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先輩の一言:「俺は自分への投資だと思っている」

かなり昔のこと。僕は営業の仕事に就いていた。この仕事を始めてから1年が経ち、徐々に営業成績が上向きになっていった。僕は研修センターの他の営業スタッフたちと比べても、成績が順調に伸びている方だと感じていた。しかし、それでも収入が思うように増えずに悩んでいた。この仕事は時間をかけて成果を積み重ねていくもので、それに伴って収入が少しずつ増えていく性質のもの。なので最初のうちは収入が少ない。生活のことを考えると不安でいっぱいだった。

そんなある夜、僕は研修センターの先輩に電話をかけた。彼は僕が入社する数ヶ月前に加わった人で年齢も僕より上。情熱的で力強い性格の持ち主だ。僕たちは営業スタイルが似ていて、普段から成績について話し合うことが多かった。

僕は彼に今の現状を話して相談した。彼は電話を受けたとき、お酒を飲んでいる最中だったが良い気分で話を聞いてくれた。彼は僕に何かアドバイスをするのではなく、自分のことを語った。

「俺はねぇ、今は自分への投資の時期だと思ってるんだよ」

彼は笑いながらそう言った。

この一言が僕の心を楽にさせてくれた。彼も僕と同じように成績が伸びているものの、現状に苦しんでいるのだ。

僕は電話を切って思った。「そうだよね。今は自分への投資なんだよね。最初は誰だって苦しい。無駄に悩んでも始まらないよ。今のペースで成績を伸ばし続ければ収入は間違いなく上がっていくんだから」

僕は、彼が何を言いたかったのか分かった。その日から、僕は心を新たにした。何よりも契約を取ること。その積み重ねが大切だと。これまでの経験から、成績が収入に直結していることも身に染みてわかっていた。「こうすれば契約が取れる。これくらい努力すればこれだけの成果がある」ということも分かってきていたので、そこに焦点を当てることで気持ちが楽になった。

そうして、日々の仕事に戻っていった。今になってその当時を振り返ると、彼は本当に一生懸命に努力をしていたんだと感じる。だからこそ、ほんの一言の言葉がとても響いたのだろう。もし、やっつけで仕事をしているような人なら「大変だね。頑張ってね」のような表面的な慰めの言葉だっただろう。しかし彼は違った。僕はそんな先輩に感謝し、彼のような人がいたことにも改めて感謝の気持ちを持った。


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