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がんの早期発見には

十数年前までは怖い病気のひとつであった、がん。近年の医療技術の進歩により、早期に発見できれば十分治療できる病気となってきました。しかし、がんの早期発見には、お住まいの自治体や会社の健康診断だけでなく「がん検診」を受けた方がいいのです。普通の健診と、がん検診の違いは何か、がん検診を受けるときのメリットについてです。

【「健診」と「検診」の違い】

「健診」と「検診」、同じように「けんしん」と読みますが、意味がそれぞれ違います。「健診=健康診断」は、健康に問題がないかを調べる目的で行われ、今、現在何かの病気を発症していないか、これから何かの病気を発症するリスク因子の有無を確かめるためのものです。「検診」は、ある特定の病気に、かかっているかを調べる目的で実施されるものです。「がん検診」が「肺がん検診」「胃がん検診」「子宮頸がん検診」などと細かく分かれているのは、対象のがんだけをより正確に診断するためなのです。

がん検診には2種類の検診があり、「対策型検診」と「任意型検診」です。対策型検診は、会社全体や、自治体全体など、集団全体でのがんの死亡率を下げるためのものです。任意型検診は、個人のがんの死亡リスクを下げるためのもの。対策型検診は主に会社や自治体が行うがん検診などで、任意型検診は、自主的に行う、人間ドックなどになります。

【がん検診を行うメリット】

健康診断では、その時点で、健康であるか、病気になる明らかなリスクがないかを調べる検査になります。ごく初期状態で、症状の出ていないがんなどは見落としてしまうこともあります。

がん検診を受けることにより、健診では見つからないような、自覚症状もないごくごく初期のがんを発見することができます。早ければ早いほど、発見できれば進行する前にがん治療を始めることができるため、治癒率も高くなります。子宮頸部や大腸などのがん検診では、がんになる前の病変を発見できることもあります。その場合は、がん化する前に治療を始めることができます。

肝臓のがんが「沈黙の臓器」と言われるように、がんには自覚症状が出る頃には手遅れになってしまうがんも少なくないのです。手遅れになる早い段階に治療を始めるには、できるだけ早くがんを見つけることが大切。そのために定期的にがん検診を受けることが大切になるのです。

【定期的ながん検診を】

がんの早期発見には、自覚症状が出てからではなく、自覚症状が出るよりもっと前に検査を行う必要があります。なので、症状が出ていないからといって油断をせず、定期的にがん検診を受けておくことが大切になります。お住まいの市町村や職場、人間ドックなどを利用して定期的に「がん検診」を受け、がんの早期発見に備えるようにしましょう。

【増えているがん】

厚生労働省の統計によると、2021年の日本人の死因として最多の原因は、がん(悪性新生物)です。がんは、なんと1981年から40年以上、ずっと日本人の死因の第1位となっています。

国立がん研究センターがん情報サービス、の2021年のデータに基づくがん統計では、日本人ががんで死亡する確率は、男性で4人に1人、女性では6人に1人となっています。

罹る人の多いがんの種類(男女計)の上位は、大腸がん・肺がん・胃がんで、死亡数についてもこれらのがんの順位が高くなっています。日本人が一生のうちに、がんと診断される確率は2人に1人というデータもあります。がんは、どんな人でもかかってしまう可能性のある病気だと考えられています。

【日本のがん検診受診率とがん死亡率の現状】

諸外国と比べて日本のがん検診受診率は、低いです。厚生労働省が行った2019年国民生活基礎調査において、胃がん検診で男性が48.0%、女性37.1%、大腸がん検診では男性47.8%、女性40.9%と、受診率は半数以下となっています。

一方、諸外国での大腸がん検診受診率ですが、2008年の厚生労働省、第12回がん検診に関する検討会資料~諸外国のがん検診の制度等に関する調査結果では、フランスが50%、イギリスが60%、フィンランドはなんと73%に上っています。アジア圏の韓国でも、2014年データでは、大腸がん検診受診率は60.1%に上っています。それらに対して、胃がん、大腸がんの死亡率を比較すると、日本での割合は諸外国に比べ高くなっています。(がん年齢調整死亡率の国際比較 2020年度厚生労働科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業 「がん対策の年齢調整死亡率・罹患率に及ぼす影響に関する研究」第75回がん対策推進協議会 資料)

【がん罹患数の順位(2019年)】

総数 ①大腸 ②肺 ③胃 ④乳房 ⑤前立腺
男性 ①前立腺 ②大腸 ③胃 ④肺 ⑤肝臓
女性 ①乳房 ②大腸 ③肺 ④胃 ⑤子宮

【がん死亡数の順位(2021年)】

総数 ①肺 ②大腸 ③胃 ④膵臓 ⑤肝臓
男性 ①肺 ②大腸 ③胃 ④膵臓 ⑤肝臓
女性 ①大腸 ②肺 ③膵臓 ④乳房 ⑤胃

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