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KEPPLE Seminar Report【CVC入門セミナー第1弾】三菱地所が語る オープンイノベーション活動の始め方

こんにちは!ケップルのPR担当、冨田です。
ケップルは、スタートアップエコシステムの発展に貢献するため、スタートアップメディア「KEPPLE」や、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」、「株価算定・投資検討DD」など、投資家や起業家のみなさまをサポートするさまざまなプロダクト・サービスを提供しています。

近年、オープンイノベーションや新規事業開発を目的とした事業会社によるスタートアップ投資への取り組みが増加している中で、これからスタートアップ投資をはじめようとされている企業の方々から「まず何からはじめたらいいかわからない」「進めるうえでのポイントが知りたい」といったご相談をお寄せいただくことが増えてまいりました。

そこで、「CVC入門セミナー」と題して、オープンイノベーションの初期フェーズから事業連携までの知見を総合的に深めていただけるセミナーを、全3回に渡り実施させていただきました。

今回はその第1弾として、三菱地所の橋本 雄太氏をお招きし、ケップルキャピタルの島田崚平も交えて開催したイベントのレポートをお届けします。投資活動の進め方について理解を深めていただける内容となっていますので、ぜひご覧ください。
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※本レポートは2023年8月24日に開催したセミナーの書き起こしになります。

▼スピーカー紹介

橋本 雄太 氏
三菱地所株式会社|新事業創造部|主事

新聞社、コンサルティングファーム、鉄道会社を経て2021年に三菱地所(株)に入社。成長産業の共創をコンセプトとするCVCファンド「BRICKS FUND TOKYO」を立ち上げ、新規投資や投資先支援に従事するとともにファンド全体の企画運営を統括。前職ではアクセラレータープログラムやインキュベーションオフィスを立ち上げ、スタートアップとの資本提携や事業連携を通じた新規事業開発を経験。オープンイノベーションを通じた既存産業の変革と新産業創出を目指す。

 島田 崚平
ケップルキャピタル|Principal

2014年に株式会社キーエンスに新卒入社し、法人営業・営業戦略立案・人材育成等に従事。2019年にフューチャーベンチャーキャピタル株式会社へ入社し、ジェネラルファンド・CVCファンドを担当し、スタートアップ投資・投資先支援・ファンドLP対応等に従事。2023年よりケップル / ケップルキャピタルに参画。DXファンドを中心に投資業務を担いながら、新規事業開発にも携わる。早稲田大学卒。


スタートアップファーストで成長産業の創出を目指す

ー 三菱地所グループはどのような背景からオープンイノベーションに取り組まれているのでしょうか?

橋本氏:三菱地所グループは、丸の内エリアを中心にオフィスビルや商業施設を開発してマネジメントするというまちづくりに取り組んでいます。不動産を開発するだけではなく、時代に即した価値を生み出していくために、自社の強みを活かしながらオープンイノベーションを通じてスタートアップ企業との価値共創を進めています。

その背景としては、やはり私たちが直面しているさまざまな経営課題に対して、私たち自身がトランスフォーメーションしていかなければならないと考えています。新しい時代において社会的価値のある企業グループとして進化していくために、自らを変革していくという思いで、オープンイノベーション活動を推進しています。

ー 三菱地所グループのオープンイノベーション戦略についてお聞かせください。

橋本氏:私が入社する以前から三菱地所グループは、スタートアップ企業との協業や事業連携を積極的に進めてきていました。既存事業と掛け合わせて新たなものを生み出していくというアプローチですね。今回立ち上げたCVCに関しては、中長期の時間軸で将来的に当社事業にインパクトをもたらすようなテクノロジーやトレンドをを探し出す、いわゆる「知の探索」の機能として活動を本格化させました。

ー 「BRICKS FUND TOKYO」の特徴について教えてください。

橋本氏:既存事業との関連性や協業可能性を投資判断の前提としないというところが大きな特徴です。一般的にはシナジー創出を目的とすることが多いCVCの中では、珍しいポジショニングだと思います。まずは投資先の事業成長を第一に考え、しっかりと支援していくことで、結果として大きな戦略リターンにつなげていくために、スタートアップファーストの考え方を徹底しています。

100億円程度の組み入れを予定しており、チケットサイズは数千万から5億円までとなっています。シリーズA・Bのスタートアップを中心に、社会課題の解決や産業構造の転換といった成長産業の創出に資するような企業に幅広く投資させていただいています。

目的設定と小さな実績の積み重ねが重要

ー ここからは今回のテーマである「オープンイノベーション活動の始め方」についてお伺いしていければと思います。まず、橋本さんが前職にてオープンイノベーションに取り組みはじめられた際の状況についてお聞かせください。

橋本氏:前職は、2017年に京浜急行電鉄に入社し、当時あった新規事業部門を希望して配属されました。当初は、不動産開発の新規プロジェクトに参画したのですが、オープンイノベーションに携わりたいという思いから、社内でアクセラレータープログラムの立ち上げを提案しました。それが受け入れられて実際にプログラムを立ち上げることになったのが、最初のきっかけです。これまでにない新たな事業の創出を目指す中で、社内にノウハウがないのであれば、やはりオープンイノベーションだと考えました。

ー 今でこそ、オープンイノベーションやアクセラレータープログラムが広がっていますが、当時は取り組む企業もそこまで多くはなかったと思います。スムーズに進めていくことができたのでしょうか?

橋本氏:当時、東急電鉄さんがアクセラレータープログラムをすでにはじめられていて、その事例を社内にも共有できたのはよかったですね。代表や役員の方々も当時から、新しいことに取り組む必要性は十分に認識されていて、賛同いただきやすいタイミングだったのかなと思います。オープンイノベーションやアクセラレータープログラムって、比較的社内外の注目も浴びやすいですし、わかりやすくPRできる部分もあったりするので、その点もメリットに感じていただけたかなと思います。

また、アクセラレータープログラムからはじめて、経営層を巻き込みながら進めていけたのは、振り返ると重要なポイントでした。プログラムなので説明会や審査会などに役員や社長に出てもらったりする中で、当時入社半年だった私も経営層の方々と接点を持つことができました。私の取り組みに興味を持ってくださって名前を覚えてもらって直接連絡がくるようになって。新規事業ってそういうポジションを作りやすいですし、オープンイノベーションを推進するうえで、経営層との関わりは担当者としては重要な役割だと思います。

ー オープンイノベーション活動を進めて広げていく中で、社内でのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

橋本氏:やはり、ロードマップをしっかりと描いたうえで、活動の目的を握りに行くということが大事だと思います。一番良くないのは何となく始めるということです。日本のオープンイノベーション活動では、経営層の方が「とりあえずオープンイノベーションだ、CVCだ」と言われることが結構多いと聞きます。「言われちゃったんで何となくCVCを立ち上げました、アクセラレータープログラムをはじめてみました」ということでは目的がぶれてしまって、どうしても結果が出ないということになりがちです。

結局、目的や時間軸をしっかりと整理していく中で、KPIが決まっていくと思うので、そこが曖昧だと「結局何だったんだろうね、これ」となって取り潰しになってしまうという状況は結構拝見します。目的をしっかりと定義をして伝え続けていく。そして、小さくても実績を積み上げていくことが重要です。事業内容や規模、社会的な立ち位置など企業によってそれぞれに適したオープンイノベーション活動があると思いますので、そこを見出して取り組んでいくことは大事なポイントですね。

文化の違いを受け入れて飛び込んでいくマインドセット

ー 続いて、スタートアップエコシステムでネットワークを広げていくコツについてお聞きかせいただきたいと思います。島田さんは未経験からVCに入られ最初はスタートアップと全く接点がなかったということですが、どんなことからはじめられましたか?

島田氏:当時は私の周りでスタートアップに勤める人は全くいなくて、最初は途方に暮れたのを覚えています。そこで、とりあえず手当たり次第にスタートアップ関連のイベントやミートアップに足を運びました。はじめは行動量が全てかなと思い、とにかく行動してネットワークを広げることに注力しました。

次に重視したのはインプットの量を増やすことです。ミートアップでいろいろな方とお話しても、あまり共通の話題がなく盛り上がらないということがありました。結局、スタートアップ界隈ではスタートアップのこと、資金調達のこと、投資家のことを理解しないと話が広がらないので、ひたすら情報をインプットしました。業界のニュースに触れることはもちろん、SNSで手当たり次第業界の方をフォローして、常に情報のシャワーを浴びるということをしていくうちに、徐々に差分が狭まっていくような感覚がありました。行動することによって、関連する情報が入ってくるようになり、芋づる式に知っているイベントも増えていきました。そういった行動の積み重ねでネットワークを広げていきました。ちなみに手前味噌ですが、日々の資金調達ニュースやイベント情報が集約されている「KEPPLE」というメディアがあり、私自身も重宝しているので、ぜひご活用ください(笑)

ー 知識や経験を重ねていく中で、活動の仕方に変化は出てきましたか?

島田氏:ある程度、自分に合ったイベントを取捨選択できるようになっていきました。そして、大きなイベントの中では知り合いを見つけたら、その方の知り合いを紹介してもらい、自分の知り合いを紹介するというのを続けていき、さらに効率的にネットワークが広がっていきました。1人ぼっちになって寂しい思いをすることもないので、おすすめです(笑)

ー 橋本さんは、はじめにアクセラレータープログラムに参加してもらうために、スタートアップの方々とどのように接点を持たれましたか?

橋本氏:直接自分でスカウトしに行きました。プログラムを立ち上げる前に、スタートアップ数十社とお会いして、アクセラレータープログラムに求めるものや、どういうプログラムだったら嬉しいかということをヒアリングさせてもらいました。そういった方々に実際に応募いただいたりしました。本当に営業のような活動だと思います。既にオープンイノベーションに取り組んでいる企業の担当者の方にDMをお送りしていろいろお伺いしたり、島田さんと一緒でとにかく飛び込んで、インプットして自分なりの考えをまとめていきました。

あとはアウトプットも大事だと思います。自分の考えをスライドに落としていろいろな方に見てもらうとか、SNSなどで発信をしていくということ。これも結構考えをまとめるうえで、また自分がどういう人間かを知ってもらう意味でも重要です。

島田氏:あと、振り返って一番重要かもしれないと思うのは、マインドセットですね。「郷に入れば郷に従え」ということです。大企業側からスタートアップエコシステムの世界に入り込むと、業界特有の言葉や慣習、雰囲気って結構あると思います。そこに対して違和感を感じることが少なからずあると思っていて、私も少し経験があります。大企業のカルチャーとは別のものであるということをしっかり認めて受け入れて、オープンマインドで飛び込んでいくというマインドセットは大事だと思います。

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