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だけど、妹の髪は美しい

私が6歳の時に生まれてきた妹は今年、中学2年生になった。
おしゃれに疎い私と違い、小さいころ妹はいわゆる「おませな」女の子だった。

私がでかけるたびに、
「もうちょっと明るめの色を取り入れたほうがシュッとしてみえるよ」
とファッションチェックをしてきたり、

「おねえちゃんが着るより私が着たほうがおしゃれ」

というびっくり論で服を取られたり、とにかく幼いころからおしゃれへの意識がものすごく高かった。
髪の毛のアレンジも大好きで、母が短い方が楽だと勧めても、頑なに短くしなかった。


そんな妹は中学生に入学し、さあ部活動はなににしようかというとき、
唐突に「ハンドボールをやってみたい」と言った。そして経験も知識もなかったハンドボール部に入部した。
私はその言葉を聞いて、正直意外に思った。
体育が長距離走の日は決まって「学校に行きたくない。」という妹を毎年見てきたので、それこそ文化系の部活に入るものだと思っていた。

そんな気持ちを他所に、新しいことを始めようとする妹の瞳は「心配するな」と言わんばかりに輝き、燃えていた。

しかし、ハンドボール部は私たち家族の想像をはるかに超える、過酷な部活動だった。
毎日の練習はもちろん、
休日も、新聞配達のお兄さんと会うほど朝早くから準備し、颯爽と家を出る。情けないことに私はいつも妹に「おはよう」が言えない。

そして、私が「今日の夕ご飯は何だろう」と考えだすころ、蚊の鳴くような声で「ただいま」という声が聞こえる。
ぼろぼろの妹はいつも家に帰ると、かばんも置かず床に倒れこむ。それくらい日ごろの練習がハードなのだ。ふとみえる肘や膝は土でいつも汚れていて、口にしなくても頑張っていることが痛いほど伝わってくる。

しかし部活がどんなに過酷でも、宿題や定期テストは中学生に平等にやってくる。
妹は帰宅すると、くたくたの体を奮い立たせ、くたくたのジャージから着替え机に向かう。「終わらない。終わらない。」と机をにらみつける姿は我が家でよく見られる光景だ。
ある日、家族みんなで夕ご飯を食べているときに妹がボソッと「辞めたい。」と弱音を吐いた。
私たちは衝撃をうけた。
「私も休日に友達と遊びに行きたい。」「だらだらしたい。」
驚いたけど、だれも否定はしなかった。私も辞めてもいいと思っていた。
しかし、翌日なぜか帰ってきた妹は笑顔だった。
「キーパーに選ばれた!」「またがんばる!」と言うじゃないか。
いきいきと語る妹は誇らしく、いつのまにか強くなっていた。

そんな彼女はあるコンプレックスを持っている。

部活動を始める前まで、妹の髪は家族の誰よりもサラサラで、誰もが羨む自慢のロングヘアーだった。
しかし部活を始めてからどんどん傷んできて、シャンプーを変えてもどうにもならなくて、ばっさりベリーショートにした。
彼女の中学校のハンドボールコートは屋外にある。だから毎日外で活動する。そのせいで、髪が日焼けしてしまった。日焼けした髪はたんぱく質が変性し、ギシギシで潤いがなくパサパサする。
どうにもならなくて、自慢だった髪を切ると決めた日、彼女はとても悲しそうだった。
今でも、ときどき鏡を見つめて落ち込む姿を見かけることがある。
でも私はもっと自信を持ってほしい。「こんな髪」なんて言わないでほしい。

毎日外で汗水垂らして練習し、悩みながらも一所懸命に、部活動も勉強も頑張るあなたの髪は、今も昔も変わらず自慢の髪だよ。

紫外線にさらされて傷んだ髪だけど、

妹の髪は美しい。

20年ほど生きてきて友人と話していると結構みんな映画を見ていてしかも個性があることに気づいて、映画についての感想をもっといろんな人とお話ししたいと思って初めてみました。またこれが映画を観ようか迷ってる人の背中を押せたらなおはっぴーです。(紹介文として)