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2020年9月の読書メモ

● 夜のみだらな鳥読書会
 内容はさておき、1章~30章の細かく章立てされた構成で、チェスのコマを進めるように短期集中で読書が捗った。
翻訳がこなれていて意識の流れのくだりも、誰の声か分かりやすく、読みやすい。
一般には「悪夢」とイメージされる小説世界。語り手や主要人物が不幸な眼にあっても、フリークスや老人は伸び伸びと生きている。座間や相模原の事件を思うと、むしろ居心地がいいのでは。
知識人の語りの一人称に「わたし」ではなく「おれ」と訳したのは、作品世界にそぐわないと思っていた。だが作中において小説を書けなかった作家志望の人物であれば、書き言葉「私」ではなく、話し言葉「おれ」の独語と考えることもできる。しかも彼は《ムディート》なので発話すらできず、袋の中=《インブンチェ》の体内に、永遠に言葉が封じ込められて、虚しくこだまするばかりなのである。

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