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―伝統工芸の再解釈を通して日本文化を見つめなおす―「江戸東京リシンク展」ディレクター、芸術家・舘鼻則孝氏が語る作品への思い

伝統工芸を再解釈し現代アートとして表現する芸術家・舘鼻則孝氏。舘鼻氏は日本文化のアイデンティティである伝統工芸を見つめなおし、その価値や魅力を世界中に発信してきました。そのキャリアはアメリカの歌姫レディーガガの衣装制作から伝統工芸士の方々の共同制作まで多岐に渡ります。

そして、この度舘鼻氏は江戸東京の伝統に根差した技術や生産品を世界に発信する「江戸東京きらりプロジェクト」によるオンライン展覧会「江戸東京リシンク展」のディレクションを務めました。本展覧会では舘鼻氏と「小町紅」「うぶけや」「龍工房」といった伝統産業事業者とのコラボレーション作品が公開されており、江戸東京の伝統工芸について新しい視点を打ち出しています。

そこで、今回はコロナ禍での状況を踏まえながら、制作で苦労した部分や今後の伝統工芸について舘鼻氏にオンライン上で取材させていただきました。

クリエーションを分業して創作することがポイント

常日頃からというような感じではありますが、今回の制作に関してはクリエーションをどのように分業をして創作をしていくかっていうことが非常にポイントになってきたと思っております。

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龍工房とコラボしたヒールレスシューズ

例えば、龍工房さんの作品をご覧いただくと、実際に僕が製作をしたのは靴の部分になるのですが、この組紐自体は龍工房さんが結びの部分も含め組んでくださいました。龍工房さんには2400ヶ所ほど結びを組んでいただいております。こうして組んでもらったものを僕が預かって自分の作品に落とし込んでいくプロセス―いわば駆け引き―というのは非常に難しいところです。

ですが、やりがいを感じるところでもあり、ある意味同じクリエイター同士の栄光が生まれる瞬間でもあるのでもあると考えています。それを龍工房の福田隆さんに見ていただけるっていうのは僕としてもすごい嬉しいことでありますし、成果を感じる部分でもあるんですよね。

一緒に物作りをする作り手として、事業者の方々が新しい発見をする、そういうようなコラボレーションが成り立つ機会ってなかなかないとは思うんです。コロナ禍の中でも、そういう部分を大切にして、対面でのコミュニケーションではなくもの作りを通したり、実際のクリエーションを通したりしたコミュニケーションは大切にしていきたいなと思っています。

創作活動をすることで過去の日本を見つめなおす

僕自身は作家として、クリエイティビティを基に作品を創作しております。ですが、伝統工芸士のような職人の方々は古くからある一つの技術を継承して現在もその技術を守り続けているという方々です。伝統工芸の問題に関して、変化すべきかそうじゃないかというのも非常に難しいポイントになると思うんですよね。

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伊勢半本店とコラボレーションしたヒールレスシューズ

僕のような作家に関しては常に変化をし続けるということがある意味正しいというスタンスになると思います。しかし、伝統工芸士の方々の場合、伝統的に技法が定められている中でどのように革新的なことを自分の中で起こしながら継承していくべきなのか、とても難しい課題だろうなというふうにも思っています。

伝統工芸のような日本の工芸文化というのはもともと用途のあるものであったりする場合がものすごい多いと思うんですけど、現代ではライフスタイルの中で使われないような場面というのが増えてきていると思うんですね。コロナ禍も特にそうですけど生活を見直す機会であったりとか、僕自身の場合は創作活動をすることが実際にそういう過去の日本の何かを見直すことになるわけです。

そういう気づきが様々な背景の中で人それぞれあると思うので、そういうことを大切にしながら、今一度自分の育った国である日本の文化的な背景というのを見直す機会にもなったらよりいいのかなと思っております。

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うぶけやとコラボした作品

伝統工芸を現代風に蘇らし、日本文化のあり方について問いかける舘鼻氏の作品は、私たちが永らく忘れていた伝統産業の存在をふとした形で思い出させてくれます。オンライン展示会は3月上旬を予定しているとのこと。是非、チェックしてみましょう。


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