iOSのサイドローディングをめぐって各国政府とAppleに対し思うこと

みなさんこんにちは。

政府の「デジタル市場競争会議」において、iOSのサイドローディング(App Store以外の経路でアプリをインストールできること)を義務付ける方向で話が進んでいるようです。

同様の話は以前から欧米諸国を中心としてあり、すでにEUでは対応を求められる段階となっています。
日本は例によってEUが決めたからそれに追従する動きをしているのでしょう。

この件については各国政府にもAppleにも思うところがあります。

各国政府に対して思うこと

まずサイドローディングの義務付けの動きについて。

これについては、iOSの安全性がどれほど損なわれることになるか、その重要性を理解した上での判断とは思えません。

自由競争の名の下に、iOSの安全性を著しく脅かそうとしているのです。

iOSシステムでは、当初から一貫してアプリのインストールを公式のAppStoreのみに制限してきました。
App Storeのアプリは公開前に人間がチェックしており、定期的に悪意のあるアプリを削除する等、マルウェア対策が取られています。

この囲い込みが批判の対象となっているわけですが、その背景には年々深刻化するマルウェア被害への対策の意味があります。

他のOSプラットフォームでは、Web上で公開されているアプリや、自作したアプリを自由にインストールすることができます。
これは一部の人々にとっては意義のあることでありましょうが、「AppStore外からインストールする方法がある」という時点で、外部からの攻撃に対する脆弱性を生みます。

Windowsを業務利用する組織が、マルウェア対策にどれほどのコストを払っているか、想像してみてください。

これに対し、iOSではApp Store以外から内部にプログラムを追加する方法が基本的に無いので、マルウェアに対し非常に堅牢な設計になっています。
ユーザーは外部からの脅威について心配する必要が少なく、ウイルス対策など余計なことを考えずにiPhoneを使えているのです。

一般ユーザーの多くはセキュリティの専門知識など持ち合わせていません。
それでも大きな問題が起こらずにiPhoneを使えている。
これはプラットフォームの堅牢性からもたらされた恩恵です。

実際のところ、サイドローディングによってもたらされるメリットを享受する人々の割合は、どの程度でしょうか?
それに対して失われる安全性は、正当な対価と言えるでしょうか?

現時点で、iOSのような堅牢性を維持し続けているプラットフォームは他にありません。
そして、その堅牢性は一旦崩れたらもう元には戻らないのです。

各国政府はその意味を今一度考えるべきです。
もう一度言います。一度失われた安全は後から取り戻すことはできないのです。

Appleに対して思うこと

しかし、このような状況を招いた責任はAppleにもあります。

それは以前から指摘され続けている、App Store手数料(通称Apple税)の高さです。

App Store上のアプリ内の課金については、一律30%(最近小規模事業者は15%に引き下げられた)の手数料が徴収されます。
これはアプリの購入だけではなく、サブスクリプション等の収益に対しても徴収されるようです。

スマートフォンがこれだけ普及し、生活必需品となった今、この手数料は高額すぎると言えるでしょう。
App Storeが誕生した当初はモバイルデバイスの1ジャンルに過ぎなかったものが、今やAppleとGoogleの寡占状態になっているのですから。

もちろんApp Storeの運営にそれなりのコストがかかることは想像できますが、これほど風当たりが強くなる前に収益構造を変え、手数料を引き下げることはできたはずです。

もっと早く手数料を引き下げて、皆が納得できる水準にしていたら、これほど強固な反発は受けなかったのではないでしょうか。

この結果を見ると、Appleはプラットフォームの安全性よりApp Storeからもたらされる利益を優先していると考えざるを得ません。

かつて、Craig Federighi氏はインタビューの中で(ソースが見つからなかったので記憶している内容になります。ご容赦ください)、「Macのサイドロードを許可したことで安全性が損なわれたことを”後悔”している」旨の発言していました。

今の状況を、彼はどう思っているのでしょうか。

最後に

EUの情勢を見る限り、少なくともEU圏でサイドローディングの許可は避けられないでしょう。

世間では毎日のように企業がサイバー攻撃被害に遭っています。
デジタル機器への依存が増えるにつれ、セキュリティの懸念は年々増すばかりです。

私は手遅れになる前に、安全なプラットフォームの重要性に気づいて欲しいと思っています。

最後に松村太郎さんの記事も参考に掲載いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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