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"ワンピースオンアイス"鑑賞記【前編】

2023年夏に開催されたアイスショー「ワンピース・オン・アイス」の配信公開が終わって2日。すっかり「ロス」に陥ってしまったので、SNS上で友人限定公開にしていた鑑賞記をリライトして公開します。

私自身は全公開のアクティブなSNSアカウントを一つも持っていないので自分からはどこにも宣伝できないけれど、未だにnoteで「ワンピースオンアイス」で検索しちゃうような「ロス」の人が少しはいるかもしれないし、ちょっと遅すぎるとは思うけれど、今のこの気持ちを少しは共有できるかも?と思いまして。

最初に私の属性だけ軽く紹介しておきます。
フィギュアスケートを長年テレビやストリーミングで楽しんできた中高年で、試合やアイスショーに定期的に出向きだしたのはここ数年程度のライトなスケオタ。コミックや演劇なども好きではあるものの、「ワンピース」に関しては麦わらの一味の主要キャラの名前を何人か認識していた程度の人物です。

今日あげる【前編】は、そんなライトスケオタが「ワンピースオンアイス」の開催を知ってから観に行くまでの記録です。この前段がまぁ無駄に長いwので、ショー本編の感想以外ご興味がない場合は近日中にアップするつもりの【後編】のみご覧ください。


”ワンピースオンアイス”とは


「ワンピース・オン・アイス」とは、世界中で大人気のコミック「ワンピース」初期の人気ストーリー「アラバスタ編」をアイスショーで演じたもので、2023年8~9月に10回にわたって上演されました。「何じゃそれ?」と思った人は下記の公式宣伝動画1分をご覧くださいまし。

私が現地でショーを鑑賞したのは9/3(日)の楽日。本当は夜の最終公演のみを友人と観る予定だったのですが、ルフィ役の宇野昌磨選手があまりにも自信満々に「仕上がりがいい!」とアピールしてくるもんだから昼公演も追加で買ってしまい、関西から名古屋日帰りで1日2回観る羽目になりました(苦笑)。

新横浜スケートセンターで6回公演後、名古屋のドルフィンズアリーナ(旧愛知県体育館)での公演は4回。名古屋の箱が大きかったので観客の入りは大丈夫かと余計な心配をしましたが、土曜の名古屋初回はほぼ満員。ABEMAでライブ配信のあった最終公演は日曜夜開催ということもあって若干の空席はありましたが観客の熱量はすごく高くて大満足でした!

人気アニメの2.5次元アイスショー化


以前「美少女戦士セーラームーン」をもとにした「Prizm On Ice」というアイスショーの企画がありました。主役は2016-17年の世界選手権を二連覇し、2018年平昌五輪の銀メダルを持つメドベージェワ選手。

2020年6月公演予定でチケットも発売してこれから練習…というときに新型コロナ流行が始まり中止になった幻のショーです。1年ずつ公演の延期をアナウンスしていましたがロシアのウクライナ侵攻の影響も大きく、今春になって中止が確定しグッズの販売だけが行われました。

発表時のキャスト情報

公演中止のお知らせ

私はセーラームーン世代じゃないので特に興味はなかったのですが、海外有名スケーターを揃えたキャスティングはスケオタの間で話題になっていました。

なので今年2023年2月に「ワンピースのアイスショーをやるらしい」と聞いた時は「また2.5次元アイスショー企画したのか。セーラームーンはロシアのメドベージェワ選手ありきだったから別コンテンツ狙ったのか~」ぐらいにしか興味を持っていませんでした。

そもそも私自身「ワンピース」のファンでもなかったし、「アイスショーよりも試合最優先」派。「ワンピース・オン・アイス」の公演予定日は試合が始まる8~9月だったから試合予定のないプロスケーターさんたち中心でやるのだろうと思ってましたし。(特に8月公演は国内試合と日程まるかぶりだったし)

「主演は現役世界王者」にビックリ!


しかし4月頭、「主人公ルフィ役は現役の世界王者・宇野昌磨!」と大々的に発表が!

第1弾キャスト発表

フィギュアスケートファンの多くは「あれ、今日エイプリルフールだっけ?」と日付を確認してしまうぐらい驚きましたよ。

もちろん長年の宇野昌磨ファンの私もめっちゃ驚きました。彼はオフシーズンにアイスショーに出まくるタイプですが、あくまでそのシーズンに挑む競技プロをショーの中で徐々に仕上げていく「競技最優先型」のイメージでしたからね。引退後ならともかくよもや現役中にこんな長期間拘束されそうなショーに出るなんて全くの想像外で。ええええええええ!って感じ。

(発表時に「世界王者」がキャッチフレーズとしてガンガン使われていたので、宇野選手にとって3月のさいたま開催の世界選手権はさぞかしプレッシャーだったでしょうな…)

情報ほぼゼロでチケット先行予約開始!


しかし一体どんなショーになるのか?

スケーターたちがキャラの仮装をして「ワンピース」の世界をイメージしたプログラムを次々に滑る従来型のアイスショーに近いものなのか、それともワンピースの話を演劇調に展開していくのか、そうだとしたら原作のどこをやるのか?それとも全くのオリジナルストーリーをやるのか?
とにかく何もかもがわからない。

なのに主催者は「主題はワンピースで主演のルフィは宇野昌磨」しか情報を出してないというのにチケットを最速先行販売開始するという暴挙に出ました(苦笑)。

いやそういう無茶な売り方フィギュアスケート界隈しか通じないんじゃ?と思ったのですが、演出家に「ワンピース」ファンが信頼を置く金谷かほりさんの起用が発表されていたこともあって「ワンピース」の濃いオタや宇野昌磨ファンはここで3万円前後もするチケットを予約しました。

私と友人もその一人。おかげでロングサイド中央のアリーナ席の最前列(前に特典グッズつきの「プレミアム席」が2列あるので3列目ではあるが)という良席が取れました。ま、本当は背景スクリーンが正面から拝めるショートサイドが欲しかったけどなー!!

しかし8月の公演直前になって宇野選手が「いいものを見せられる自信ある」との主旨の発言しまくるもんだから昼公演のスタンド席を追加購入しちゃいましたよ。新横浜公演の開催前は、プロジェクションマッピングとか全体の演出を見るのによさそうなスタンドのショートサイド中央前方席がまだ買えたんですよね。

今年は宇野昌磨選手ら世界の現役トップスケーターが多数出演するアイスショー「The Ice」に3回も足を運んで結構な出費だったのに、名古屋までの日帰り交通費+2回のチケット代まで出す羽目になるとは…高くついた夏でした。後悔は全くしてませんがね!

ルフィは適役か?


フィギュアスケートファンの中には「屈折したおとなしいタイプの宇野くんにあんな底抜けに明るいキャラなんてできるの?」と不安視する向きも多かったですが私はま~ったく心配していませんでした。

彼のファンなら仲間うちで集まったゲーム配信や親族による撮影動画などでいたずらっ子っぽく大笑いする姿を見てるし、アイスショーでは明るいキャラも演じたことがあるのを知ってますからねぇ。高橋大輔&チャーリー・ホワイトを先輩とする新人サラリーマンのアイスダンスプロやったときなんて想像以上に芸達者で、おっちょこちょい?で陽気なサラリーマン役を演じられてたから「ルフィも絶対いける!」って確信がありました。

2019「Friends on Ice」CS日テレプラス 放送画面より

それに彼がルフィ役に起用されたのは柔軟性のある体&肩の可動域がやたら広くて腕が伸びるように見せられるところが評価されてだろうし。何より試合前の気合いの入った顔つきは戦闘モードに入ったときの少年コミックヒーローっぽさもあるので結構なはまり役になるんじゃないかとすら思ってました。

何より特殊効果に頼ることなく腕が伸びたように見せられるスケーターなんて全世界探しても今宇野選手しかいないと思うし、マジで

なのに本人は記者会見や取材で「ルフィと僕は性格が真反対で…」ってやたら連呼するんですよね~

まぁ確かに近年の彼が試合で見せてきた静謐かつ荘厳な印象の演技のイメージとは正反対。人見知りな性格だから前に出て大声で号令かけるようなタイプではない。でも彼を慕ってる後輩もいるし、口数は少なくとも頑張る背中を見せることでみんなを実直に引っ張っていくタイプのリーダーだと思うんですよ。

声高に叫ぶ方かそうじゃないかの違いがあるだけでかなり共通点あるほうだと思うのに「何言うてんねんこの人w 仲間のためなら熱くなるとことか、何度打ちのめされてもくじけず立ち向かい続けるとことかルフィそっくりやんw」と思っていました(苦笑)。

スケオタたちの配役予想はいかに?


その他の配役は段階的に発表となりました。

第2弾キャスト発表

悪役のクロコダイル役の無良くん(超はまり役!)はかなり早く決まっていたような印象を受けましたが、スケオタ一同驚いたのはボン・クレー。

このポリコレ時代にはちょいとやりづらい「オカマキャラ」にまさかの女性を持ってくるとは!でもスケオタなら「確かに理華ちゃんならいけるかも」とすぐに理解できました。派手な顔立ちの美人なのに超お茶目な性格で有名だからw

何よりボン・クレーはバレエの動きを生かした拳法技を得意とするキャラなのでツイズルやビールマンスピン、ウィンドミルが得意な大柄女性スケーターを持ってきたのは大正解だったと後でわかりました。(発表当時はボン・クレーの拳法技のことをよく知らなかったのでピンと来ていなかった)

この頃あたりから日本人スケーターがやるらしいという話が出回り、スケオタの間では容姿や身長バランスから ゾロ=田中刑事さん サンジ=島田高志郎選手 ウソップ=織田信成さん(というか選手か) ビビ=本田真凜選手 ではないかとの予想が大半を占めました。チョッパーは宇野昌磨選手より小柄な女性スケーターだろうということでプロスケーターの宮原知子さんや高橋成美さんを挙げる人が多かったかな。

で、続いて発表になったのは、ウソップ、チョッパー、ビビ、コーザ。

第3弾キャスト発表

ウソップとビビは予想通り!という感じでしたが渡辺倫果選手が入ったのには驚きましたね。全日本シード権は持ってはいるけど(←訂正 シードは持ってなかったです。免除対象だっただけで9月末の東京ブロック大会から出場でした。さすがに東京大会はクリアできると思いますがよく決断してくれましたね!)若手現役が参加してくるとは!でもよく考えれば彼女はアニメやコミック好きだし小柄でお茶目なキャラなので候補に挙がってきてもおかしくなかったんですよね。

宇野選手とは対照的に、陽気キャライメージがある友野一希選手が暗い役柄になったのも驚きでした。子供の頃に自分をかわいがってくれた国王に対して反旗を翻す反乱軍リーダーというシビアな役。

でも私、宇野選手同様友野選手の演技力も心配していませんでした。なんだかんだいってフィギュアスケーターたちって小さいころから曲の背景等を理解して表現するという「身体表現の訓練」を積んできた人たちですからねぇ。芝居の素人かもしれないけれど役作りはきっとうまくできるはず!と。

第4弾キャスト発表

そして麦わらの一味の残り3名も発表。

ゾロとサンジのキャスト名を見て「ほらね!」と膝を打ったスケオタが多数いたはず(笑)。

でも私は「島田選手はバリバリ現役だしなぁ…誰かプロの長身スケーターを選んでくるのかな」って思ってたので、まさかのINでビックリしましたよ。これも彼が去年好成績を残せて今季の全日本のシード権確保できてたから引き受けられたんだよなぁ。ある意味そこに運命を感じます。

(この新規ショーにはかなり練習が必要なのは予想がつきましたからね。もし彼が年末の全日本選手権のシード権を得てなかったら夏から始まる地方大会の練習を考えるとスケジュール確保がかなり厳しかったと思います)

後で知ったのですが島田選手は大の「ワンピース」ファン。今の現役選手は「ワンピース」で育った世代なのでファンが多いんですね。今回選ばれたキャストはみんな「ワンピース」を愛読していたそうで。スケートの実力だけでなく、原作に対してリスペクト&愛も持ち合わせているメンバーでキャストを揃えたのが公演の成功につながったかなと思います。

ナミとロビンはキャスティングに紆余曲折あったかな?という印象を当初は受けました。

ミス・オールサンデーことロビン役はスケオタの間では荒川静香さんを推す声が結構あったのですが、彼女は8月下旬に演出等を座長として手掛けるショーを抱えてましたからねぇ。ナミ役でスケオタが予想していたのは村上佳菜子さんや坂本花織選手などでした。

でも結果的に女優として活躍する本田望結さんを入れたことで他の出演スケーター達に対する演技面でのカンフル剤になったし、一般認知度がとても高い本田姉妹共演ということで宣伝も強化できたしで最良の選択だったかも?

グラマラス&明るくふてぶてしいねーちゃんに見えつつも実は辛い過去も持つという複雑なキャラを演じるには女優としての経験があるスケーターさんが適していた気がします。アラバスタ編のナミには派手なアクションもないですしね。

ロビン(ミスオールサンデー)役の小川真理恵さんはシンクロナイズドスケーティング出身のショースケーターさんですが怪しいオトナの女性らしさがぴったり。時間の都合でロビンの活躍シーンが少なかったにも関わらずあの存在感はすごかったです。

その他にも重要な脇役がいくつもあるんですが、主要キャストを発表していた時期は私自身の「ワンピース」予習が済んでいなかったので不満に思っていませんでした。今思うともうちょっと全キャスト発表早い方が嬉しかったですね。

私自身の「予習」

長~~~い「ワンピース」原作シリーズの中でも人気が高い初期の「アラバスタ編」をやることがわかってからは一念発起して「予習」に励みました。子供たちが一時期アニメ再放送を毎週見ていたのでキャラの名前とか超大雑把なあらすじだけは知っていたのですが、当初は麦わらの一味の名前も全員ちゃんと覚えてない状態でしたんでね。

幸い「ワンピース」原作コミックの佳境を前に「ワンピース歌舞伎」やら「USJのワンピースショー」、「NetFlixの実写版ドラマ」の制作など様々なメディア展開をしていてくれたおかげで7月ごろまではネットでアラバスタ編終了あたりまで全巻無料で読むことができたんですよ。

これだけ国民的人気を誇る原作だけあって面白くて夢中で読み進められました。麦わらの一味たちにそんな過去があったとは!と驚きと感動の連続で。とはいえすごく情報量も描き込みも多い作品なので、速読が得意な私でもなかなか一気には読み進められず、少々睡眠不足になりましたw 

数週間かけて何とか読み終わりましたが、話の続きを課金して読みたくなる気持ちをぐっと抑えて今度はAmazon Primeでアラバスタ編の映画を鑑賞。この頃には「アイスショーでは声優さんの新録音ボイスに合わせて当て振りをするらしい」という情報が伝わってきていましたし、声優さんの声のイメージを頭に入れておかないと台詞聞き分けにくいですしね!

しかしアラバスタ編、原作コミックはめっちゃ面白かったのに1時間半ぐらいにまとめたら超駆け足で味気ないのなんのって!(苦笑)。麦わらの一味それぞれのメンバーたちが敵と死闘を繰り広げるところが面白いのにあっという間に戦闘が終わってしまって原作のカタルシスはいずこへ…。
(アニメで全話通して見ればカタルシスを味わえたのでしょうがそこまでの時間の余裕はさすがになかった…)

今思うと、原作コミックをきっちり読んで、アラバスタ編のあの感動を脳内に刻み込んでおいて本当によかったですね。

それに「これをアイスショー化する」というのがわかった状態で予習をすると「なるほどこういう技だったら氷上で近いことができそうだな」とか「ここはこういう感じのプロを作れるんじゃ?」とか予想できるのも面白かったです。

一方、「特殊効果はプロジェクションマッピングと照明ぐらいしか使えないだろうにこんなシーンどうやって演出する気だろう?」と疑問に思う壮大なシーンもいくつかありました。

やっと情報キター!なゲネプロ公開


公式インスタアカウントで時折提供される出演スケーターたちのインスタライブなど、ネットで情報を定期的にチェックしていましたが「ワンピース」ファンにとって関心が強い衣装の情報とかリハーサル映像とかはほとんど出してくれないんですよね~。

「どんなショーなのかようわからんから怖くてチケット取れない」という声もあちこちから聞こえてきて「一体いつまで情報を出し渋ってるんだろう…」と不安はピークを通り過ぎ。初演直前になってようやくゲネプロ映像がネットニュースに流れてきて安心致しました。

これは大丈夫そうなクォリティっぽい!
相変わらず宇野選手はインタビューで「僕の性格はキャラとは正反対で…」と謙遜しまくってるけど演技見る限り大丈夫そう!みんな再現度すごい!

ファンマーケティング炸裂


そして迎えた新横浜の公演当日。関西在住の私は「初演見られる人いいな~」と思いながら同日開催のフィギュアスケートのローカル試合を観戦に行っていたので、製氷時間中にSNS上での公演の反響を必死でチェックしました。

するとビックリ!

フィナーレが撮影OKで観客撮影動画が鬼のようにタイムラインに流れてくるじゃないですか!!!

フィナーレ映像を観客撮影&SNS拡散OKにした英断のおかげで、以降ネット上には観客撮影動画と絶賛コメントが溢れました!濃いオタ同士の伝播力を最大限に利用する、今どきの「ファンマーケティング」活用の典型ですね!

「サンジがあまりにもサンジ過ぎる」とか「ルフィの身体能力スゲー」「ゾロの三刀流すげー」「キャラの解像度みんな高すぎ」等々好評の嵐でワンピース&フィギュアスケートファンの間で一気に高い評判が広まって、自分自身はまだ見てもいないのに嬉しいのなんのって。

SNSベースの拡散だったのでライトファン層に広がるチャンスは比較的少なかったと思うけど、アイスショー自体がワンピースorフィギュアスケートのオタ向けな作りだったのでそれでよかったと思います。(ワンピースorフィギュアスケートのどちらかが好きじゃないととっつきにくいし楽しみ切れないかと)

あぁ自分が観に行くまでの過程を記録だけでもかなり長くなってしまった(苦笑)。公演当日&配信の感想は1万字前後あるんで、これから整理して近日中にアップすることにして、ここまでのぶんを先にあげちゃいます。最後まで読み進めていただいた方、どうもありがとうございました!

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