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映画「カモン カモン」を見タ

映画「カモン カモン」を見た。

全編がモノクロであることが良かった。
ホアキン・フェニックスが演じるジョニーはラジオジャーナリストとして子供たちにインタビューして生の声を聞いている。ちょいネタバレするけど冒頭から子供たちの声が流れ、彼らが何を話しているのかを聞くことになる。最初に声を聞かせる演出で、自然な形で”見る”より”聞く”という姿勢になる。この姿勢が今作の大切なことだと冒頭で教えてくれる。
聞くことを重視するために、視覚情報は”カラー”より情報量が減る”モノクロ”を選んだと思っている。(パンフレットの監督インタビューには違うことが書かれているので真相は知らんけど)
暗い場内に光の刺激が少ないモノクロの映像を見ていると、自分が座っている現実世界とスクリーンの映像世界の境界線が揺らいで、自分が作品に溶け込んでいく。まるで、映像世界の空気になっているようで、視覚からのインプットというより肌で感じてる感覚に近くなっていた。モノクロにはアート的な狙いが強いと思っていたけど、こんな効果があることを知った。

聞く姿勢を重視していると思ったもう一つの理由は、ジョニーが自分の本音を録音していること。彼が仕事で行っているのは子供たちのインタビューであり、ジョニーの音声はラジオの放送には関係なく使われない。それなのに彼は自分のことを語っている。誰に聞かせるためかというと、スクリーンを見ている人たちに聞かせている。
観客である私たちが、今作のインタビュアーである。
形式ばった聞き手になるのではなく、スクリーンで展開されることを聞いて(見て)素直に感じて反応する。ジョニーたちが子供から話を聞いてるように…。甥のジェシーに「このガキが!」って拳を握りたくなるのも素直に感じよう…。

「このガキが!」って思ってしまうジェシーだけど、彼の奥底にある本音を聞いて、私は言葉を失った。私も彼と同じ不安を持ち、私は自分を守るために逃げ出している。自分の血が怖くて自分を信じ切れずに「カモン カモン」と言えなかった。あの時に、もっと周囲の人に自分のことを話せばよかったかなと思ってみたり…。でも、話しても他の人の言うことを聞かなかっただろうなと思ってみたり…。
演技ではない子供たちのインタビューは、自分たちで切り拓いていこうとする”カモン カモン”な姿勢である。彼等は強いなと思った。

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