COVID-19情報:2023.10.06

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、LANCET系列より3編です。
1編目は、パンデミックの初期におけるSARS-CoV-2の既感染とCOVID-19に対するハイブリッド免疫の防御効果を、3~6ヵ月間の追跡調査によって明らかにし、ワクチンによる防御と比較した研究です。パンデミックの初期におけるSARS-CoV-2の既感染とCOVID-19に対するハイブリッド免疫の防御効果を、3~6ヵ月間の追跡調査によって明らかにし、ワクチンによる防御と比較した研究です。
2編目は、COVID-19ワクチンmRNAが母親のワクチン接種後に母乳中で検出可能かどうかを評価し、その潜在的な翻訳活性を決定した研究です。今回の知見は、COVID-19ワクチンのmRNAが注射部位に限定されず、全身に広がり、BMのEVにパッケージされることを示しています。しかしながら、微量しか存在せず、明らかな翻訳活性がないことから、ワクチン接種後、特にワクチン接種48時間後の授乳は安全であると考えられます。
3編目は、COVID-19の2つの主要な経口抗ウイルス治療薬であるモルヌピラビルとリトナビル添加ニルマトルビルに関して抗ウイルス効果の指標としてウイルスクリアランス率を用いて異なる抗ウイルス治療を比較することを目的としたプラットフォーム試験の報告です。モルヌピラビルおよびリトナビルブーストニルマトルビルは、COVID-19患者の口腔咽頭SARS-CoV-2ウイルスクリアランスを促進しましたが、リトナビルブーストニルマトルビルの抗ウイルス効果は大幅に大きいという結果でした。

報道に関しては、「新型コロナとインフルエンザのワクチン 接種に前向きな人の割合は?」、「新たな感染症へ初動対応 テレワークや時差出勤を活用 政府が方針案」が必読です。また、インフルとコロナ混合ワクチンも治験結果は好調なようです。
Long COVIDとしてのブレインフォグ等の治療への取り組みも興味のあるところです。

高橋謙造

1)論文関連   
Risk of COVID-19 after natural infection or vaccination

https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(23)00365-1/fulltext

*パンデミックの初期におけるSARS-CoV-2の既感染とCOVID-19に対するハイブリッド免疫の防御効果を、3~6ヵ月間の追跡調査によって明らかにし、ワクチンによる防御と比較した研究です。背景ですが、ワクチンはCOVID-19に対する有用性を確立していますが、第3相有効性試験では一般に、過去の感染やハイブリッド免疫(過去の感染+ワクチン接種)による防御を包括的に評価していませんでした。米国政府が支援する統一ワクチン試験から得られた個々の患者データは、この問題に取り組むための前例のないサンプル集団を提供しています。
Moderna社、AstraZeneca社、Janssen社、Novavax社のCOVID-19ワクチン臨床試験の事後プロトコル交差解析において、登録時および治療時の既感染状態に基づき、参加者を4群に割り付けました:既感染なし/プラセボ、既感染あり/プラセボ、既感染なし/ワクチン、既感染あり/ワクチン。主要アウトカムは、RT-PCRにより確認されたCOVID-19で、試験最終注射後7~15日以上(当初のプロトコールによる)でした。粗効果指標および調整有効性指標を算出した。
感染歴のある参加者/プラセボ参加者は、感染歴のない参加者/プラセボ参加者と比較して、将来のCOVID-19のリスクが92%減少しました(全体のハザード比[HR]比:0.08;95%CI:0.05-0.13)。ヤンセンの単回投与参加者では、ハイブリッド免疫によりワクチン単独よりも高い予防効果が得られました(HR:0.03;95%CI:0.01-0.10)。他の試験では、ハイブリッド免疫とワクチン単独を比較する統計的推論を行うには、感染が少なすぎました。ワクチン接種、既往感染、ハイブリッド免疫はいずれも重症化に対してほぼ完全な予防効果を示しました。
先行感染、いずれかのハイブリッド免疫、および2回接種のワクチン接種はすべて、デルタ株流行初期を通じて症候性COVID-19および重症COVID-19に対する実質的な防御を提供しました。したがって、自然感染の代用として、ワクチン接種は依然として最も安全な予防法であるとのことです。

Biodistribution of mRNA COVID-19 vaccines in human breast milk

https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(23)00366-3/fulltext

*COVID-19ワクチンmRNAが母親のワクチン接種後に母乳中で検出可能かどうかを評価し、その潜在的な翻訳活性を決定した研究です。 背景としては、COVID-19 mRNAワクチンは、SARS-CoV-2感染との闘いにおいて重要な役割を果たしていますが、授乳中の女性はほとんどのワクチンの臨床試験から除外されている。そのため、授乳期におけるワクチンmRNAの全身分布や、ヒト母乳(BM; Breast Milk)中にmRNAが排泄されるかどうかに関する研究は限られています
COVID-19 mRNAワクチン接種前後に、授乳中の健康な出産後の女性13人からBMサンプルを採取し、全BMおよびBM細胞外小胞(EV: extracellular vesicles)中のワクチンmRNAをDroplet Digital PCRを用いて定量的に測定し、その完全性と翻訳活性を評価しました。
ワクチン接種を受けた13人の授乳婦(20回)のうち、接種後45時間までの10回で微量のmRNAが検出されました。mRNAはBMのEVに集中していましたが、これらのEVはSARS-COV-2スパイクタンパク質を発現せず、HT-29細胞株での発現も誘導しなませんでした。連鎖解析から、ワクチンmRNAの完全性はBMでは12-25%に減少していることが示唆されました。
今回の知見は、COVID-19ワクチンのmRNAが注射部位に限定されず、全身に広がり、BMのEVにパッケージされることを示しています。しかしながら、微量しか存在せず、明らかな翻訳活性がないことから、ワクチン接種後、特にワクチン接種48時間後の授乳は安全であると考えられます。とはいえ、6ヵ月未満の乳児に免疫反応を引き起こすmRNAワクチンの最小用量は不明であるため、母乳育児の母親と医療従事者との対話では、母親によるワクチン接種後最初の2日間における授乳の利益/リスクについて検討する必要がある。

Antiviral efficacy of molnupiravir versus ritonavir-boosted nirmatrelvir in patients with early symptomatic COVID-19 (PLATCOV): an open-label, phase 2, randomised, controlled, adaptive trial

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(23)00493-0/fulltext

*COVID-19の2つの主要な経口抗ウイルス治療薬であるモルヌピラビルとリトナビル添加ニルマトルビルに関して抗ウイルス効果の指標としてウイルスクリアランス率を用いて異なる抗ウイルス治療を比較することを目的としたプラットフォーム試験の報告です。
PLATCOVは、タイ、ブラジル、パキスタン、ラオスで実施されている非盲検、多施設、第2相、無作為化、対照、適応薬理測定プラットフォーム試験であす。ここで報告する試験の一部は、タイ、バンコクのマヒドン大学熱帯医学部熱帯病病院で実施されました。18〜50歳のCOVID-19の初期症状(症状発現4日未満)を有する低リスクの成人患者を募集し、対象患者は、集中管理されたウェブアプリを用いたブロック無作為化により、モルヌピラビル、リトナビルブーストニルマトレルビル、カシリビマブ-イムデビマブ、チキサゲビマブ-チルガビマブ、ファビピラビル、フルオキセチン、試験薬なしの7つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられました。試験薬無投与群は常に患者の最低20%の割合で構成され、無作為化比率は有効治療群で統一されました。モルヌピラビル群、リトナビルブーストニルマトレルビル群、試験薬無投与群の同時無作為化の結果が報告されています。
主要評価項目は、2日以上の追跡期間がある患者と定義した修正intention-to-treat集団で評価した口腔咽頭ウイルスクリアランス率でした。安全性は、少なくとも1回の薬剤投与を受けたすべての参加者を対象に評価しました。ウイルスクリアランス率は、1週間にわたって毎日採取された標準化された口腔咽頭スワブ溶出液の対数10ウイルス密度にベイズ階層線形モデルを当てはめ、導き出しました(18回測定)。ウイルスクリアランスが、薬剤を使用しない場合と比較して20%以上促進される確率が0~9以上の治療群は、プラットフォームで現在最も有効な薬剤と比較した非劣性比較(非劣性マージン10%)に入りました。
2022年6月6日から2023年2月23日の間に、タイの209人の患者が登録され、モルヌピラビル(n=65)、リトナビルブーストニルマトルビル(n=59)、試験薬なし(n=85)に無作為に同時割り付けされました。129例(62%)が女性、80例(38%)が男性でした。モルヌピラビル投与群では37%(95%信頼区間16-65)、ニルマトルビル投与群では84%(同54-119)のウイルス除去率が得られました。非劣性比較では、ウイルスクリアランスは、モルヌピラビルのほうがリトナビルブーストのニルマトレルビルよりも25%(10~38)遅い結果でした。モルヌピラビルは、リトナビルブーストのニルマトレルビルと比較して、事前に規定された劣性マージン10%に達した時点で試験プラットフォームから除外されました。ウイルスクリアランス半減期の推定中央値は、リトナビルブーストのニルマトルビルで8.5時間(IQR 6.7-10.1)、モルヌピラビルで11.6時間(8.6-15.4)、試験薬なしで15.5時間(11.9-21.2)でした。ウイルスのリバウンドは、試験薬なし群(84例中1例[1%];p=0.018)またはモルヌピラビル群(65例中1例[2%];p=0.051)と比較して、ニルマトルビル投与群(58例中6例[10%])ではより頻繁に発生しました。モルヌピラビル投与後の持続感染では、ニルマトレルビル投与後(3例中0例)または試験薬非投与後(18例中0例)と比較して、ウイルス変異が多いという結果でした(9例中3例で、7日以上経過した時点で採取した検体で、ベースライン時と比較して一塩基多型の数が増加していました)。報告されたいずれの治療群においても、グレード3以上の有害事象および重篤な有害事象は認められませんでした。
モルヌピラビルおよびリトナビルブーストニルマトルビルは、COVID-19患者の口腔咽頭SARS-CoV-2ウイルスクリアランスを促進しましたが、リトナビルブーストニルマトルビルの抗ウイルス効果は大幅に大きいという結果でした。口腔咽頭ウイルスクリアランス速度の測定は、COVID-19患者における抗ウイルス薬の評価と比較に、 迅速で忍容性の高いアプローチを提供します。他の急性ウイルス性呼吸器感染症でも評価すべきであるとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内    
新型コロナとインフルエンザのワクチン 接種に前向きな人の割合は?
https://www.kyodo.co.jp/humhum/2023-10-06_3805131/
*「社会調査研究センター(SSRC・さいたま市)が10月1日に実施した世論調査によると、新型コロナウイルスワクチンの秋の無料接種について「受けようと思っている」と「すでに接種を受けた」を合わせた接種に前向きな人は全体の45%と半数に満たなかった。回答者は1505人。
 一方、インフルエンザのワクチン接種についても同様の傾向がみられ、接種に前向きな人の割合は47%にとどまっている。いずれのワクチンでも50代以上で接種に前向きになる傾向が強い。40代以下では新型コロナよりインフルエンザのワクチン接種に前向きな人が多かった。」

海外     
モデルナ、インフルとコロナ混合ワクチン 治験で好結果
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04DSF0U3A001C2000000/?n_cid=kobetsu
*米モデルナは4日、同社が開発する新型コロナウイルスとインフルエンザの混合ワクチンの初期・中期臨床試験(治験)で、安全性と効果が確認できたとする中間報告を発表した。年内にも最終段階の治験を始め、2025年の承認取得を目指す。利便性が高い混合ワクチンをいち早く実用化し需要を取り込む。
この治験は50歳以上が対象。50~64歳と65~79歳の治験グループに、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を使ったモデルナのコロナ・インフル混合ワクチン候補「mRNA-1083」と既存のインフルワクチンをそれぞれ接種し、免疫反応などを比べた。

武田薬品のワクチン推奨 デング熱で6~16歳に―WHO
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023100300129&g=cov
*「世界保健機関(WHO)は2日、蚊を媒介とする感染症、デング熱のワクチンとして、武田薬品工業が開発した「QDENGA(キューデンガ)」を推奨すると発表した。欧州連合(EU)やインドネシア、ブラジルなどでは既に承認済み。」
*コロナに隠れていますが、デングワクチンの開発は世界的快挙です。

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID
新型コロナ後遺症、都民の相談再び増加 「5類」移行後
https://www.sankei.com/article/20231005-GL4X3NYVPZO4LH5NRQ42ZKUCZI/
*「都によると、令和4年5月から今年8月までに寄せられた相談は計7632件に上る。1人の相談者が複数の症状を訴えることも少なくなく、中でも多いのは「倦怠(けんたい)感」(2704件)や「せき」(2211件)「発熱・微熱」(1170件)だ。「嗅覚障害」(863件)や「味覚障害」(792件)「呼吸困難感」(750件)などに悩まされる人も多い。
相談者の年代も10歳未満から70代以上までさまざまで、40~50代が3割を超す一方、10歳未満~20代も2割に上る。新型コロナ感染時の症状は「中等症以上」が2%程度にとどまり、「軽症以下」が約98%を占める。
後遺症は症状が数カ月以上の長期にわたったり、改善した後にぶり返したりするケースもあるとされ、休職せざるを得なくなる人もいる。後遺症に悩まされる児童・生徒の中には、学校に通えなくなるケースもあるという。」

頭に霧がかかったよう…「ブレインフォグ」などコロナ後遺症の治療法を臨床研究 参加者を募集
https://www.sankei.com/article/20231005-5DB463XRCNCM7L5SBS24CZJCNE/
*「頭の中に霧がかかったように記憶力や集中力が低下する「ブレインフォグ」など、新型コロナウイルス感染の後遺症を対象にした治療法を確立しようと、東京都内や川崎市を拠点に鬱病などメンタルヘルスの治療を行っている「東京横浜TMSクリニック」(大澤亮太理事長)が、9月からプロジェクトを本格的にスタートさせた。鬱病の治療で利用されている「反復経頭蓋磁気刺激(TMS)療法」を活用する形で臨床研究を行う。同クリニックは新型コロナの後遺症に悩む人を対象に参加を呼びかけている。」

国内    
新型コロナ感染者数が4週連続で減少 厚労省「ピーク越えた」
https://www.sankei.com/article/20231006-ZYZQD3J4DVNX3NMD7F2Y6OJCYU/  
*コロナ定点、4週連続減 新たな派生型主流に―厚労省
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023100600927&g=cov  

インフル感染者数がコロナを上回る 首都圏や九州・沖縄で流行
https://www.sankei.com/article/20231006-C55D6NP5YRPEVOUMQYB4J32NVY/

海外       

4)対策関連
国内      
新たな感染症へ初動対応 テレワークや時差出勤を活用 政府が方針案
https://digital.asahi.com/articles/ASRB46TLZRB4UTFL00M.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「政府の新型インフルエンザ等対策推進会議(議長・五十嵐隆国立成育医療研究センター理事長)が4日開かれ、新たな感染症が海外で発生した際の初動対応の方針が示された。国内での発生に備え、テレワークや時差出勤、出入国時の検疫、検査能力の確保など、新型コロナウイルスでの経験をふまえた対応を速やかに実施できるように各省庁の役割を明確化した。」

海外       

5)社会・経済関連
コロナワクチン巡る県議会動画、「ユーチューブ」削除…「接種する方が余計に感染」県議発言
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231004-OYT1T50255/
*「動画は、広耕太郎県議(新政みえ)が2日に行った一般質問。学識者の意見だとして「欧米ではワクチンを接種する方が余計に感染するのが常識」などと発言し、ワクチンへの疑問などを述べた。
動画が削除されていることに議会事務局の職員が3日気づき、運営側に審査を申し立てたが、却下された。運営側からは、どの発言を問題視したかの具体的な説明はなかったという。」

性風俗業は対象外の持続化給付金、国に450万円の支払い求めた運営会社が2審も敗訴
https://www.yomiuri.co.jp/national/20231006-OYT1T50105/     


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