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kasumiと2020の冬〜2021の頭

・おいケント!!!

本当にこれは何も言い逃れできないんですが、
なんか色々あってOrca-Lucaシーズンe.p.最後の一枚「kasumi」についてのnoteを全く書けないでいました…あっ久しぶりですケントです。

2021に入りもうすっかり8月、夏のど真ん中まで世界は突き進んでしまいましたねー
五輪も始まり、しかしそれと相反するかのようにコロナ禍を含めた我々バンドマン界隈の状況は逼迫を極め、
各々の音楽人としての在り方が問われてきている昨今ですが
まあリリースしてから4ヶ月くらいは余裕で経ってしまったのにも関わらず
未だに結構な反響を貰い続けているe.p.が、これから話す「kasumi」という作品です。
反響、がある、というのは、それだけこちら側も攻めっ気を出した、ということでもあります。
時は経てしまいましたが、今一度昨年の冬から年越えて春あたりまでのマインドを思い返しつつ、
Orca-Lucaの現状最新作で、2020シーズンe.p.を締めくくる最後の作品「kasumi」を一緒に紐解いていきましょう


・霞

我らがトラックメイカー後藤マサヒロ作曲の、アルバム開幕を飾るインスト曲です。
「いや、ホンマに何も思いつかないっすね…」ってぼやきながら、冬の静けさ全開のチルビートを持ってきてくれました、感謝。
ビートの裏で雪をサクサクと踏み歩く音が聞こえてるのがミソです。
個人的には4枚のepの中で最もlo-fi hip hopっぽい、冷たいトラックになってくれたんじゃないかなって思ってます。
今回の作品はこういう“温度”のイメージをとにかく重要視してエンジニアのgaze//he's me(以降ゲーズ君)と作りこんでいきました。

アルバム世界の幕開けから、最後のBaby Songに至るまでの、体感温度の変化を音楽で表していく
霞はその最高の導入になりました。

・NEW JUNCTION YOKOHAMA

今作の実験的アプローチその1です。
日本のバンドは本当に「東京」というワードの入る曲を書くことが多くて
それは都会に対する憧れだったり、忘れたい過去の事だったり、逆に忘れたくない思い出だったり、自分の戦っている今のことだったり
とにかく色んな情景をぶち込んで「東京」という曲にするみたいなケースが本当にビビる程あるのですが、
そこから「横浜って場所を歌ってる曲ってマジで無いな?」という発想にたどり着き、
僕の地元であり今も暮らしている横浜という地名を冠した曲を作りたいな、というアイデアの受け皿が、この曲の始まりです。

おこがましいけれども、ケントカキツバタという人間の作る音楽の魅力は「メロディ」にあると思っていて、僕は仮に自分をジャンル分けすると「メロディの人」とすると思うのですが、そんな人間が唯一の武器のメロディを捨て去って純粋な日本の言葉(しかもこれでもかと2020~2021のリアルを凝縮させた言葉)だけで音楽を作ったらどうなってしまうんだろう?という不安に挑戦した一曲でもあります。だからなのか凄く思い入れが強いです。

僕にとっては、生きてきて出会ったすべての音楽やバンド、人々、仲間、思い出、ありとあらゆるモノが交わる交差点がこの横浜にあって、それはこれからも同じなんですよね。
今後どこに旅をしても、色んな場所に同じような交差点ができても、変わらないんだと思います。
そんな感じです。言いたいことは全部曲の中で言ってるので、曲聞いてください。

・トワイライト・ナイトウォーク

いかにも冬らしい、切なさ全開に振り切った曲が欲しくて、
なんかそんな感じの曲が出来るきっかけにならないかなーと短めのギターリフを数個作って録音してたのですが、その中の一個が見事採用され、一曲のサイズにまで膨れ上がり完成しました。イントロとか随所でなってるギターフレーズがそれです。
最初のデモは弾き語りだったかな、それをスタジオに持って行ってメンバーとドラムやベースを考えてくという、theバンドな制作行程でしたね。
ドラム録りの時に前ちゃんがこの曲のテイクをほぼ一発で録り切った時に、コンソールルームで男たちの歓声が上がっていたのを思い出します。

時と環境が違っていたら、もしかすると別の道を辿っていたかもしれないなんて、往々にしてよくあることだと思う。人生の中で分かれ道や分岐点なんてものはたくさんやってくる。
そういったifの世界を今はせめて勘違いさせてくれ…的な…パラレルワールドに思いを馳せる的な…うわー書いてて切なくなるなこれ
にしてもエモすぎるなこの曲、当時の僕はどんな感情でこの歌詞書いてたんだろうか。ぶっちゃけトワイライト・ナイトウォークってキーワードが出来上がった時点でこの曲の8割くらいは出来上がってましたね。

・masshiro

実験的アプローチその2。

EDMのアプローチをOrca-Lucaに落とし込んでみたい、という発想から曲の外殻アレンジが先に出来て、そこにメロディや歌詞を乗せていくというような順番での制作でした。
最初は8ビートにシンプルで普遍的なメロディでしれっと騙しておいて、徐々にEDM的に落ち着いてからのビルドアップ(リズムがだんだん倍々になっていくやつ)で極端に盛り上げていき、爆発寸前で無音ブレイクが入ってからのドロップ(EDMでいうサビ)はオルタナ全開の爆音歪みギターがくる、
みたいな無茶苦茶かっこいい事をメンバー3人できゃーきゃー言いながらやりました。
そしてこの手の曲はエンジニアのゲーズ君がやはり黙ってませんでした。
およそ100トラック分くらいの、皆様の考える想像以上にたくさんの音をブチ込み、様々なアイデアで加工してくれたおかげで、masshiroの白さと寒さをより際立たせたミックスデザインが出来上がりました、最強をありがとう

状況が許すなら、本当はみんなでぴょんぴょん跳びながらライブでぶち上がりたい一曲でしたね。
あなたに僕の心の真っ白なとこだけあげるよ、って、なんて切実である意味残酷なアイラブユーなんだろうか。

・Baby Song

Orca-Luca結成前から存在していた曲で、ケントカキツバタの弾き語りとかでこの曲はよく歌っていました。
前述した、「アルバム全体の体感温度」において、一曲目の霞が一番寒い気温だとすると、この曲が一番あったかい曲になります。
なので、ドラムセットもヴィンテージのすごい年代物セットを使わせていただき、アコギをこれでもかとばかりに入れました。ミックスの質感もかなり他の曲と変えてるかなー。
というかこの曲に関しては歌も楽器も全部の素材の音がすでにいいクオリティで録れてた奇跡の一曲なので実際そんなにいじってもらってないはずです。
kasumiのギターやベースは全部リアンプ(一度録音した音のデータを、別のスタジオとかにある屈強な機材を通して音を出しなおし、それをまた録音する技術のこと)の音素材を使ってるのですが、この曲だけギターアンプ変えてもらいましたね。
先ほど、「一番あったかい曲」と言いましたが、その温度は“人肌”です。

まともにラブソングの一つもないシンガーソングライターだった僕が、意を決してちゃんとラブソングに向き合って書いた曲です。この4枚の季節の物語を締めくくるのはこの曲しかないと前から思っていました。

・総括

もともと、このシーズンEP計画は、それぞれの作品の合間でイベントを企画したり、レコ発したり、と「主催のライブイベントも定期的に行っていく」というのがポイントで進んでいました。
それがコロナ禍の状況に差し掛かってきた中で、おそらくこれは満足いく形でイベントは行えないと早々に舵を切り、この4枚の作品を作りきることに注力する、という方向転換をしたことで、Orca-Lucaというバンドのモチベーションは折れずに保てたのかもしれません。
誰かを生かしていく音楽を、と念じながら作り続けてきた歌の数々が、気づけば自分たちを生かしてくれていた事に気づけたのが、この4枚のEPを完走した後の正直な気持ちです。
この一年、今までの人生のなかで多分一番曲書いた気がするし、(Orca-Luca以外のもあったし)なんだかんだ忙殺されていた1年だったけど、おかげでワンマンがっつりやれるくらいに曲は増えたし、バンドとしての結束も過去1に高い状態だし、一つの山を超えた後のような雰囲気がバンドの中にあります。
今もちょこちょこ機会をいただいてライブは再開できて、お客さんも不安な中色んな気持ちを抱えて、それでもライブハウスに足を運んでくれているので、今の最高に心が密になってるOrca-Lucaをみんなにめっちゃ見て欲しいし、聴いて欲しい気持ちでいっぱいです。


春疾風、夏芭蕉、秋茜、冬霞

Orca-Lucaが生きた2020年5月〜2021年4月までの結晶を、どうかよろしくお願いします。

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