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読書感想文「問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション」

安齋 勇樹/塩瀬 隆之 著

■要旨

商品開発や組織改革などのアイデア創出や問題解決に「ワークショップ」を活用する組織が増えているが、ワークショップを上手にファシリテート(舵取り)できる人材は少ないのではないだろうか。
ファシリテーションにおいて適切な問いを繰り返し、課題を明確にしてくことが欠かせない。

本書では、ワークショップにおいて、戦略的に「問い」と「対話」をデザインするための考え方と、具体的な技法を詳しく解説している。
問いや対話のデザインは、正しい答えを導いたり、思考や感情にゆさぶりをかけたりする効果的な問いを適切なタイミングで参加者に投げかける、あるいは参加者に持たせることで、創造的な対話を作り出す。
本書は、著者らの経験をはじめとする多彩な事例とともに、問題の本質を抽出し、解決可能な課題を定義する手順などを指南する。


■問題の本質をとらえるのに必要な5つの思考法

1.素朴思考

問題状況に対して素朴に向き合い、問題を掘り下げる方法。問題状況に対峙していてふと湧きあがった何気ない疑問を投げかけながら問題の輪郭を掘り下げていく考え方。

たとえば、自動車メーカーのアクセサリー部門では「人工知能が普及すると、どうしてカーナビ市場が縮小する?」「カーナビはいつ誕生した?役割はずっと変わらない?」「そもそも人工知能ってどんなもの?」

2.天邪鬼思考

目の前の事象を批判的に疑い、ある意味"ひねくれた視点"から物事をとらえる思考法。認識を批判的に捉え、語られていない盲点や、物事の裏側を見ることに徹する。

3.道具思考

道具とは、知識や記号、ルールなど、概念的な道具のことを指す。問題の深堀が進まなくなったと感じた時は、関連しそうな知識を参照したり、あえて異なる専門分野の考え方の枠組を通したり、何らかの「道具を」通して別の角度から問題を捉えなおしてみると、また違った問題の姿が見えてくる。

4.構造化思考

問題状況を構成する要素を俯瞰し、構成要素同士の関係性について分析・整理し、問題を構造的に捉える考え方。「これはなぜだろう」「これとこれはなぜつながっているのだろう?」「本当に要素はこれだけなのか?」と構造化と並行しながら問題を形作っている要素・関係性・輪郭を問うていく。

5.哲学的思考

哲学対話と呼ばれる場においては、自らが知っていることを疑うことからすべてが始まります。自分が問題だと思っている問題、それを説明するためにt買っている言葉の一つ一つの意味、そしてその言葉で解決を図ろうとする集団のなかでその定義が共有できているとする思い込み、あらゆるものを疑うことが起点となる。


■目標を「分割する」「動詞に言い換える」ことで目標を再設定する

目標の実現を阻む「阻害要因」を検討する。さらに目標に修正が必要であれば、目標そのものを再設定する(=リフレーミング)。
たとえば、目の前の状況には「解決すべき問題はいくつあるのか?」「問題を二つに分けるとしたら?」などと問い直してみると意外と目標が複数に分割できたり、あるいは「分割できない何か」が見つかったりして、それがリフレーミングの手掛かりになる。
また、目標に名詞型のキーワードがある場合、それを助動詞に言い換えて目標を再定義すると視点が変わる。
例1:新しいオフィスの"椅子"のアイデアを考える⇒未来のオフィスにおける「座る」を再定義する。
例2:"万歩計"をリデザインする⇒歩行を「はかる」をリデザインする
例3:"無線通信機"をデザインする⇒どこでもだれとでも「つながる」をデザインする


■コメント

思考が停滞したときの突破口として、「天邪鬼思考」「道具志向」などの思考法を用意しておくことの重要さを感じた。

ファシリテーション方法として、「議題の定義」→「会話の発散」→「会話の収束」の流れを促す場面をよく見るが、この思考法を用いることで会話の発散部分を大きく強化してくれるのだろう。

しかしそれは同時に、会話の収束にむけた内容の整理力が求められるということでもある。1段階ステップアップした議論を展開すると同時に全体的なファシリテーション能力の向上を目指したいものである。

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