これまでのキーボードを振り返る。①

前回ではキーボードは文房具として主張できるほどの多様性と進化を果たしてきたと述べた。つらつらと。

筆者自身、会社支給のキーボードを長らく使ってきた経緯がある。
たいていはDellかHPであり、すこし便利なものを求めてLogicoolのK270を自宅で使う程度であった。

K270/K275

単三電池駆動、数カ月のバッテリー持ち、何も考えずに操作できるフルサイズキーボード、安定の日本語配列、便利なオプションキー搭載。
何も不満など出るはずもなく、壊れても(壊れないが)3,000円程度で買い替えられる安心感があった。今ではバッテリー持ち以外、すべてが不満要素である。

表面化したストレス

愛用のK270の左CTRLのバネが錆びてしまい、戻りが悪くなったことで業務に支障をきたし、交換を決意。
コピペ操作をするたびにストレスとなっていたが、表面化したストレスはそれではない。
当時はキーボードに興味なんかあるはずもなく、ただのアウトプットを支える道具にしかすぎなかったが、たまたまリアルフォースの展示に触れたとき、ビビビッときたのだ(古い)

静電容量無接点という謎めいた機構、調べると接点がないから理論上は壊れないらしい。バネの錆びで買い替えることとなった筆者としては、これはこれは丁度良いものが、、、と手が伸びたのだ。



静電容量無接点方式という工業的なネーミングは
何でも和製英語にしたがる現代にインパクトを与えたと思う

打鍵感、偏荷重の指への労り、重厚感(重いだけ)、壊れないという安心感は価格に対する価値が十分に感じられ、表面化していたストレスを初めて認識したのだ。
あえて言うが、K270は名機だと思う。しかしそれは"こだわらない人にとって"という但し書きが付く。

深淵を覗くものは何とやら。沼の始まり。

表面化したストレスの大きさは、これまで会社支給のキーボードを使っていた期間の長さの分だけ蓄積していたような錯覚に陥る。いわゆる「もっと早く使ってればよかった」という後悔である。
そのストレスは長大なもののように感じられ、それを埋める作業が始まる。

恥ずかしい行為をしていた頃を黒歴史と呼ぶように、筆者にとって支給キーボードを使っていた頃を黒歴史のように感じたのだ。
今だからはっきり言うが、そんなことない


メカニカルキーボード…? 青軸…?        青軸…!!

フルサイズキーボードはデカいと感じ始めたのはリアルフォースを使い始めて数カ月たったころだ。
右側に間延びしたレイアウトはどうしてもマウスも右側に追いやってしまう。しかし業務ではテンキーをかなり使うため、テンキーは必須。横一列の数字キーで数字入力?億単位の数字を打ってられるか!と思っていたのだ。
右側に追いやられたマウスに右腕を伸ばしているうちに右肩を痛めてしまった。

そうだ!と単純に思いつくのは表面化したストレスの発散である。右肩の痛みの原因はフルサイズキーボードを使っているからであり、表面化したストレスを認識した瞬間には解決策は決定されている。
そう、小さいキーボードを買うのだ

テンキーレスなんて生ぬるい、最小を目指す、という極論的発想で手を伸ばしたのはメカニカルキーボードの世界。
種類が多く(というよりもリアルフォースの種類少なすぎた)、選択肢を広げ可能性も広げる。キーボードはコンパクトに、発想はダイレクトに。


れいざー?っていうきーぼーどをゆーちゅーばーにすすめられた!

短絡的思考は時として何も考えていないと同義である。
60%キーボードを購入。テンキーどころかFキーもない。カーソルもない。

青軸は人気がなく新商品展開もひっそりであるが、打鍵感は随一だと今でも考えている。カチッとした音は文字を打っているだけで楽しく、それこそタッチタイピングができる方は打ち間違いは少ないのでリズムよくタイピングができるはずである。
そのリズム感と青軸は相性がいい。言うなれば青軸キーボードは楽器としてのキーボードとダブルミーニングとなっているのだ。
うるさいというあまりにも大きすぎるデメリットを省けば、市場での優位性ももう少し高かったはず。惜しい存在なのだ。

RazarのHuntsman Miniの青軸版を購入し、キーボードに「使われる」時代が到来した。時代と表現したのはその期間が長かったからだ。
通常、60%キーボードの世界になるとカスタム(キーマッピング)が必須となる。足りないキーをFNキーでレイアウト変更し使いこなす。もちろん理論的配列や運指が必要最小限になる努力も必要となり、何よりもキーマッピングを覚えるという作業も必要となる。
そんな長期的目線など持っているはずもなく、小さいから右肩疲れへんやろ!くらいの感覚で購入した筆者は後で外付けテンキーと9キー(カーソルとデリートキー割り当て)の追加を余儀なくされ、トータルでフルサイズキーボードで良かったという着地点となる。(当キーボードはすでにメルカリ済み)


原点に立ち戻ったフルサイズキーボード

Huntsman Miniの後悔から、原点に戻りフルサイズキーボードに再移行する。リアルフォースは継続使用であるが、どうしても青軸の良さを忘れずにいたことで、新たなメカニカルキーボードを探す旅に出る。すでに3台目のキーボードである。

候補としてのキークロン、相棒としてのキークロン

やっと見つけた!と躍起になった先にあったのはキークロンである。
豊富なラインナップ(これは今でも凄いと思う)、軸を交換できる可能性の塊、しっかり日本語対応。


フルサイズにまだ立ち戻れていない中途半端な選択、テンキーレス

青軸の以外に選択肢がなかった当時は、キークロンが随分と魅力的に見えた。
青軸、日本語配列は必須となるとマジェスティックなども候補に挙がるが、ホットスワップ対応となるとキークロンに軍配があがる。
ハイプロファイルと呼ばれるキーボード自体に厚みがある設計は、パームレストは必須となるがこれはリアルフォースで経験済み。しかしパームレストが邪魔と考えていた筆者はパームレスト無しで運用するしかなかった。
結果、指が疲れる現象が起こった。
指を少しまげて入力をする必要があり、タイプライターで一文字ずつ入力する人のような運指には不格好さがある。そりゃ疲れるわ。
結論としてはK8は最良の選択ではなかったが、ホットスワップでスイッチを引き抜いた時にカスタマイズ性を感じ、自作PCの楽しさのようなものをキーボードで感じることはできた。もっと何かしたい!が知識がない…というもどかしい状態となったが、解決すべきなのは不格好で疲れてしまうストレスをどうにかするほうである。


はいはい、4台目買えばいいんでしょ

もうここまでくると次のアクションが想像できてしまう。
半ば思考停止ともとれる行為ではあるが、ベストを探すというのは探求する楽しさも相まってより短絡的思考になる。視野が狭い。
次の要件は「パームレスト無しで疲れないやつ」である。もうここまでくると立派な沼に肩まで浸かっている。道具としての使いづらさの解決から始まったキーボードの旅であるが、依然として使いづらさがあった。
気持ちのいい青軸も、すこーしだけ短いテンキーレスも満足できる要素ではあるのに、不満ばかりに目がいってしまう状態なのである。


ようやく原点に戻れた瞬間である。

フルサイズ、薄型、ホットスワップ対応、日本語配列、青軸と求めている要件をすべて満たしていたのがKeychron K5 seである。
今では使っていないが、妻が「カチカチキーボード」と愛称をつけ使用している様子を見ると、こだわらない人にとっても一定の評価を得ているようだ。さすがキークロン。
主流のフロート設計(ケースがフラットで結果的にキーキャップが浮いているように見える)にカッコよさを感じていたのでポイントも高い。
LogicoolのG913でも感じていたが、MicroUSB接続という絶望的な仕様によって買う気が失せていたが、キークロンはもちろんType-C接続。
わがままを言うのであればBluetooth規格ではない2.4Ghzのワイヤレス接続だと完璧であったが、有線接続でも妥協できたので文句はない。


旅の終着。こだわりの執着。

エンドゲームかに思えたK5 SEの導入だが、気になる点が出てきた。

青軸以外の軸ってどうなん?

体感ではあるが、茶軸が一番人気、僅差で赤軸、論外の青軸という世間の評価が気になってきた頃である。
青軸だけで3台目となったが、どうしても気になるのは「もっといい軸があるのでは?」という漠然とした疑問。
冒頭にも述べた、「もっと早く使っておけば良かった」という後悔が青軸しか知らない筆者に襲い掛かってきたのである。

次回は軸編を書こうと思う。

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