見出し画像

第1回大学入学共通テストの問題を見て

 大学入学共通テストにおいて、時事的な知識があることがどの程度解答に役立つか、という視点と、思考力が必要な問題がどの程度あるのか、という視点で問題を見てみました。
 全般的にいうと、時事的な知識が役立ちそうなところはほとんどありませんでした。残念。
 しかし、思考力があれば、足りない知識を補える、という問題は随所に、とくに英語、社会では多く見受けられました。国語・数学では結局あまり以前と変わっていないように感じました。

世界史B 

何らかの資料を読み取りながら、歴史的知識を使って解答する問題がほとんどでした。普段からこのように資料から読み解くトレーニングが必要です。
 キャッシュレスと貨幣 もちろん歴史的事実の知識を前提とはしているが、貨幣制度そのものに関する知見があることで読み解きやすい問題でした。また、ペストに関する問題がありました。直接的には純粋な歴史問題ですが、現在流行する新型コロナウイルス(COVID-19)が意識されているのでしょう。
 そして、公文書改ざんに関する問題もありました。ソ連が共産主義の国である、とか18世紀の中国を治めていたのが漢族ではない王朝(清)である程度のことがわかれば解ける問題です。これは安倍政権における組織的公文書改ざんを意識した問題ではないか、と考えるのは考えすぎでしょうか。

日本史B

 何らかの資料を読み取りながら、歴史的知識を使って解答する問題が多くありました。一部あまり資料の意味がない問題もあるようです。普段からこのように資料から読み解くトレーニングが必要です。
 キャッシュレスと新規鋳造貨幣に関する問題がありました。もちろん歴史的事実の知識を前提とはしていますが、貨幣の役割などについての知見があることで読み解きやすい部分がある問題でした。

地理B

 食の多様性や環境問題など当然ではありますが現代に通じる問題が多くあります。ただ、時事的な知見があれば、というのはそこまでないように思われます。

現代社会

 環境、労働、少子高齢化などの問題が当然ありますが、時事的な知見があれば、というのはそこまでないように思われます。

政治経済

 開発途上国への支援の在り方などは、基本的な知識を使いつつ、思考を求める問題でした。時事的な知見があれば、というのはそこまでないように思われます。

国語

 妖怪の話。 アマビエが意識されたか、という程度で残念ながら時事的な知識を使う問題はありませんでした。思考力を問う、という意味では設問1の最後に学習過程を見せながら読解を深める問題がありました。

英語

 スマートフォンでのメッセンジアプリから考える問題やオンラインコミュニティでのやりとりを読ませる問題はありましたが、残念ながら最近の時事的な知識を使う問題はありませんでした。
 一方で、発音や文法問題(整序問題等)は1つもありませn。そして、ただの長文ではなく、表やグラフを含む、多くの資料から情報を読み解くことでできる問題が多くありました。非常に長い文章を読む必要がないところは楽だったのではないかと感じますが、全体での語数は多いように思います。しかし、普段からこのように資料から読み解くトレーニングが必要です。

フランス語

 発音、文法問題から始まり、最後の1問がしっかりした長文という今までと全く変わらない問題構成でした。英語におけるような変更はフランス語では適用されないのでしょうか。

数学

 産業統計に関する問題が1問。必須ではありませんが、社会的な知見があるほうが解きやすいのではないかと思われる問題です。

理科

 特に大きな変化はありませんが、多少なり、ただ知識を問うだけの問題から、現象とつなげて考えさせる問題が増えたように感じられました。


 全体として、多くの資料から情報を集め、解答に至る必要がある問題が増えています。細かい知識というより、基礎知識と思考力で解けるのではないか、と思われる問題が増えたところが前向きな変化だったのではないかと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?