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『源氏物語』宇治の物の怪の正体

第53帖「手習」で調伏される物の怪についての私説です。

現存最古の長編ミステリの核心に言及するので「ネタバレ」を付けました。

事件の経緯

薫と匂宮、2人の貴公子の板挟みになった浮舟は自分が消えるしかないと思い詰め、母に手紙を書きます。(51浮舟)

浮舟が薫の邸からいなくなっているのが見つかり、入水と判断されて遺体も無しで葬儀が行われます。
(52蜻蛉)

横川の僧都一行が、木の根方に倒れていた浮舟を救助、横川の僧都の妹尼のいる小野の庵で保護します。
病状が一向に良くならないので横川の僧都が加持を行うと、取り憑いていた物の怪が離れ、浮舟は失踪当夜の記憶を思い出せるようになったのでした。(53手習)

この時、調伏された物の怪は大君殺害と浮舟拉致及び殺害未遂を自供したのですが、正体を訊こうとしたところで憑坐が力尽きてしまい、結局分からずじまいに・・・。

分からずじまい?
「自分の頭で考えろ」ってことです。

探偵役に推理を披露させることで読者に向けて真相を解説するという手法が存在しない時代のミステリですから、読者が1人で(あるいは皆で)犯人を見つけ出すというのが大前提。

幸い、ヒントは揃っています。

浮舟の回想

失踪当夜の記憶は浮舟本人にとっても意外なものでした。

「入水するしかない」と考えた浮舟でしたが、荒れ狂う宇治川の流れを見て決行する気力を失います。
「鬼が来て私を食べてくれればいい」などと独り言を言っていると、とても美しい男の物の怪が現れて、浮舟を邸の外へ連れ出してしまいます。
気が付いた時には、彼女はずぶ濡れで木の根方に放置されていたのでした。

発見時の状況からすれば「浮舟が自らの意思で邸を抜け出し入水したものの一命を取り留めて岸に打ち上げられていた」と考えるのが自然。
物の怪が離れるまで失踪当夜の記憶を封じられていた浮舟自身もそう信じて疑わなかったはず。

しかし実際には物の怪の仕業でした。

本人も周囲の人々も(そして読者も)「失踪と自殺未遂」と思い込まされていた事件が、実は「拉致と殺害未遂」だったという意外な真相。
しかも、新たな登場人物である物の怪が犯人とは・・・。

まあ、確かに物証は無いのですが。

浮舟は物の怪の自供内容を聞かされていませんし、横川の僧都は浮舟の回想内容を知りません。
情報を共有していないはずの2人が、皆が想定していなかった内容で一致。
これは「真実」とすべきでしょう。

科学的には偶然でも文学的には必然。

・・・さて。

浮舟の回想にはもう1つ貴重な情報が含まれています。
物の怪から受けた「印象」です。

「宮と聞こえし人のしたまふとおぼえしほどより」

浮舟の周囲で「宮」と呼ばれる人物は、匂宮と八の宮の2人。
浮舟は八の宮の顔を知らない設定ですから、この「宮」は匂宮で確定。

しかし、ちょっと違和感が。

浮舟は、明るい場所で長時間至近距離から匂宮の顔を見ていますよね。

もし浮舟の前に現れたのが匂宮なら、「匂宮本人」と断言しているはず。
それが「似ている」という弱めの表現にとどまったということは、物の怪の正体が「匂宮で決まり」ではなく、「匂宮か、匂宮に似た誰か」だったと読むべきでしょう。

逆に言えば、浮舟は会ったこともない相手に対して「匂宮様に似ている」と感じた可能性が高いということです。
その場合は「他人の空似」より「血縁の近い人物」を考える方が妥当かと。

犯人特定に繋がる重要証言。

物の怪の自供

ここは大事。じっくり分析します。
カッコ内に意訳を、矢印でツッコミを入れました。

①「おのれは、ここまでまうで来て、かく調ぜられたてまつるべき身にもあらず。」
(自分はこんな所まで来てこのように調伏されるような身の上ではない)
→地方の宇治を見下した傲慢な態度。おそらく「京の貴族」でしょう。

②「昔は行ひせし法師の、」
(昔は修行を積んだ僧侶だったが)
→生前僧侶だったのは事実でしょう。ただ、本当に徳が高かったかどうかは疑わしい。自己申告ですしね。

③「いささかなる世に恨みをとどめて、漂ひありきしほどに、」
(この世に少しの恨みを残して死に、成仏できずにさまよっていたが)
→僧職に就いてはいても、自身が悟りを開くことは出来なかったようで。

④「よき女のあまた住みたまひし所に住みつきて、」
(高貴で美しい女性がたくさんいる所に住みついて)
→無類の女好き。「いささかの恨み」とやらはどこ行った。

⑤「かたへは失ひてしに、」
(1人は殺害したが)
→大君の件。犯人のみが知る事実。

⑥「この人は、心と世を恨みたまひて、われいかで死なむ、といふことを、夜昼のたまひしにたよりを得て、いと暗き夜、独りものしたまひしを取りてしなり。」
(この人は昼も夜も死にたいと言っていたので、暗い夜に1人でいたところをさらってやった)
→浮舟の件。彼女の回想内容と一致。

⑦「されど、観音とざまかうざまにはぐくみたまひければ、」
(しかし観音の護りが強くて失敗し)
→宇治川に投げ込もうとしたが観音に妨害されて木の根方に放置。

⑧「「この僧都に負けたてまつりぬ。今はまかりなむ」とののしる。」
(「この僧都に負けた。今のところは退散してやろう」と大声で喚いた)
→悪役のテンプレ台詞・・・。

いくつか補足説明を。

③浮舟の回想からは「薫の邸を訪れて警護の武士に追い返された匂宮が生霊を飛ばして浮舟をさらった」と考えることも可能なのですが、物の怪は既に死んでいたと判ったので匂宮は除外。

④これは「山中で死んだ後、娘たちが住む自宅に帰って来た男」の台詞ではあり得ません。よって八の宮も除外。

⑤この発言が出るまでは、大君の死に物の怪が関与していると疑う者は誰もいなかったわけですから、こちらも「意外な真相」だったわけ。

注釈には「物の怪がいた記述はない」→「後付けの理由だろう」とあるのですが、そうではないかも。(後述)

⑦浮舟が殺されずに済んだのは、観音の介入があったためと判明。
結局川に入らなかった浮舟が発見時にずぶ濡れだったのは、折からの大雨のせいということになるのでしょう。

⑦⑧入水強要に失敗した後も、なぜかしつこく浮舟に取り憑いていたことを考えると、物の怪は殺害計画を諦めていなかったのかもしれません。

正体は

整理しましょう。

1. 京の貴族で
2. やけに自尊心が強く
3. 既に死亡しており
4. 生前僧職にあったものの
5. 自身は悟りを開けず
6. この世に恨みを残してはいるが
7. それを忘れるほどの女好きである
8. 匂宮によく似た雰囲気の
9. 八の宮ではない男性
(おそらく匂宮に血縁が近い者)

これら全ての条件を満たす人物は、『源氏物語』広しと言えどただ1人。

そう、光源氏です。

薫の香り

先程「物証は無い」と述べましたが、私は、光源氏の死霊の痕跡は物語中に何度も登場していると考えています。

薫の「香り」です。

現代語訳では、「薫は生まれつき何も付けなくても強い芳香を発していた」のように言葉を補って訳すことが多いのですが、原文には「生まれつき」に相当する部分はありません。

そもそも、薫が身体から芳香を放つという設定が登場するのも、第三期の「42匂宮」に入ってから。
第二期では、薫の香りについての言及は全く無いのです。

光源氏が薫を抱き上げる場面でも、薫が筍をかじる場面でも、薫から広がる強烈な芳香に驚く周囲の人々の描写は必要不可欠と思うのですが。

第三期から唐突に特殊能力を追加したというお話でないとすると、第二期と「42匂宮」の間に薫が芳香体質に変化した原因があるはず。

その時期といえば・・・
光源氏の死、そして怨霊化。

『源氏物語』の作品世界では、霊体は匂い(臭い)を伴うのがルール。
移り香もあり、残り香もあり。
六条御息所の生霊のエピソードで既に明示されていますよね。
(当時の物語読者にとっては「常識」だったのかもしれませんけど)

と、いうことは。

「薫が放つ芳香」と思われていたものは「薫に取り憑いた光源氏の物の怪が放つ芳香」だったのです。

無理筋?
いえ、そんなことありませんよ。
2つほど引用を。

「42匂宮」薫の芳香についての記述
「香のかうばしさぞ、この世の匂ひならずあやしきまで、」

「45橋姫」弁の尼が宇治姉妹を垣間見する薫の応対に出た場面
「うたてこの世のほかの匂ひにやと、あやしきまで薫り満ち足り。」

この世の匂ひならず→あの世の匂い
この世のほかの匂ひ→あの世の匂い
あやしき→超常現象(?)

そのまんまじゃないですか!

初読時にはほぼ全ての読者が流し読みする箇所に堂々と「答」を書き付けておいて、再読時にアッと驚かせる。
現代の長編作品でもよく使われる技法ですが、千年前からやってたとは・・・紫式部、畏るべしです。

香りを追って

薫の香りを物の怪が放つ芳香と考えると、他にもあちこちの場面で光源氏が「登場」していることに気付きます。

そもそも、薫の香りは非常に遠くまで届くというだけでなく、強い残り香もあるという設定。
いつもは薫に取り憑いている光源氏がどこかに「出張」したとしても、短い期間なら薫本人にバレないという実に都合のいいギミックです。

・・・巧く出来てますね。

「47総角」には、大君と同じ部屋で寝ていた中の君が、姉の方から漂ってくる「薫の残り香」に気付いて「薫様とお姉様、心配してたけど結構仲良くやってるじゃない(意訳)」と考える場面があります。

ところが、この「残り香」が、2人がいちゃついていた証でなく、今まさにその場にいる「夜な夜な大君の枕元を訪れて衰弱の呪いをかけている光源氏の物の怪が放つ芳香」だとしたら。

中の君の目には見えなかった「それ」の姿が再読時の読者には見えるというわけで。

色っぽいエピソードが一瞬で暗転。
ホラーの基本ですね。

どうやら光源氏の物の怪は「物の怪の関与自体を周囲の者に気付かせない」ステルス型のようなのですが、この話はまた別の機会に。

また「49宿木」では、薫が匂宮の妻となった中の君に迫るものの妊婦であることを示す腹帯を見て未遂に終わるという場面があります。

このとき、匂宮は「薫の強い残り香によって」薫が訪れたことを察知するのですが、これも光源氏が自分の孫に「お前、浮気されるところだったぞ」と警告して、薫の子作りを妨害したとみるのが妥当ではないでしょうか。

動機

では、なぜ光源氏の死霊は宇治の姉妹を襲撃したのでしょうか。
感情的理由と政治的理由から推測してみました。

まず感情的理由。

言うまでもなく、光源氏は自分の子ではない薫を憎んでいます。
しかし、薫本人でなく薫の周囲の女性を狙ったのはなぜなのか。

仮説1:薫本人には神仏の強い加護のようなものがあったため手を出せず、腹いせに薫が愛した女たちを殺害することにした。

仮説2:薫本人を痛めつけるよりも、愛した女たちを殺傷するほうが、より薫を苦しめることができると考えた。

・・・どちらか、あるいは両方かも。

次に政治的理由。

薫は、世間的には光源氏と女三宮の子ということになっていますが、本当の父親は柏木。

薫の母である女三宮は朱雀帝の娘ですから薫は朱雀帝の孫。
宇治三姉妹の父である八の宮は桐壺帝の息子ですから三姉妹は桐壺帝の孫。

もし、薫と三姉妹のうちの誰かの間に子どもが生まれれば、その子は朱雀帝と桐壺帝の血を引く高貴な身分。
しかも世間的には準太上天皇の光源氏の孫でもあるわけで。
女の子なら、女御や中宮になる可能性だってあるでしょう。
妃の父となる薫は、巨大な権力を手にすることになります。

しかし、薫の本当の父は女三宮と密通した柏木。
八の宮も、光源氏の異母弟とはいえ、かつての政敵。
もちろん、どちらも「藤原氏」です。

一生かけて築き上げた「源氏の王朝」が、藤原氏に取り戻されてしまうかもしれない。
光源氏としては、許せない事態です。

そこで。

「怨霊となった自分は薫に取り憑いて全ての行動を監視している。もし薫と八の宮の娘が結ばれそうになったら、徹底的に妨害すればいいではないか。どうせ八の宮の娘、殺しても構わん」

こんなことを考えて、実行に移したのではないでしょうか。

加えて。

感情的理由と政治的理由を考えると、「中の君が襲われなかった理由」にも説明がつきます。

一時は薫が求愛した中の君ですから、感情的理由と政治的理由の両面で当然殺害対象に入っているはず。

それが何事もなかったのは、中の君が光源氏の孫である匂宮の妻だったからでしょう。

「薫が愛した身分の高い女は殺すべきだが可愛い孫(匂宮)の妻ならば別。自分の血を引く子どもが生まれるかも知れないし」

とんだ二重基準です。

行動原理が破綻していますが、光源氏の頭の中ではおそらく全て正しい。

襲撃された者とされなかった者の属性の差、これも物の怪の正体を推定する手がかりといえるでしょう。

宇治三姉妹以外の女性たちについても同じことが言えます。

母親が身分の低い女性なら、薫の娘であっても出世できないので、殺害対象にはならない。

京で薫の妻となる女二宮は光源氏の孫なので殺害対象にしない。

・・・一応、筋は通ってますね。

余罪

調伏では物の怪は何も言っていませんでしたが、京の八の宮邸の火事も彼の仕業である可能性が高いでしょう。
ここまで来ると、あれをただの失火と考える方がむしろ不自然です。

憑坐に無尽蔵の体力があれば、もっと色々訊き出せたのかもしれませんが。

「41雲隠」の意味

「雲隠」が帖名だけで本文が無い理由も、ほぼ説明がつくと思います。

①光源氏が死後に成仏できず、怨霊化する場面を書くわけにいかなかった。

・・・まあ、当然といえば当然ですね。

②あえて不自然な表現にすることで、読者に「光源氏の死が自然なものではない」ことを強調してみせた。

そのためには、単に臨終の場面を削除するのでなく、「謎の1帖」を立てる必要があったわけです。

③「光源氏の死で第二期が終わる」のではなく、「光源氏の死から第三期が始まる」ことを表現した。

「若菜」上・下を1帖扱いにして第34帖とすれば、「雲隠」は第41帖。
この数え方なら、39御法が終章で40幻がエピローグということになるので、第二期が20帖に収まりますね。

仮に「雲隠」が無く「40幻・41匂宮」だった場合は、光源氏の死は第二期側に入るととらえるのが自然。

ですが41に「雲隠」を立てて「40幻・41雲隠・42匂宮」とすれば、光源氏の死は数字の上でも第三期側に入ることになります。

全体の構成という意味でも「41雲隠」配置は絶妙手といえるでしょう。

「54夢浮橋」の意味

第一期は19薄雲で藤壺が亡くなり、20朝顔がエピローグ。

第二期は39御法で紫の上が亡くなり、40幻がエピローグ。

ならば第三期も、53手習で浮舟が出家し光源氏が調伏されるわけですから、54夢浮橋がエピローグになると考えるのが自然です。

何より、物語全体の主役である光源氏が退場してしまったのですから、これ以上話を続ける理由がありません。

「浮舟、どこかで別の男に囲われてるのかなあ・・・」

薫のこんな大ボケ台詞で大長編物語を締めくくるのも、しゃれた終わり方だと思いませんか。

観音の介入

私は、『源氏物語』は輪廻転生のある作品と考えています。
メインヒロインである女性は作品中で桐壺更衣→紫の上→浮舟という転生をしていると仮定。(ほぼ確定)

また、浮舟が物の怪を光源氏であると認識できなかったことから、前世までの記憶は残らないとも考えています。
物の怪の方も、浮舟の前世に気付いていた様子はありません。

巡る因果か作者の悪意か、執着に支配された光源氏が殺害しようとした浮舟は、かつて母であり妻であった女性の生まれ変わりだった・・・というわけ。

特に、生前のキラキラしていた光源氏と紫の上の物語にときめいていた読者にとっては、衝撃的な結末でしょう。

さすがの観音様も、それはあんまりということで、事件に介入してしまったのではないでしょうか。

浮舟だけでなく、光源氏も救ったのだと思います。

観音様、グッジョブ。

女人成仏と常不軽

それにしても。

何十年も前の流謫時代の政敵への恨みを死んだ後までズルズル引きずってるとか、自分が死んだ後の血筋の継承に拘るとか、はっきり言って見苦しい。

「悟り」の対極である「執着」の権化のような男です。
(シュウヂャク:仏教用語)

もちろん、それこそが作品のテーマの1つなのであって、薫とか八の宮とか光源氏とか「仏教の教義には精通していても実践が伴ってない男たち」と学は無くとも懸命に未練を絶ち切ろうとする出家後の浮舟との対比は「女性として生まれてきたこと自体が前世までの行いが悪かった証なのだから女性が今世で成仏できるはずがない」という主流派教義への異議申し立てでもあるのです。

作中には瑠璃光如来とか普賢菩薩とか「女人成仏」にゆかりのある仏を連想させる登場人物(玉鬘と末摘花です)もいますし、夢に出た僧侶が「法華経の第五巻を読め」なんて言う話も・・・おっと、これは『更級日記』か。

また、第三期では「常不軽」についても繰り返し言及されています。
常不軽菩薩は、釈迦の前世の1つで、ざっくり言うと「人は属性に関係なく皆成仏できる」と説いた人。
女人成仏にも通じますね。
(詳細は書籍やサイトを御覧下さい)

紫式部、会心の「ネタバレ」

最後に。

『源氏物語』は実は全54帖ではなく、天台宗の経典の全60巻と同じ全60帖だったのではないかという説が昔からあるそうです。

第一期が20帖で、第二期も20帖なら、第三期も20帖となるのが普通ですが、41雲隠から54夢浮橋までの14帖しかないというのは、確かに不自然。

第一期も第二期も10帖ずつのブロックに分けられますから、第三期だって「宇治十帖」と「それ以外の10帖」があっていいはず。

あと6帖あれば、「20+20+20=60帖」という美しい構成になるのに。
「あと6帖」はどこに隠れているのでしょうか・・・。

「第三期には六帖が隠れている」
  ↓
「第三期には六条が隠れている」

・・・六条!

第二期で六条院の主となった光源氏は「六条殿」などと呼ばれてましたね。

と、いうことは。

「第三期には光源氏が隠れている」

闇落ちした光源氏が、物語の裏の主役として暗躍していた事実は「第三期を14帖しか書かない」という表現手法で最初から明かされていたのです。

本文を読まずとも、シリーズタイトルを眺めただけで犯人が分かってしまう究極のミステリ。

作者会心の「ネタバレ」です。

書いててさぞかし気持ち良かったことでしょうねえ・・・。

原文は石田穣二、清水好子校注『源氏物語』(新潮社)を参照しました。

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今回はずいぶん長くなりました。
ここまで読んでくれた貴方に大感謝。

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