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ソノイの話もしていいですか【暴太郎戦隊ドンブラザーズ】

いまだに暴太郎戦隊ドンブラザーズのことを考えているので、今日はソノイの話をしようと思います。私がまだドンブラを引きずっているのはソノイとタロウによる部分が多いので……自分の心を落ち着かせるために書いているので多少の粗はご勘弁願います。


最終回を終えての2人の関係性に対する感想としては「なんだか美しいものを見た……」というものでした。オーディオコメンタリーで脚本の井上先生も「こんなに美しい関係になると思ってなかった」っておっしゃっていたけど、本当に、美しいという形容をしたい感じの2人だった。

見ていて思ったのは、ソノイがマジで「できた人」で良かったな〜〜〜!!!!!ということ。

ソノイさんが真面目で、高潔で、優しく賢く美しく、礼儀正しく対人スキルがあって、それでいてちょっとしたかわいい隙もある人で良かったな〜〜〜〜!!!!!!!

これ、桃井タロウは桃井タロウ、ドンモモタロウとして唯一無二だったけれど、王苦市へ降りてくるというソノイのポジションは単なる役職であり、他の誰かで置き換えが可能だったわけですよね。それこそ脳人は8人も出てくるほど、どんな人材が充てられていてもおかしくなかった。それはドンブラザーズのお供4人が他の誰かかもしれなかったのと同じでした。でも、この結末に至るには、タロウに最後まで寄り添ってくれるのはソノイ以外ではありえなかった。

暴太郎戦隊ドンブラザーズという番組って、「誰でも良かった。だからこそ、貴方じゃなきゃダメだったということが分かるのだ」という案件が多くて、それこそが"オンリーワン"ってことなんだろうなと思います。


そして我々視聴者がこの番組を愛する上でも、ソノイの存在ってめちゃくちゃ大きくて換えが効かなかったな……と思うんですよ。

結局、桃井タロウはいかに生きるべきか?というのがど真ん中に置かれていたこの物語で、視聴者は果たして桃井タロウを愛せるのか?というのは要素としてかなり大きい、一歩間違えば致命的な部分だったと思います。それを前提とした構成をしている。この物語は、人々に嫌われている設定を持つキャラクターに対して、ある程度の好意を視聴者に抱かせるというウルトラCをやらなければならなかった。

個人的な見解かもしれないんですが、少なくとも私の中では、桃井タロウへの好感度というか、そういうメーターが動く瞬間って、桃井タロウの弱いところとか、可哀想なところが見えたときだったと思うんですよ。

お弁当のおかずを取られてるところだったり、おにぎり屋で陰口を聞いた後にぼんやり川辺を眺めている横顔だったり、誰も来ない誕生日会の思い出だったり、ぼろたろうだったり。

ソノイに会いたかった満月の夜だったり。

そういうときに、私はタロウのことをぐんと好きになれたような気がします。一旦愛してしまえば以降はなんでもありです。まぁタロウだから……で大抵のことにOK出せます。

最強完璧超人の柔らかいところを我々に見えるようにするということについて、ソノイが果たした役割って大きいと思うんですよ。なぜならタロウが自分から弱音を晒したのはソノイの前だったから。それはお供の誰も見ていない、ソノイと我々だけが見ている顔だったから。

最終話までその関係性はそのままでした。タロウはお供の前では最後までしっかりした自分でいたかった。だから助けてほしいと頼る相手はソノイで、彼はそれを全うした。

なんでその相手が敵幹部(一応)なんだよ……とは思いますが、まぁでもそういう、仲間だけど口うるさいお供より、自分に理解を示してくれる優しい人に寄りかかりたくなるところ自体が、桃井タロウの弱くてかわいいところなので仕方ないんですよね。彼がいたからこそそこが浮き彫りになった。ひどくややこしい桃井タロウという存在の魅力を、可視化してくれるフィルタのようなポジションだったなと思います。

それでいて、彼自身が物語の推進力にもなっていたのがずるすぎる……

この2人、どっちも上位存在人外なんですよね。ちょっとズレている。タロウは一応21年人間やってるはずなんですが、人間が下手くそです。ソノイはタロウと出会って人間をやるようになるんだけど、やっぱり初心者。

そういう人間初心者の2人が、人間としてのなんらかの関係性を築きたいねぇってなったとき、我々人間から見るとなんかちょっと……変な感じになる。両方大真面目にやっているんだけど、傍から見るとかなり変。それが見ていてとても楽しい。そしてちょっとだけ、その融通の効かなさが憐れでもある。我々、愛と欲に穢れた人間にとっては。

面白いのは、お互いの株が下がる展開があんまりなかったなということ。最初から高いところで始まってずっと上がっていた気がします。お互いの立場バレは、ソノイと桃井タロウという個人としての好感度にはさほど影響しなかったし、大喧嘩して地固まるみたいなありがちな展開もなかったですね。正体を知らぬまま敵同士が友情を深めていく……という類似の構造には「ルパパト」のWレッドがあったかと思います。私はあちらのオタクでもあったので、想定以上に爆速の正体バレが来たことで驚愕し、これから何が起きるんだ???とヒヤヒヤしていたのですがなんか……うん……思った以上に……真面目で変だった……

それでいて、だからこそなのかもしれませんが、当初思った以上にとても健康的な関係だったな……とも思います。ソノイはタロウに出会ったことで、タロウ以外の人間の良さ、人間の世界の良さに気づいていく。思い入れの対象を広げていきました。閉鎖的に、病んだ執着へと展開することだっていくらでもできたと思うんですが、なんだかとてもまっとうだったな……という気がします。これもやっぱり「ソノイがすごくソノイだったから」としか言いようがないポイントだったと思うんです。なんなんだこの人。嫌いなやつおらんやろ……とついつい主語がバカでかくなってしまう。


だからこそ、最終回は辛すぎた。


あんなに頑張っていたのに、あんなにいい人なのに、あまりにも報われない。このエンディングがバッドでない、物語としてはハッピーエンドだということはわかっています。わかっているけれど、ソノニは翼、ソノザははるかという自分を変えてくれた人と手を取ってゴールテープを切ることができたのに、何故ソノイの隣には桃井タロウがいないのだろうという気持ちはやっぱり捨てきれない。あれから数週間経ってキングオージャーが始まっても、フラッシュバックのようにドンブラザーズのさみしさが込み上げてくる原因の内訳を考えると、最終回のソノイがひどく美しく寂しかったからだというのがそこそこの場所を占めているように思います。

けれど、タロウの時間がいくら巻き戻ろうと、ソノイの状況は巻き戻らない。物理的にも精神的にも、ソノイの人生(脳人生)はこの1年でしっちゃかめっちゃかになってしまいました。振り返ったらほんとにとんでもねぇことになっているんだけど、タロウも元老院も責任取ってはくれないので彼はこれから自分でなんとか生きていかないといけない。彼の1年間は絶対に不可逆で、その変化は桃井タロウに出会わなければ始まらなかった。

さらにその変化は、ドミノ倒しのように波及して、最終的にはヒーローとしての桃井タロウを眠りにつかせることにつながりました。2人の関係性だけで見たら、皮肉とも言えるかもしれません。

でも、きっとソノイは、「それなら最初から出会わなければ良かった」とは言わないんだろうな。夏美が手に入らなくても誰かのために戦える犬塚翼と同じ、ヒーローの資質を持つ男。そういえば、この物語に最初に登場する"初恋ヒーロー"はソノイだったんでしたっけ。

この物語が、ヒーローを救うヒーローたちの物語だとするなら、タロウのヒーローとしてのソノイには最終回の、自分の辛さをぐっと堪えて、タロウの心を守るように微笑んで戦場へ駆けていく、あれ以上の幕引きはなかった。目眩がしちゃうくらい、あまりにもソノイらしい行動でした。

ソノイは結局、当初の想定と形は違えど「桃井タロウのような清らかな者が住みやすい世界をつくる」ことができたのだと思います。だからきっと、それでいいんだろうな。これからはタロウが戦わなくていい世界を守るために戦うことになるんだから。それでいいんだ。


こんな素敵なキャラクターを生み出してくださった富永勇也さん森博嗣さん監督脚本スタッフの皆様に感謝。ほんとに……上位存在としての説得力に満ち溢れていて……ちょっとした仕草も優雅なセリフ回しもバロンクロスの格好良さも文字通り人間離れした美貌も声も全部が良かった……途中で退場していた可能性があったことを考えるとどうなっていたのかが本当に想像がつかないぐらい、ストーリー上でも映像作品としても圧倒的な存在感があったと思います。

ドンゼンで何が起きるのか全くわかりませんが、たぶんソノイは変わらず、すごくソノイなんだろうな。ソノイの文字がゲシュタルト崩壊してきたのでそろそろ切り上げることにします。

あーーーーでも!!!シロウサギのタロウに対面しちゃったときの彼はめちゃくちゃ見たいのでなんとかなりませんかね……それはギャグに振ってもシリアスに振っても絶対最高のやつだから!!!後生です……ボーナストラックを……何卒……



今日はここまで。ありがとうございました。


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