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モノクロで撮るワケ

モノクロしか無かった時代にモノクロで撮る理由なんて要らないけど、カラーが普通の時代、展示などするとよく聞かれるのが「何でモノクロで撮ってるの?」ってこと。

今考えてるモノクロの面白さを書いてみようと思う。


写真に興味を持ったきっかけはSNSに流れてきたモノクロ写真で、それがカッコ良くて俺も撮りたいって思ったのが始まり。いわゆるエモい感じのカラー写真はどうも編集がムズそうで手が出ず、モノクロだったらとりあえずモノクロにしちゃえばそれっぽくなるんじゃない?という浅はか極まりない気分があったのも今となれば昔話として消化させたいところ…。

しばらくモノクロで撮ってきて、ある程度は良さを挙げれるくらいにはなった。
撮るとき、単写真、組写真の3つに分けて考えていこう。

1.まず撮るとき(構図)

撮るときから画面表示をモノクロにしてることが多い(※)。モノクロだと構図がはっきりする。というか構図しか見えない。スナップでもポートレートでも個人的には構図は大事にしたくて、黄金比が頭に入ってるわけではないけど、少なくとも自分が見て整ってると思う写真を撮りたい。
RAWで撮ってるから後でカラーにして色の調整もできるし、まずは3:2の写真の中に目の前の光景をきちんと収めることを意識している。

※…コンデジの場合。一眼レフはファインダーを覗いてるけど、そのときもモノクロに脳内変換しながら撮ってる感じ。

2.見せたいものをはっきりor曖昧に(単写真)

モノクロだと、色という情報がひとつ減る。
モノクロにすることで強調できることについて、例を挙げながら説明していこう。

①そもそもの事象を強くする

見ての通りというか、煙が黒々と立ち上っている。黒いものがみるみると広がっていくのは恐怖を感じるまである。
実は撮った時はここまで黒くなくて、でもモノクロにするとそう違和感はない。

白と黒(とグレー)しかないからコントラストを高めても受け入れてもらいやすいし、かつ見せたいものの印象を強めることができる。


②被写体の表情、仕草に注目させる

この写真を見たときに真っ先に飛び込んでくるのは、被写体のまっすぐな視線だと思う。道端にしゃがんで頬杖してこちらを見ている。次にパンパンのビニール袋。これをカバン代わりに使ってるんだろうか…?と考えたりする。

じゃあカラーだとどうなってるのかというと、右後ろには赤いコーンがあって、中央奥には黄色い絵のシャッター。
そういうのを見せたい写真じゃない。おばちゃんを見てくれ。

スナップではとっさに撮ることも多く、余計な情報が含まれてしまうのも仕方ない。でもモノクロにすることで、撮りたいと思ったものにきちんと注目してもらうことができる。


③光と影

ポートレートを撮るときは光と影に注目することが多い。
この写真はとにもかくにも人に当たる網の影。モノクロにすると影だけが浮かび上がってきて、さらには人が人ならざる存在に見えてくる感じもある(次項「抽象的にする」にも繋がる)。

カラーだと、網の影に加えて青い空と金髪の対比という情報も増える。それに金髪と分かると「人」感も出てきてしまう。やっぱりここではモノクロを選択したい。

そういえばこの写真は、だいぶ陽が落ちてきた時間帯に撮った。色に注目して撮ってる人はこの時間帯のグラデーションや暖色に惹かれることも多いだろうけど、モノクロ脳だと影が伸びるのが面白い。グーンと影が伸びるから、影を被せやすいし、その影をメインに撮ったりすることもできる。


④抽象的にする

この写真を見て何を思うだろう。
アヒルの横顔のように見えたり、滴が落ちたところのように見えたり…。色の情報を消すことで浮かび上がってくる形がある。これが実際に何であるかはさほど重要じゃない。イメージに身を委ねて眺めることができるのもモノクロの良さだと思う。

この写真は接写、さらにトリミングをしてかなり情報を削いで、色情報からさらに背景情報も消している。ひたすらな引き算が面白いのもモノクロの良さだろう。

3.テーマが伝えやすくなる(組写真)

①西成のモノクロ写真群「釜の道」について

僕が「釜の道」で伝えたいのは、西成が魅力的な街であること、それが住人の高齢化などで活気が失われつつあることの2つ。
テーマがある場合、セレクト、写真の順序もテーマに沿ったものになるし、カラー・モノクロの選択も重要だった。

まず前提として、西成は面白い街だと思う。そのことも伝えつつ、活気も無くなっているというのを伝えるにはやはりモノクロにする方が伝わりやすい。

ここまでモノクロにする良さを散々書いたけど、SNSでもウケが悪いように、結局モノクロはパッと見で情報が入ってくるものではない。よく見ようとしなければ面白さに気付けないし、でもよく見ればしっかり面白いものに溢れている。

この感じが西成の雰囲気にも合っていて、治安の悪い街だとかの印象で決めつけがちな街でも面白いことがたくさんある。それが過去のものになってしまうのではないかという不安も込めてモノクロで覆っていった。

これはカラーにするとまず色に目がいくおもしろスナップな一枚だけど、モノクロの方が「コインランドリーで待つ人」という情報から、よく見ると面白い服を着ていて、でもその佇まいはどこか寂しさもあって…といろいろ想像の余地があるのが気に入っている。

西成を撮るとどうしてもモノクロになりがちじゃないか、というのは全く違う。カラーフィルムで被写体と向き合ってポートレートを撮られる方もいたり、現地で日雇い労働者として住んでカラー写真を撮られる方もいる。
伝えたいことに沿ってカラー・モノクロを選択していけばより伝わりやすくなるはずで、正解こそないけど文脈に合うベターな選択をしていきたい。

②形遊びとしてのモノクロ

モノクロにすると形が強調されることは前にも書いたとおり。で、そのイメージを連想ゲームのように繋げていくのも面白い。

モノクロにすることで被写体それ自体の意味はなくなって、形だけが残る。ただ「写真」でしかなくなったものは自由にいろんなものと組み合わせられる。

これは特に説明することはない()。ただモノクロは簡単に遊べる手法(反転させたりするのも楽しい)だし、気軽にやってみるのもアリだと思う。

おわり

いろいろ書いたけど、モノクロ撮りたいって人は、とりあえずモノクロにしちゃえばいいんじゃなーい?みたいなところはある。楽しいよん。ではでは

その他の写真はこちらからもご覧いただけます。ぜひ


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