新しい学習指導要領に見る、これからのまなび

 ~本質をつく、お絵かき作文の考え方~

 来年度から順次施行される新しい学習指導要領では、一言でいえば「知識をどう活用できるようになるか?」が大切にされています。
これは小学校から高校まで、どの科目でも共通です。

 学習指導要領と言えば非常に抽象的なものですが、今回、高校の学習指導要領には、一部、かなり具体的な記述があります。それが「お絵かき作文」のことを指しているのではないか?と思えてしまったので少しまとめてみたいと思います。

 学習指導要領の中でも、国語系で多く出てくるのが、知識を活用できるためには、暗記だけではない、深い理解が必要であること。そのために重要なツールが「言い換え」である、という流れです。

高校の学習指導要領(H30版)

 高校の学習指導要領(H30版)を見ると、高校の国語は科目構成が変わります。そしてその中で、必須ではない科目、「文学国語」というのが登場します。この科目の「読むこと」の活動例として「絵本」にする活動。が追加されました。
以下のように書かれています。
 小説を,脚本や絵本などの他の形式の作品に書き換える活動。
  文章を客観的,分析的に読むことになるため,文章の内容や表現の工夫に着目した,より深い小説の理解につながる。
 絵本に書き換える過程においても,脚本に書き換える時と同じように,自分が読み取った人物,情景,心情などを原典となる作品と違った方法で描き出す必要があるが,絵本という作品の性質上,記載できる言葉による情報量は限られる。なお,ここでの,小説を絵本に書き換える活動では,絵を描く技能を高めることではなく,小説の内容や解釈を,場面ごとの絵に応じた文章として表現する資質・能力を高めることが重要である

 大きく踏み込んでいます。文章を絵を用いて言い換えることで、より理解が深まることが示されたわけです。

 考学舎で、小学校中学年から積み重ねる、絵から文に言い換えたり、文章を絵で表現したりすることの有用性が書かれているようで、うれしい限りです!!

 ただ、ここで大きな疑問がわきます。これは小学校向けではどうなのか?

小学校の学習指導要領(H29版)

調べてみると、国語の読み方というところででてくる、例にはこうあります。
5・6年生向け
ア 説明や解説などの文章を比較するなどして読み,分かったことや考えたことを,話し合ったり文章にまとめたりする活動
イ 詩や物語,伝記などを読み,内容を説明したり,自分の生き方などについて考えたことを伝え合ったりする活動。
ウ 学校図書館などを利用し,複数の本や新聞などを活用して,調べたり考えたりしたことを報告する活動。
なんと、小学校向けにはそもそも何かを読んでいかに理解するか、に対する言及はありません
これは3・4年生向け、1・2年生向けでも同様です。

3・4年生向け
ア 記録や報告などの文章を読み,文章の一部を引用して,分かったことや考えたことを説明したり,意見を述べたりする活動。
イ 詩や物語などを読み,内容を説明したり,考えたことなどを伝え合ったりする活動。
ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動
1・2年生向け
ア 事物の仕組みを説明した文章などを読み,分かったことや考えたことを述べる活動。
イ 読み聞かせを聞いたり物語などを読んだりして,内容や感想などを伝え合ったり,演じたりする活動。
ウ 学校図書館などを利用し,図鑑や科学的なことについて書いた本などを読み,分かったことなどを説明する活動。

 小学生を指導するにあたって、まず、どのように正しく文章を読み解いていくのは、という方法論がないのに、高校になってから、指導例としてここまで具体的な理解を深める方法が出てくるのです。
 指導要領を作成されている方々が異なる、ということなのかもしれませんが、全体をしっかり見渡し、コントロールをする必要があるのではないでしょうか。

10代20代の理解力、知識活用力の実態

 現実社会では、専門学校生・大学生問わず、文章をいかに読み解くのか、という方法論を持っている学生は極めて少数である、というのが私の印象です。
 小中高校の様々な授業で、理解する方法を学べている、と感じることは多くはあまりありません。
 小中校の部活等で、音楽・美術・スポーツに本格的に取り組んでいくことを通して、自分のモノとして理解する方法やそれを活用する方法を学んでいる生徒を見かけることのほうがはるかに多いのです。

 「知識をいかに活用するか?」を解くのであれば、まずは、いかに理解し、自分のモノにできるのか?を学ばせなければ活用などありえません。

 さてそれでは、言い換えをとおして「知識を自分のモノにできる理解力」をいかに養うのか、簡単に説明しておきます。

なぜ「理解を確実にできる言い換え」が重要なのか?

 簡単に言えば、暗記しただけの知識は使えないからです。とにかく覚えた知識は、同じ形で問われれば引き出すことができますが、ちょっと違う問われ方をしたら引き出すことができないのです。
算数の文章題を解くと、単元別に出されればできるけど、複数の単元から出されたらできない。というのがこの典型です。まさに「分かったつもり」です。
 でも、言い換えて自分の言葉にして理解した知識はどんな方向から聞かれても引き出すことができます。どころか、知っていることを組み合わせて他の事につなげたりもできるのです。

「理解を確実にできる言い換え」をできるようになる具体策は?


 実際には、知識を勉強するときに、自分の言葉に言い換えて、理解する、という習慣はなかなかつきません。なぜなら、言葉で説明されることを言葉で確認するからです。
 理解を確認するために説明させてみても、オウム返しに近い状況にしかならず、結局理解の確認にはならないことが良くあります。
 しかし、少し考え方を変えてみます。
 文章や言葉を「絵」で表現するのです。こうしてみると、知らない言葉は絵にはなりません。逆に、絵を言葉で説明してもらうと、知らない絵は言葉にはなりません。
 これで簡単に、学ぶ生徒も教える先生も、「何がわかって何がわからないのか?」を確認できるようになります。
 特に、「分からない」を確認できることが重要です。「分からない」ことを認識できればそこを学べばよいからです。
 こうして、分かったつもりが解消されることが重要になるわけです。

これをトレーニングできるのが「お絵かき作文」「お絵かきトレーニング」です。
 徹底して、「絵を文で説明する」「文章を絵で説明する」トレーニングができるのです。そしてこのトレーニングを通して、表やグラフの読み解きまで学ぶことができます。
詳細は
  国語が得意科目になるお絵かきトレーニング(ディカヴァー21刊)
  お絵かき作文ドリル(基礎編)(朝日新聞出版刊) 小学2年生後半以上対象
  お絵かき作文ドリル(チャレンジ編)(朝日新聞出版刊)) 小学3年生後半以上対象

をご覧ください。


参考 文部科学省 高等学校学習指導要領(平成30年度告示)解説 国語
参考 文部科学省 小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 国語

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