでした。 またこの絵

          風神雷神図屏風の系譜

          ゴシックとゴスロリ

          美術好きにとって「ゴシック」といったら 壮麗なゴシック建築とか 大きな協会の広い窓にはめこまれたステンドグラス を思い浮かべます。 絵画で言うとチマブーエの「サンタ・トリニタの聖母」にあるように、それまでのガチ平面的なイコン何と比べると、やや立体感が出てきて、やや遠近法的なできてきて、やや人の表情が描かれることだ。色使いは金を始め多彩で煌びやかな感じがします。 ところでこれは「ゴスロリファッション」というもの。 黒・白を基調としたモノトーンで、フリルを多用して「ロリー

          ゴシックとゴスロリ

          シャルダンが好き

          もちろん芳香剤の話ではありません(笑 ジャン・シメオン・シャルダン Jean-Baptiste-Simeon Chardin(1699-1779)という画家、フランスのロココ様式時代の画家だけれど、他のロココ画家とは一線を画し、狂乱の貴族生活を描くのではなく、静物画や市民の生活を描いた。その画面からは時が止まったような静謐な印象を受けます。風俗画で人が描かれているのだけれど、時が止まったような感じがする、不思議な感じがします。 静かな感じが、今の生活の忙しさ、時が早く流れる

          シャルダンが好き

          視線の変化に見る母子像の変化

          絵画で「母子像」と言ったら、聖母マリアと幼な子イエスを描く「聖母子像」で、ルネッサンスの巨匠ラファエロ・サンティの作品もよく知られていますね。 例えば(ラファエロは聖母子像をいくつも描いています)このカウパーの小聖母(1505年)では田園風景をバックにたたずむ聖母子が描かれ、清楚に微笑むマリアは柔らかな肌と伏し目視線は処女性を、幼子を支える優美な指先は母性と、女性に求められる2つの性質を表します。マリアの視線の先はイエスにはなく、子を見守る母の視線ではありません。むしろラフ

          視線の変化に見る母子像の変化