俺とは違う

街でいちばんの天ぷら屋の店主がカウンター越しに言った。
隣町の新しい天ぷら屋をお忍びで偵察したが、その味は「俺とは違う」。

味の優劣という「程度」の問題ではなくて、「流派」が違うという話。

もちろん実際には「俺の天ぷらの方がうまい」と思っているだろう。
それをあえて流派の違いと捉えるそのラテラルな発想に痺れた。

「うーん、これはいかがなものだろう」という人の振る舞いに出会ったとき、思い出すのは「俺とは違う」。
どちらが優れているということではない。スタイルの問題である。

無意識のうちに人に不寛容になり、その行動や言動の背景に思いが至らず反射で批判してしまいがちなこの頃。

自分と違うスタイル、自分と違う価値観でそれぞれの人が輝く。
それでいいではないか。
自分の気に食わないことをいちいちつまみ上げてつぶしていくのは実にみっともない。

「俺とは違う」。
多様性を認めるおまじないのような言葉だ。

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