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何者かになりたかった私へ

上司が読んでいると聞いて、週末「嫌われる勇気」を読んだ。

対話形式で進んでいくこの本の冒頭には、「今の自分が嫌いです」という青年が出てくる。青年は幸せを実感できず、明るい友人のような人間に生まれ変わりたいと考えている。哲人は「世界がどうあるかではなく、世界をどう見るかは自分で決められる」「暗いサングラスを外して、世界を直視する“勇気”があるかどうかで人は変わることができる」と話す。

読んでいておや?と思った。この青年、昔の私と同じことを考えている。

誰よりも「何者かになりたい気持ち」が強くて、自分は特別な存在なのだと信じたかった。そんな私は、今は自分で自分を認めて心地よく生きている。なぜそうなれたのか、振り返って記録しておこうと思う。

・周囲の人がやたら輝いて見える
・「あの人はいいな」と羨ましくなることがよくある
・漠然と自分の将来に不安がある

そんな方に読んでもらえたら嬉しい。

「誰かと同じ」はつまらないのか?

特別な存在になりたいと思うようになったのは、「人と同じことするのはつまらない」という母のスタイルの影響かもしれない。彼女は「みんなあれを好きだと言うけど、私には良さがわからない」とよく言っていたような記憶がある。

あとは、絵を描く学校に通っている中で、本当に生まれ持った才能がある人がたくさんいたことも大きいと思う。

(だから私は左ききのエレンの主人公の光一に超共感するし、「天才になれなかったすべての人へ」というコピーがめっちゃ刺さった。この診断でも光一タイプだった。)

今考えると、本当の意味でつまらないのは「人と同じこと」ではなく「自分の意思がないこと」だと分かる。みんな自分の意思で道を選択しているだけ。そこに優劣は本来つけるべきでない。私がこれに気づいたのは24歳くらいのことである。

虎の威を借りてもムダ

人と同じじゃだめだし、私はもっと面白い人間のはずだ。と信じていた頃、自分の立場を確立するために、常にマイノリティの方に立つことが多かった。

・みんなが好きなものは好きと言わない、みない
・流行りにのらずサブカルチャーに傾倒する
・大衆的なものはくだらないとバカにする

好きな音楽、文学、芸術、映画、洋服、香水。なんでもみんなと被らないところを選び、そこで自分のアイデンティティを作り上げていった。
「個性的」「世界観がある」が誉め言葉だった。

この頃に見つけたものは、もちろん自分の意思で選び取ったものがほとんどだが、中には「変わった人、特別な人だと思われそうだから」という理由だけで支持するポーズを取っていたものもあったと思う。

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左:20歳くらいの頃のmixiのコミュニティ一覧。変わった女になりたいあまりに田山花袋コミュに入っていた(高校で『蒲団』を読んだだけ笑)。
右:背伸びしたい女子が通る椎名林檎さんをいつも聴いていた。今も好き。

特別な何者かになりたい欲求を補うために、異性にも影響力やステイタスを求めていた。でも、どんなに近づいたところで他人の称賛や実績は他人のものでしかなく、結局それでは気持ちは満たされなかった。
うまくいかない対人関係から、自分のマイナスな欲求を埋めるために他人に依存しても、何も変わらない。むしろ消耗するだけなのだと学んだ。

「嫌われる勇気」においては、劣等感を受け入れられない人が発展する特殊な心理状態を「優越コンプレックス」と表現していて、めちゃくちゃ刺さった。

劣等感が強いからこそ、自慢する。自らが優れていることを、ことさら誇示しようとする。そうでもしないと、周囲の誰ひとりとして「こんな自分」を認めてくれないと怖れている。これは完全な優劣コンプレックスです。

「嫌われる勇気」第二夜
自慢する人は、劣等感を感じている より引用

何者かは隠れて努力する

特別な人のそばにいても自分は何者にもなれない。そう学んだ私だったが、キラキラした人の近くにちょっとでもいたくて、ある会社に思い切って飛び込んでみた。スタートアップと呼ばれる環境である。社会に出て働くことはとても辛いことだと思っていた私にとって、スタートアップはとても刺激的なところだった。ここで「誰かにとっての何者かになれている人」をたくさん知ることができた。

独学でデザイナーになった人、インターンとして働いたのちに社員になった人、エンジニアだけどプロダクトマネジメントを身につけた人。などなど。

彼らが働く様子を観察していても決してハデではなく、めちゃくちゃ地道な仕事を積み重ねていることに気づいた。つまり「実績がないと何者にもなれない」という、薄々気づいていたことに向き合わざるを得なくなった。

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一旦他人のことは忘れて、目の前のことやってみる

そして今の会社にやってきた。入社当時はいちインターン、バイトである。
実績をつむためには、目の前にある機会に食らいつくしかなかった。言われたことをやり、期待を超えるために想像力をフル回転させた。
人と比べて自分がどうとか考える余裕もないくらい、やるべきことが山積みだったので、一旦がむしゃらに働いてみた。

与えられた機会に打ち込んでいくうちに、自分のしたことで相手が喜んでくれたり、会社が褒められたりすることが一番のモチベーションになった。

「何者かになりたい」気持ちは気づいたらなくなっていた。

今の自分よりも前進すること

過去と今のいちばん大きな変化は、他人や組織に矢印が向けられるようになったことだと思う。
自分が人と比べてどうかではなく、人に何を与えられるか。今いる会社がもっといい会社になるために、自分が何をできるか。そんな風に考えられるようになってから、「あの人は素敵だけど、私もこれができるから素敵じゃん」と、自分のことを100%認めて、受け入れられるようになった。

今いる環境で、周囲の人が輝いて見えたとしても、比較対象はその人ではなく、自分なのだと思う。自分が昨日よりも前に進めているかで、成長をはかる。そんな風にして、人を羨んだり卑屈になることなく、誰かに貢献する仕事がしたいなと思った。

「大切なのは、何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである。」
アルフレッド・アドラー

嫌われる勇気、とってもおすすめです。
わたしはKindleで読んだけど、ちゃんと紙の本でも手元に置いておきたいなと思えるような本でした。

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