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借金財政を吹き飛ばせ。低成長の先進国は「政府紙幣」を導入せよ。

今まで考えていた疑問の答えが腑に落ちてワクワクしている青木元太です。twitter @keton_boss

今回は貨幣システムについてお話します。先進国ではお金の発行の仕組みのおかしさが露呈してきました。今までイケイケドンドンできていた先進国は低成長の時代に突入し、様々な矛盾・ほころびが出始めています。その一つが貨幣システム(お金が生み出されるシステム)です。成長率が高かった時代は気にならなかった問題が顕在化してきています。現在の貨幣システムを見つめ直し、新しい貨幣システムを導入しましょう。長いですがお付き合いください。それではどうぞ。

僕はつい最近までどうやって世の中のお金が増えているんだろうと疑問に思っていました。企業は利益を追求します。経済学の用語ではこの利益を「付加価値」とも言います。原価20円の原材料から1000円の洋服を作って売れた場合は980円の利益(付加価値)が生まれます。さてよく聞くGDPですがGDPとは国内で1年間にどれくらい利益(付加価値)が生まれたかを表します。日本のGDPは500兆円程度ですので、日本の企業や個人が商売をして500兆円も利益を出していることになります。ただし、この500兆円は厳密には500兆円分の「モノ・付加価値」が生まれたことを指すのであって、新たに市場の中にお金が500兆円増えたわけではないのです。つまり、企業が稼ぐだけでは世の中のお金の総量は増えないのです。おそらく、「はぁ?」と思われたことでしょう。ご安心ください。以下でなるべく分かりやすくご説明致します。

早速見ていきましょう。

企業はお金を稼ぎます。企業が稼いだお金は消費者から企業に移動したものです。下の図のように「市場」という「囲い」の中でお金のやり取りが行われています。例え企業が100億円稼いでも、誰かから誰かへお金が移動するだけです。新しく市場の中のお金が増えるわけではありません。あくまで囲いの中のお金の総量「経済用語:マネーストック」は変わらないのです。

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以下で、経済の肝となる部分・仕組みをご説明します。例えば全部でお金300億円〈¥¥¥〉が流通している市場を想定してください。上の図の囲いの中には300億円あります。そのお金は企業や消費者がまばらに持っているのです。〈¥〉が1つで100億円とします。一方、〈*〉はモノです。〈*〉が1つで100億円分のモノとします。

100億円=〈¥〉      

100億円分のモノ=〈*〉

この市場では、今年あらゆる企業が様々なお店を開き合計でモノ300億円分〈***〉を生産して利益を稼ぎました。ところで、企業は儲けることが大切です。企業は儲けるために存在すると言っても過言ではありません。洋服を売っている企業は利益を洋服工場の建設に投資して、来年はもっと洋服を作ろうと考えます。こうして年々、世の中に出回るモノは増えていくのです。企業は利益が出る場合、商売の規模を拡大させようとするのです。そして、次の年はモノが600億円分〈******〉に増えました。次の年は昨年の2倍にモノが増えたのです。(このブログでは経済の仕組みをなるべく理解しやすくするために数字を極端にしています。あくまで概念を理解しやすくするために数字は極端ですが、これらは実際に起きていることです。)

最初はお金300億円〈¥¥¥〉とモノ300億分〈***〉で釣り合っていたのですが、翌年は経済活動のおかげでお金300億〈¥¥¥〉とモノ600億分〈******〉となります。モノは2倍増えましたが、お金は300億円のままです。このままだと世の中に出回るお金は300億円のまま増えません。なぜお金は増えていないのでしょう。なぜなら、いくら企業がモノを生産して利益を出しても、そのお金は消費者の財布から企業の財布に移動しただけに過ぎないからです。市場の中の誰かから誰かへお金がぐるぐると移動しているに過ぎないのです。上の図の市場という囲いの中でお金の奪い合いが起きていると考えられます。いわゆるゼロサムゲームです。お金の総量が限られた中で、誰かが儲ければ誰かのお金がなくなるイメージです。

さて、このような状況では僕たちは実際の生活でどのような変化を感じるのでしょうか。昨年のお金300億円〈¥¥¥〉とモノ300億分〈***〉であった場合と、翌年のお金300億〈¥¥¥〉とモノ600億分〈******〉の場合では感覚的にかなり違ったものになります。まず、お金への価値観が変わります。皆「お金はとっても貴重だ!」「もったいなくて使えないよね。」と感じるようになります。この感情の変化は必然的なのです。人間が経済の状況を感じ取ってそう考えるようになっているのです。決して、理由なく適当に思っている訳ではありません。以下でどういう仕組で僕たちの心境の変化が起きるのかご説明致します。

今年はモノが600億円分〈******〉に増えたのに、お金は300億円〈¥¥¥〉のままです。注目すべきは、「お金はモノの交換手段」であるということです。つまり、

「お金=モノ」

という関係で考えなければならないのです。流通するお金の量は300億円のまま変わりませんが、モノが増えたので「お金の価値」は変わります。ここが一番混乱しやすいところではないでしょうか。詳しく見ていきましょう。

流通するお金300億円は金額こそ300億円ですが、世の中のモノの量が増えると、「モノとの交換比率」で価値が上昇します。お金〈¥〉とモノ〈*〉で見てみましょう。

昨年は、お金300億円〈¥¥¥〉 =  モノ300億円分〈***〉です。  つまり、〈¥〉=〈*〉

その翌年は、お金300億円〈¥¥¥〉 =  モノ600億円分〈******〉です。 つまり、〈¥〉=〈**〉

最初は、〈¥〉=〈*〉の関係でした。100億円のお金で100億円分のモノと交換です。一方、翌年は〈¥〉=〈**〉の関係になっています。100億円分のお金で200億円相当のモノと交換できる、とてもお得な状態になりました。これがお金の価値が上がったということです。少ないお金でより多くのモノを購入できる幸せな世界のように思えます。モノと相対的にお金の価値が高まるデフレ経済とも言います。

どうでしょうか。一見、良いことのように思えます。実際に100億円で昨年の2倍のモノを購入できます。じゃあ再来年はどうでしょう?再来年は100億円で300億円のものを買えるようになるかもしれません。4年後は5年後は100億円で10倍の1000億円相当のモノを購入できるかもしれない。皆さんはそう考えるのです。すると、先程も上げましたが、「お金はとっても貴重だ!」「もったいなくて使えないよね。」と考えるようになるのです。つまり、お金を使うことをためらう。今お金を使うより後で使ったほうがたくさんモノをたくさん買えるよね。と考え消費をしなくなってしまうのです。もっとも、このようなお金の価値が上がる・そして相対的にモノの「価値・価格」が下がる「デフレ」状況では、企業が稼げなくなるので「不況」になります。勘違いしやすいのですが「デフレ」と「不況」は似て非なるものです。デフレはモノの価格がさがること、ただそれだけです。一方で「不況」はモノが売れなく、失業率が高くなるなど経済活動が不活発になった状況を指します。デフレそして不況が続くと価格が下がり続ける「デフレスパイラル」という状態になります。因みに、モノの価格があがる「インフレ」状態で「不況」という状態もありえます。これがスタグフレーションです。オイルショック等が原因で生じます。(ですが、基本的にはインフレと好況、デフレと不況はセットで起こりやすいです。)

では、実際このように極端にお金とモノのバランスが偏るのでしょうか。いいえ、違います。世の中は良くできていて、次第にお金300億円〈¥¥¥〉とモノ600億円分〈******〉はバランスするのです。そのためにはお金〈¥〉が増えなくてはなりません。ではどのように市場の中のお金「マネーストック」が増えていくのでしょうか。実はこのお金の増え方「貨幣システム」が現在の先進国の首を絞める原因となっているのです。ここで一度リラックスして気合を入れ直してください。それでは以下で見てきましょう。

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では実際どうなっているのか。先程、洋服を売る企業は来年更に儲けようと、利益を使って洋服工場を新設しようとしました。これも来年の利益を増やしてくれます。しかし、別の方法もあります。これが「借金」です。銀行からの「借金」は上の図の囲まれた市場の外側からお金を供給する行為です。これで市場の中のお金「マネーストック」が増えるのです。(余談ですが「借金」についてお話しします。企業や個人が銀行などの金融機関から借金行う場合に限って市場の中のお金「マネーストック」が増えるのです。一方で、借金といっても友人同士のお金の貸し借りや企業が債権を発行する借金とは性質が異なります。それらの借金では、市場の中にお金(マネーストック)は全く増えません。銀行からの借金は「信用創造」という機能があります。極端ですが銀行は手元に一切お金がなくても、企業や個人がお金を借りに来たらお金を貸してあげられるのです。上の図の企業の役員Aさんは銀行から300億円ほど借りていますが、銀行は手元に1円もないのに「300億円」という数字をAさんの通帳に書き込むだけでお金を生み出しているのです。これがまさにゼロからお金が生まれる瞬間です。まさに錬金術ですね。こんな事が行われています。逆に、みんなが一斉に銀行からお金を引き出そうとすると銀行はお金を用意できなくて倒産してしまいます。これが信用創造と信用収縮です。面白いですよね。)

話がそれました。

さて、引き続き「借金」についてお話します。世の中には先の洋服企業以外にも商売上手がたくさんいます。例えば洋服業界のUNIQLOの社長、柳井正さんに登場してもらいましょう。彼は経営能力が抜群です。彼は頭がいいのでお金を稼いだら、「稼いだ分+借金」をして更に稼ごうとします。先程の洋服企業は「稼いだ分だけ」を工場に投資していましたがUNIQLO社長は「稼いだ分+借金」で工場をつくるのです。

例えば去年1億円で設立した工場が10億円の利益を生んでいたとしましょう。彼は銀行から19億円借金します。その借金19億円で新たに工場を作るのです。すると、来年は20億円で作った工場達で200億円も利益を挙げられるのです。その利益があれば19億円の借金なんて大したことはないのです。

この借金は金融用語でいうと「レバレッジ」です。てこの原理とも言います。モノが売れる「景気が良い」ときは柳井正さんのような人達が銀行から借金をして市場にお金「マネーストック」を供給します。

そうなのです。この人達が借金をすることで、市場に出回るお金「マネーストック」が300億円〈¥¥¥〉から400億円〈¥¥¥¥〉、500億円〈¥¥¥¥¥〉に増えるのです。

そんな風に、

昨年、お金300億円〈¥¥¥〉 = モノ300億円分〈***〉から

今年、お金600億円〈¥¥¥¥¥¥〉 = モノ600億円分〈******〉とあるべき姿に均衡(バランス)していくのです

企業が利益を稼ぐ(付加価値)を作れば作るほど、モノ〈*〉は増えます。そして誰かが銀行から借金すればするほど世の中に出回るお金〈¥〉は増えるのです。

大切なのは世の中のお金が増えるのは、誰かが銀行からお金を借りる時であるということです。銀行の信用創造で世の中のお金が増えるのです!

この仕組を理解できれば、2020年の僕たちの生活が数十年前の人たちの生活よりも豊かであることが理解できるでしょう。現代は数十年前と比較してモノやサービスが圧倒的に増えています。そして、上記の仕組みが機能して、モノと同じようにお金も増えています。数十年前と人口が変わらず1億人だとして、モノが数十年前の100倍増えているのなら、一人あたり100倍のお金を持っ(給与や所得が100倍になっている)ていることになります。先ほど見ましたが、モノに伴いお金が増えるということは、その分誰かが「借金」をしているのです。経済は、人間のもっと稼ぎたいという「欲」(レバレッジ)をうまく取り入れて借金で「マネーストック」を増やす仕組みが自然に機能しているのです。これでお金300億円〈¥¥¥〉・モノ600億円〈******〉から、お金600億円〈¥¥¥¥¥¥〉・モノ600億円〈******〉と増えていくのです。恐らく誰かが考えて設計したわけではないのですが、

「市場にモノが増えたら、誰かがより稼ぐために借金をして市場にお金をもたらす」

この仕組が機能しているのです。これで21世紀まで世界は繁栄してきたのだから素晴らしい。誰が作ったわけでもなくうまく機能しているなんて改めて鳥肌モノです。

ここまでが現代の経済の基本的な仕組みです。お疲れさまです。以下では現在この仕組みがうまく行かなくなったことをご説明します。その理由は銀行からの「借金」が減っているからです。やはり誰かが設計した訳ではなかったので、時代が変わった現在、制度がうまく機能しなくなっているのです。

銀行からの借金がうまく行われず市場の中のお金であるマネースットックが増えない状態、お金300億円〈¥¥¥〉に対し、世の中のモノ600億円〈******〉の状態から、あるべき姿にバランスしにくくなっているのです。僕はこれが長引いている昨今の日本のデフレ(不景気)の原因なのではないかと疑っています。お金〈¥〉とモノ〈**〉のバランスが悪くなっているのです。

相対的に市場の中のお金「マネーストック」が少なく、モノが多いデフレの状態(お金の価値が上がって、消費を先延ばしにしようとする)に陥っているのです。そして「借金」が増えないからデフレが解消されないのです。ではなぜ「借金」が増えず、世の中に出回るお金「マネーストック」が増えていかないのでしょうか。ポイントは「低成長」だと考えています。以下では先進国が軒並み陥っている「低成長」について下のグラフでお話致します。

低成長=GDP成長率が低いとお考えください。GDP成長率とは、昨年の利益(付加価値)の総和と、今年の国内の利益(付加価値)の総和を比べて何%増えたか。例えば昨年のGDP500兆円で今年のGDP550兆円であれば、経済成長率は10%です。

下のグラフを見てください。これまでは経済の成長スピードが早かったのです。高度経済成長という言葉をご存知でしょうか。グラフを見ると50年代は10%超えの経済成長率です。そして、60年代は概ね8%ほど増えていますね。そして70年代と80年代は3%、90年代と2000年代は0%近辺で推移しています。近年は他の先進国を含め経済成長のスピードが遅くなっています。低成長の時代です。下は日本のGDP成長率の推移です。(内閣府ホームページより作成

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下は先進国のGDP成長率のグラフです。(世界銀行のデータより作成)近年、先進国は軒並み低成長になっていることが分かると思います。

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では、近年のように経済の成長スピードが遅くなるとどうなるのでしょうか。僕が考えるに先程の柳井正さんのような「借金をする人」が少なくなっていくのです。これはあくまで僕の仮説であり、真相はわかりません。

低成長では儲けが少なくなっていきます。年々儲けが少なくなると、借金をして設備投資をしようと思わなくなるのだと思います。利益が出ても新規に工場を作って儲けてやろうと思う人達が少なくなるのです。1億円で作った工場が毎年10億円の利益を出していた場合は借金して工場を作ったほうが良かったのです。しかし、1億円で作った工場が年々、1億円、5000万円、100万円と利益が小さくなっていくとどうでしょう。新しく借金しても返せるか分からないのでやめておこうとなるのです。なので低成長では資金需要が少なくなると考えられます高成長の時代は、モノが少なかったのですが、その分道路を作ったり、自動車や冷蔵庫など新しいモノがどんどん出てきて消費者も欲しがったのです。そして人口も増えていたのです。人口が増えて消費者はモノを買いまくっていたのです。更には格差が少ない時代でした。「1億総中流」という言葉があって、みんな同じように少しリッチな状態でどんどん消費を行っていました。その消費に支えられて、企業は借金をして設備投資を行っていたのです。さらには持家信仰もあり、皆銀行から数千万円の「借金」をして住宅を購入していたのです。やはり「借金」で世の中にお金を供給していたのです。しかし、今は「低成長」の時代です。道路や鉄道はすでに整っている。世の中にすでにモノは溢れすでに皆は必要なものは手に入れています。更には技術革新のおかげで家具や家電はどんどん安くなっています。これに追い打ちをかけたのはインターネットです。インターネットはあらゆるムダを省く性質があります。インターネットの本質は中抜きです。最近ではマイカーの代替案としてカーシェアリング。例えば1万人がカーシェアリングでい良いと考えると、一台数百万円の自動車を購入する人が1万人減るので数百億円もGDP(付加価値・利益)がなくなることになります。このように様々な理由があって現在は「低成長」になっており、低成長の時代には「資金需要」が少ないので借金は増えないのです。

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日本銀行ホームページより作成)上のグラフは先ほどの日本のGDP成長率に、市場の中のお金であるマネーストックの成長率を重ねてみた図です。経済の成長率が高かった60年代から80年代末まではマネーストックの成長率も高いのです。理屈はこうです。需要が多い→企業はモノを作る→モノが売れる借金して設備投資→もっとモノを作る→儲かるのループです。モノが売れることでGDPが成長する。そして設備投資のために借金をすることで市場の中のお金であるマネーストックが増えるのです。

モノが売れる→マネーストック が増える の流れです。

先ほどお話ししましたがマネーストックは誰かが銀行から借金することで増えるのです。やはり、お金(マネーストック )は借金でしか増えないのです。これを「債務貨幣システム」と言います。経済が成長(モノが増える)するとお金が増えなくてはいけません。つまり「借金」(債務)が増えないといけないのです。ですので企業と同じように政府の借金が増えていることは当たり前なのです。日本の借金1000兆円問題は低成長のもとで企業が借金できないので代わりに借金している。そのように見方を変えると妥当なのです。現行の「債務貨幣システム」では経済が成長すると借金が、特に低成長の現代は政府の借金がどうしても増える。これが事実なのです。

マネーストックを増やす「借金」は大きく分けて2つあると僕は考えています。

1. 企業が民間銀行からお金を借りるパターン

2 . 政府が国債を発行して金融機関からお金を借りるパターン

1はすでにご説明した通りです。企業の役員が銀行からお金を借りて囲いの外側から内側へお金を供給するイメージです。信用創造でゼロからお金が生まれます。

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2 は政府が金融機関から借金をするパターンです。政府が国債という債権(この金額をこの日に貴方に返しますという契約書)を発行して銀行などの金融機関に買ってもらいます。そして政府は金融機関からお金を借ります。

専門的な話になります。マネーストックとは、「一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(金融機関・中央政府を除いた経済主体)が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高」(日本銀行HPより)です。つまり金融機関の持っているお金ではないお金がマネーストックなのです。現在は金融機関がお金を持ち過ぎています。本来ならば融資などで金融機関のお金が企業や個人に渡っていくのですが、「低成長」ゆえに「借金」が行われず金融機関からお金が出ていきません。そのせいで市場の中のお金であるマネーストックが増えず前半で見てきたようにデフレ状態なのです。お金とモノのバランスが悪くなっている状態です。

そこで新たな借り手である「政府」の登場です。経済政策の基本としてデフレの時は政府と日本銀行は協力して市場にお金を供給しようとします。政府は借金をして支出を拡大します。

政府は国債を発行して金融機関から借金をします。調達したお金は社会保障費や公共事業費として支出します。

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政府が借金する場合でも同じようにマネーストックが増えます。先ほどマネーストックとは金融機関以外の人たちが持つお金とありました。上で政府がやったことは、国債を発行して金融機関からお金を借りて社会保障(給付金などで国民に配る)や公共事業(橋やハコモノを作るために業者に仕事を発注)して市場にお金を供給するのです。政府は金融機関の持つお金を、市場に流す役目を行うのです政府が間に入って、企業が銀行から借金できない分を補おうとするのです。

以上、マネーストックが増える方法として企業が銀行から借金するパターンと、政府が金融機関から借金するパターンの2通りをお話ししました。

さてこのことをデータで見てみましょう。残念ながら最近のデータしかご用意できませんでした。

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日本銀行HP財務省HPより作成)画像の青色部分は「企業(民間)」の借金が前年に比べどれだけ伸びたか。緑色部分は「政府」の借金が前年に比べどれだけ伸びたかです。企業の借金の伸び率は左側の%、政府の借金の伸び率は右側の%となります。画像のように企業の借入が増えると政府は借金を減らし、企業の借り入れが減ると政府は借金を増やしています。

さて、下の2つのグラフを分析してみましょう。経済成長率とマネーストックは密接に絡んでいます。仕組みは前半で述べた通りです。つまり経済成長にはマネーストックの増加が必要です。しかし、低成長では従来のようにはマネーストックが増えないので政府が供給するしかありません。80年代末以降、急激に民間の借入が減少しています。それに伴い80年代末以降、同様にマネーストックも減少しています。一方で80年代末以降、政府の借金は増えていますが、マネーストックを大きく上昇させることはなく焼け石に水といったところでしょうか。企業の借金が減ったので政府が借金を増やすものの、GDP成長率以上にマネーストックの成長率を増やすことができていないという見方もできます。

数字で見てみましょう。日本政府の国家予算は100兆円規模でその内毎年40兆円が借金です。一方で、全国銀行協会によると2020年5月末時点で国内銀行の貸出金総額は約530兆円(5,316,013億円)です。企業全体と政府の借金の額の差は実に10倍です。企業の借金がたった1%減った場合であっても、政府は借金を10%以上増やさないとマネーストック は減ってしまいます。従って、企業が借金できないからといって、10分の1の借金規模である政府が代わりに借金をしてマネーストック を供給しようというのは無茶な話なのです。

これも経済成長(企業の借金)が永遠に続くことを前提とした債務貨幣システムが原因なのです。経済(企業全体)の成長が終わった(低成長化した)瞬間にもう詰んでしまうのです。政府がいくら借金を増やそうとしても、政府と企業全体では借金の規模が違うので現行の債務貨幣システムでは構造的に無理なのです。日本の年功序列も経済が右肩上がりで成長していた時代には機能していましたし、年金制度も人口が増え続けていた時代には非常にうまく機能していましたが、これからはうまくいきません。時代が変わればそれに合うように制度自体を見直さなくてはならないのです。やはり諸行無常です。

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上でも見ましたが近年は経済成長率も、マネーストック の伸びもゆっくりになっていますね。先進国のように成熟した国の経済成長率はどうしても低くなります。その理由はやはり、人々にモノが行き渡り新しく欲しいものがなくなったこと(需要が満たされたこと)、そして、技術の進歩やインターネットの普及で世の中が効率化し、低価格化したことの理由であると考えられます。例えば1950年代テレビが始まったばかりの頃の白黒テレビの価格は29万円、当時のサラリーマンの給与が5400円だったそうです。つまり、月収の54倍でした。当時は今の感覚で(月収20万円としてその50倍)テレビが1000万円ですよ。そんな時代でした。しかし、今のテレビの価格はアマゾンを見ると3万円程度です。そしてその金額で4Kのテレビが買えます。月収20万円の場合6分の一の価格です。経済成長の指標であるGDPはモノの価格(利益)です。金額が大きければ大きいほどGDPは膨らむのです。

従って、テレビが出たての1950年代は他にも冷蔵庫や洗濯機等、当時の水準(給与)にしては新しいモノが高価格(割高)で生まれていたので、どんどん経済の成長スピードが高くなっていたのです。それに加え現在も同様ですが、家を買うために35年もローン契約をして高額な消費を行なっていました。このようにしてこれまで、消費が主導して高い経済成長率を達成してきたと言えます。

一方で現在はどうでしょうか。一部の富裕層向けの商品を除いて、現在大衆が必要とする物で月収20万円の50倍、1000万円くらいするモノってないですよね。

これは技術の進歩やインターネットのお陰でモノが低価格化したことによります。あらゆるモノが低価格化したことにより、モノの価格(利益)の総和であるGDPの成長率が鈍くなるのも頷けます。そして、モノが安くなり、消費者である僕たちは既に必要なモノをすべて低価格で所有しているのです。なのでこれまでのように需要が増えて経済成長を行うというのが難しいのです。まとめると、近年のGDPの成長率鈍化は、技術革新によるモノの低価格化が一因となっています。

勿論、今あげた以外にも先進国の低成長化はたくさんの要因が複雑に絡み合っていると思われます。以上では近年の先進国の低成長化を見てきました。先進国の低成長化は見方を変えれば、生活の基本となるモノは技術の進歩によって低価格化し、誰もが安価に手に入れられるとても豊かな時代になったことの証拠でもあります。

しかし、このままではいけません。我々はもっと経済成長をしなければならないのです。経済成長をすることで人類は更にラクに、幸福に生活できます。経済成長をしてお金を投資すれば医療や科学の発展による恩恵を受けられるのです。

さて、豊かになった現代でも経済成長を行う、もっとも今のデフレ状態を抜け出すにはどうすればいいか。やっと僕の意見を述べられます。これまでお話ししてきた前提知識をもとに聞いていただけますと幸いです。

まず問題を明確にします。

先進国は豊かになり、皆が生活に必要なモノを手に入れ、新しくモノを買う動機が少なくなりました(需要の縮小)。この低需要・低成長状態をどう解決して、持続的な経済成長を行うかこれが先進国の課題です。

以下で僕の解決策をご提案します。

その解決策とは何度も言っていますが「マネーストック」を増やすことです。

近年GDPの成長率が小さく、マネーストックの成長率も小さいです。これも議論がありますが、僕は経済の成長にはマネーストックの成長が必要だと考えています。再びこのグラフを見てください。

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経済が大きく成長している時は、マネーストックの量の伸びが大きいですよね。GDPの成長率をマネーストック が上回れば良さそうです。マネーストックをお金〈¥〉・ GDPをモノ〈*〉として考えてください。モノが多いとデフレになります。一方お金が多いとインフレになります。事実、デフレより数%のインフレの方が経済に良い影響を与え、経済活動が活発になるのです。そのため安倍政権も頑張って2%のインフレターゲットを設定しています。

さてどのようにマネーストック を増やすのかお話しします。

これまでは

『戦後でモノ不足→需要が大きい→モノが売れる→借金して設備投資』のループ

です。単純化すると『経済成長→マネーストック増加』の流れです


豊かになりモノが溢れたこれからの経済成長モデル

政府がお金を配る→需要を喚起→モノが増える→借金して設備投資 のループ』

です。単純化すると『マネーストックの増加 →経済成長』の流れです。

これからはこれまでとは逆の流れで経済成長を目指します。政府がお金を配る(支出)ことで経済成長を行うのです。もっというなら政府がお金を配って需要を喚起するのです。イメージとしては政府が僕たちにお金をくれて、それを僕たちが消費に使うという形です。(専門的ですが大事な用語で「貨幣の中立性」という問題があります。簡単にいうとお金は中立的であるため、世の中にお金を増やしても経済成長には何ら影響は与えないという理論があります。この「貨幣の中立性」が本当であるなら経済成長に変化は生じません。専門家ではないので反論が難しいですが、井上智洋氏の著書「ヘリコプターマネー」では貨幣の長期的中立性について議論があるとおっしゃっています。ただし、実質的な経済成長率は変わらずともデフレは脱却できるのではないでしょうか。)

さて、政府が借金してお金を配るというのは感覚的にはうまくいかないように思えますね。政府の借金がどんどん膨れていくのは想像に難くありません。先ほどの図から80年代末以降民間借入の伸び率は停滞しています。恐らく、これから大きな経済成長がなされない限り民間借入の伸び率は増えないのです。なので政府がマネーストックの供給者になるしかありません。ただし政府がマネーストックを増やすとなる問題は政府の借金の大きさです。政府は国債を発行して金融機関からお金を調達しそれを支出しますが、借金が更に大きくなります。

前に書いたブログの3章で述べましたが既に政府の借金は1000兆円を超えています。しかし、日銀は「金融緩和政策」で金融機関から国債を購入しています。これにより実際は政府の借金は減っているのです。なので僕は政府の借金問題は実は全然問題はないと思っています。ただ「借金」には金利がついたりそのネガティブなイメージがあるのは事実です。

勘違いしてはならないのが政府(国)の借金は、企業や個人の借金とは全く別物である、ということです。とても重要なことです。

企業や個人が借金をすると、金利をつけて元本を返済しなくてはいけません。それが出来ないと企業は倒産して無くなりますし、個人も破産して数年間は不便な状態になります。しかし政府の場合は違います。前提として市場にお金を供給するという役割があるので、デフレの時は借金はしなくてはいけません。勿論デフレが長引くと借金をし続けるので借金は増え続けます。先進国が軒並み借金が増え続けているのはデフレが続いているからと考えられます。そして政府の借金には、負担のない返し方がいくつかあるのです。政府の借金を返すには2つ方法があります。一つは国民から税金を徴収して国債の返済に充てる方法。2つ目は日本銀行(中央銀行)が国債を買い取るという方法です。税金を徴収して借金を返す方法は有名ですが、デフレの現在では絶対にやってはいけないことです。先ほどマネーストックは「一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(金融機関・中央政府を除いた経済主体)が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高」とありました。税金は企業や個人からお金を徴収する行為です。これはマネーストック を減らす行為ですのです。なので税金を徴収して政府の借金を返済するという政策はデフレの状況下では愚策です。しかし、2020年消費増税を行いました。デフレの原因はマネーストックの減少であるのにも関わらず、増税で更にマネーストックを減らす政策を行いました。せっかく国債を発行し支出を増やしてマネーストックを増やしているのに、財務省は増税をしてマネーストックを減らすという理解に苦しむ政策を行ったのです。どう考えてもおかしいなぁと思います。ですので政府の借金返済の方法として、税金を使うオプションは考えられません。

従って2つ目の、日本銀行が国債を買い取る方法が良さそうです。

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日本銀行は資本関係からしても日本政府のものです。政府が国債を発行して日本銀行に買ってもらう。そして日本銀行は政府にお金を渡す。この方法だと借金は発生しません。日本政府と日本銀行を同じものとしてまとめて考えると借金は発生しないという訳です。これを利用すればいいのです。日本銀行は政府の日銀口座に数字を入れるだけです。これを日銀引き受けと言います。ただし現在は原則禁止とされています。それは戦時中にこの方法でお金を調達してハイパーインフレという状態になったからです。ハイパーインフレを前述の例で考えると

通常

お金300億円〈¥¥¥〉 モノ300億円分〈***〉の状態が

お金を刷りまくって

お金6000億円〈¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥〉モノ300億円分〈***〉くらいにバランスが悪くなった状態です。この状態ではモノが少ないので、モノが相対的に大きな価値を持つようになります。その結果、「お金なんていくらあっても、物買えないよなぁ」「モノとお金ではなく、モノとモノで交換したい」となりお金に価値がなくなり、文字通り紙屑になってしまうのです。

さて、そういう歴史もあり政府の国債を日本銀行が引き受けることは原則禁止されていますが、実は大々的に行なっていないだけで現在も行っています。しかし、現在の主流はこちらです。直接ではなく「間接的」に日銀引き受けを行なっています。

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日本政府と日銀の間に金融機関を挟むことで同じことをやっています。直接にせよ間接にせよに政府の出した「国債」が日本銀行に届けば借金はなくなります。日本銀行の資金循環統計によると現在日本政府が発行した国債(政府の借金)は1132兆円です。そして、日本銀行が保有している国債は2019年で495兆円です。1132-495=637兆円が金融機関や個人等が持っている国債です。

現行の「間接的な方法」でも日銀引き受けの「直接的な方法」でも日本銀行がいるので政府の「借金」の概念は企業や個人の概念とは全く違うのです。

さて、政治家は国民の代表です。皆さんの感覚「日本政府の借金はあんなにあって大丈夫なのかな?」は政治家も共有していると思われます。現行のシステムでは間接的にも直接的にも日本銀行が国債を買ってくれるので、政府はもっと大規模に借金をしてマネーストックを増やすことはできるのです。しかし、「借金」が増えることに異常にアレルギー反応を起こす人が多いので現状はとても難しいです。先ほど政権批判をしましたが、安倍政権はそれでもリフレ政策の導入・日本銀行の緊縮政策体質を改革した功績があります。その点では素晴らしいと思いますが、デフレ脱却にはまだまだ「大胆さ」が足りないのです。個人的には1000兆円くらいをドカンと支出、または国民に給付するくらいのマネーストック増加策をする必要があると考えます。それには1000兆円分の国債(借金)を追加で発行しなくてはなりません。しかし、大多数の国民、政治家、官僚は以上の仕組みを理解できないので無理そうです。

そこで国債を発行しない(借金をしない)方法でマネーストックを増やさなければなりません。これがこのブログの本論です。

政府紙幣の導入です。政府紙幣とは政府が作るお札です。政府が自身で発行するため、政府の借金も増えませんし、誰かに金利分を支払う必要もありません。

プレゼンテーション 28.001

借金というネガティブワードに触れずにマネーストックを増やす方法が「政府紙幣」という政策です。政府が中央銀行を介さずに独自の紙幣を作って市場に流すのです。歳入として政府紙幣を使えます。大雑把に現在は、税収60兆円+借金40兆円の100兆円を毎年支出していますが、それが税収60兆円+政府紙幣発行益40兆円といった形になります。この方法だと借金は増えませんし、税収60兆円+政府紙幣発行益1000兆円という使いかたも出来ます。これが僕が勉強した中で良いなと思った解決策です。確かにこれは無制限に拡大しないように決まりを作る必要はあります。しかし、先進国のように技術がたくさんあって、生産性が高い状況ではお金を増やしまくってもハイパーインフレにはならないと考えられます。過去ハイパーインフレになったのは戦争時です。戦争時は、空襲で工場が破壊されて供給能力が著しく落ちた状態です。そこにお金を刷りまくったのでハイパーインフレになりました。モノがとても希少で・お金がものすごく多い状態です。しかし現在はその時に比べて、モノを供給する能力はものすごい高いので大丈夫です。更には現在はグローバル経済です。国内で足りないなら海外からいくらでも物は輸入できます。「有事の円買い」とニュースで見ますよね。円は国際通貨ですので円を使って海外からいくらでもモノを輸入できます。また、政府紙幣をジャブジャブ流せば為替が円安になり輸出企業は潤い経済成長に貢献してくれるでしょう。政府紙幣の導入は先にやった者勝ちです。各国が政府紙幣を導入するまで、しばらくの間為替を大きく自国安にすることが可能なのです。

そんな良いことづくしの政府紙幣ですが、ちゃんと実績もあります。南北戦争で有名なリンカーン大統領はグリーンバックという政府紙幣を導入しましたし、日本でも明治時代に太政官札・民部省札として政府紙幣を導入しています。これまで銀行制度が生まれて、不換紙幣が開発され民間需要に牽引され経済成長を遂げました。とてもうまく機能してきたと思います。しかし、現在先進国は需要不足で低成長です。借金という鎖に縛られて、政府は財政を積極的に拡大し需要を喚起できないでいます。従って、貨幣制度を抜本的に変革する必要があります。それが政府紙幣なのです。この世は諸行無常、貨幣制度も時代によって柔軟に変えていくことが大事だと思うのです。

次回は「政府紙幣」についてより詳しくご説明する予定です。長かったですが最後までお付き合いいただきありがとうございました!学びは楽しいなぁ。

最後に政府紙幣を学べるおすすめの本

おすすめの経済学本


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